熟成肉の格之進

  1. 熟成肉の格之進
  2. 門崎熟成肉

十勝若牛のホルスタインとブラウンスイス、おまけのエアシャー

第24回肉肉学会の概要

「第24回肉肉学会」のテーマは「十勝若牛/ホルスタインとブラウンスイス」。
「十勝若牛」は、北海道十勝清水農協が開発したブランド。いわゆる「国産牛」とは「ホルスタイン去勢牛」「交雑種」の牛肉を指しますが、中でも「ホルスタイン去勢牛肉」が一般の消費者にとってはもっとも求めやすい価格帯の牛肉となっています。しかしながら、生産者にとっては、ほとんどがB2規格の牛肉であり販売価格がほぼ固定されてしまいコスト割れが常態化している品種で、この赤字分については国の「肉用牛経営安定事業」が補てんしています。

このため、コスト低減の取組として、通常、20か月齢で出荷するホルスタイン去勢牛を14か月齢で出荷する短期肥育に本格的に取り組んだのが「十勝若牛」でした。通常の肥育期間7か月に半減して14か月齢出荷するという取組です。肥育期間を半減しつつ、体重、肉質とも仕上げていく必要がありますから、主導した十勝清水農協の苦労は並大抵ではなかったと推察しますが、現在では、管内6戸の農家によるブランドとして成功しています。今回は十勝若牛の生産者である「コスモスファーム」のホルスタインとブラウンスイスを取り上げ、同じ肥育方法で異なる品種を食べ並べることにしましたが、そこに更に珍しい品種「エアシャー」の若牛も参入するというびっくり企画になりました。

なお、今回はご都合が付かず生産者の皆さんが出席できなかったので、原田理事長から説明をさせていただきました。
「総本家更科堀井」さんと格之進のコラボ「USHISOBA」もますます本格化しています。

[caption id="attachment_2682" align="aligncenter" width="240"] 全日本・食学会、高岡副理事長のご挨拶[/caption] [caption id="attachment_2684" align="aligncenter" width="240"] 肉肉学会・稲見副理事長のご挨拶[/caption] [caption id="attachment_2683" align="aligncenter" width="240"] 総本家更科堀井・堀井さんのご挨拶[/caption]

学びの概要

1.十勝若牛

「十勝若牛」は前述したように、通常の出荷月齢より大幅に早期出荷を目指したもので14か月齢で出荷することにより、肥育コストの4割を占める「飼料費」の削減を図るというもの。とはいえ、14か月齢で、肉用牛として仕上げるためには、飼料給与体系の変更や内容の見直しなど様々なご苦労があったと思います。現在は十勝清水町の6戸の農家でホルスタインの「十勝若牛」が飼養されています。

現在では「十勝若牛」ブランドは、地元の十勝地域だけでなく、東京等でも浸透してきています。今日のホルスタインの十勝若牛は「ブラウンスイス」と同様、コスモスファームさんの飼育牛で13か月齢。

2.ブラウンスイス1

乳牛としての「ブラウンスイス」は乳中のタンパク質含量が高いので、チーズ製造に好適なため、徐々に飼育頭数が増加しているようですが、牛肉としての流通量はほとんどありません。「肉肉学会」では何度か、「ブラウンスイス」に焦点を当てて、その肉利用の可能性について学んでいます。今回の「ブラウンスイス牛肉」は「第21回肉肉学会」でお招きした十勝清水の「コスモスファーム」さんのブラウンスイスを熟成しないで提供するものです。ホルスタインではないですが、こちらも「十勝若牛」としてコスモスファームさんが取り扱っているブランドです。今日のブラウンスイスは14か月齢。

3.エアシャー1

今日のスペシャルゲストは「エアシャー種」の牛肉です。コスモスファームが十勝管内の酪農家から引き取ったエアシャー種の去勢子牛を、「十勝若牛」と同様の飼い方で肥育した牛です。エアシャー種は日本国内では乳牛としても極めて珍しい品種であり、牛肉として食べることも希。今回は17か月齢のリブロースを譲り受けることができました。

この結果、今回は、同じ牧場で肥育され、ほぼ月齢が同じで、品種の異なる牛肉の「食べ並べ」が実現できたことになります。

4.USHISOBA

[caption id="attachment_2685" align="alignright" width="240"] 堀井格之進![/caption]

肉肉学会の恒例となった、「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ企画「牛そば」。今回は「モモ肉のコンフィ」と「二八そば」に「あんかけ風のおつゆ」。堀井さん曰く「この3者を溶け合わせるのではなく、個々の個性を活かしながら一体化したかった」とのことで、3つの個性の橋渡し役としてマッシュルームと水菜と山椒を添えました。

本日のメニュー

〇 ミックスビーフのミートソースペンネ(写真1)
〇 ランプのローストビーフ(ホルスタイン&ブラウンスイス)(写真2)
〇 リブロースステーキ(ホルスタイン&エアシャー)(写真3)
〇 リブロースステーキ(ブラウンスイス)(写真4)
〇 すね肉のステークアッシュ(ホルスタイン&ブラウンスイス)(写真5)
〇 USHISOBA(牛そば)(写真6)

[caption id="attachment_2686" align="aligncenter" width="240"]3品種のリブロース[/caption]

参考文献

十勝清水農協(十勝若牛)HP
十勝清水コスモスファームHP
総本家更科堀井HP
格之進HP

脚注

1.ブラウンスイスとエアシャー

ブラウンスイスは国内でのナチュラルチーズ工房の増加等に伴い、その数は増加しているが、ジャージー以上に牛肉としての評価は定着していない。ジャージー牛肉は、岡山県の蒜山などジャージー産地でJA等が肥育しレストラン等で提供されるなどの例があるが、ブラウンスイスは酪農家でホルスタインと共に小頭数飼養されているのが実態で、牛肉として定時定量的に提供している例はほとんどないものと思われる。

それ以上に希なのが「エアシャー」で、酪農家で飼養例自体が極端に少なく、今回、エアシャーの牛肉が入手できたのは僥倖と言うしかない。

[caption id="attachment_2690" align="aligncenter" width="240"] コスモスファームのブラウンスイス[/caption] [caption id="attachment_2689" align="aligncenter" width="240"] コスモスファームのエアシャー[/caption]

写真

[caption id="attachment_2691" align="aligncenter" width="786"] 1 ミックスビーフのミートソースペンネ[/caption] [caption id="attachment_2692" align="aligncenter" width="786"] 2 ランプのローストビーフ外側がブラウンスイス、内側がホルスタイン[/caption] [caption id="attachment_2694" align="aligncenter" width="786"] 3-1 リブロースステーキ
ホルスタイン&エアシャー
[/caption] [caption id="attachment_2693" align="aligncenter" width="786"] 3-2 リブロースステーキ
ブラウンスイス
[/caption] [caption id="attachment_2696" align="aligncenter" width="786"] 4 すね肉のステーキアッシュ
左がホルスタイン、右がブラウンスイス[/caption] [caption id="attachment_2695" align="aligncenter" width="731"] 5 牛そば[/caption]

「TOKYO X」と「たんぽぽ牧場放牧ジャージー牛」

第23回肉肉学会の概要

「宮崎県小林市産のアン黒とチーズのマリアージュ」と「USHISOBA」

[caption id="attachment_2486" align="alignright" width="240"] 「TOKYOX」のブランド化推進役の植村光一郎さん[/caption]

「第23回肉肉学会」のテーマは「TOKYO X(トウキョウX)」と「たんぽぽ牧場放牧ジャージー牛」。
「TOKYO X」は東京都畜産試験場で系統造成された「合成品種」で、北京黒豚、バークシャー(黒豚)、デュロックの3品種を基礎に育種改良され、「TOKYO X Association」がブランド化した豚肉です。2020年の東京オリパラが近づいているなか、東京産の食材に大きな注目が集まっており、東京生まれのブランド豚肉として焦点をあてました。

今日は、「TOKYO X Association」の前会長植村光一郎さんに、TOKYO Xの誕生からブランド化までの戦略を伺い、新会長の石井さんにもご挨拶していただきました。

[caption id="attachment_2485" align="alignright" width="240"] 植村さんの後任会長・石井高洋さん[/caption]

「たんぽぽ牧場放牧ジャージー牛」は北海道別海町の酪農家・加藤忠昭さんが自場で生まれたジャージー種の去勢牛を放牧中心育てた31か月齢の牛です。この牛は現在進行中の「シェフ牛事業」と同様の飼育方法で育てられたので、「シェフ牛」の前哨戦として味わいました。
なお、恒例の「USHISOBA研究会(堀井格之進)」は、堀井さんのフランス出張に伴い休止となりましたが、「TOKYO Xのハムサンド」と〆にいただきました。

今回も、「肉肉学会」として一層の科学的な味の知見を集積するという観点から「ポストディッシュ」方式による「官能評価」を実施しました。

[caption id="attachment_2487" align="aligncenter" width="240"] 高岡さんと牛おじさん[/caption]

学びの概要

TOKYO X

「TOKYO X」は「北京黒豚」「バークシャー(黒豚)」「デュロック」の3種類を基礎豚とする「合成豚」1。バークシャーやデュロックは他のブランド豚でも活用しているが、「北京黒豚」を系統の基礎豚にしている国産豚は他に例がない。「北京黒豚」は肉質が良く脂肪の質の評価が高く脂肪交雑が入りやすい特徴をもっています。バークシャーもデュロックも脂肪交雑が入りやすい品種なので、TOKYO Xは系統造成当初から脂肪交雑を重視した、豚肉としては珍しい戦略をもっていたといえます(現在は、農林水産省が定める「家畜改良増殖目標」で豚においても脂肪交雑を重点目標にしています)。TOKYO Xは開発時に脂肪交雑率5.0を達成していました。

そのように開発した「TOKYO X」を販売していくための戦略として、「東京SaBAQ」2という理念を打ち出しました。「Safety」=安全性、「Biotic」=本来の生命の力を活かす、「Animal welfare」=快適な環境の中で育てる、「Quality」=品質・美味しさ優先で改良した豚を意味しているそうです。 また、TOKYO Xは豚では珍しい「トレーサビリティ」が可能なブランドです。アルファベットと4〜5桁の数字の組み合わせで個体ごとにトレース可能な仕組みを構築し、PCでも検索できるようになっています。

植村さんからは、ブランド立ち上げから現在に至るまでの苦労話を伺いつつ、バスク豚やマンガリッツァ豚など世界の名豚との交流まで幅広いお話しを伺うことができました。

放牧ジャージー牛

[caption id="attachment_2488" align="alignright" width="240"] 「シェフ牛試食会」での加藤忠昭さん[/caption]

今日の牛肉は、たんぽぽ牧場で生まれ育った31か月齢のジャージー種去勢牛。31か月齢とはいえ、ジャージー種&放牧主体ゆえ枝肉重量は261 kgと小ぶりな牛です。この牛は5月頃から昼夜放牧を行い、冬期間は配合飼料を1日当たり1kg程度、一番草のロールサイレージを1週間当たり1個程度給与して育てた、まさに「草育ち」の牛です。(有)たんぽぽ牧場は加藤忠昭さんが経営する酪農牧場で、搾乳牛170 頭、育成牛100 頭を有する家族経営の法人です。搾乳牛のうちジャージーが60頭程度いて、去勢は「自家消費」目的で年に2頭程度、放牧肥育しているそうです。

[caption id="attachment_2473" align="aligncenter" width="786"] この牛が、本日美味しくいただいた放牧ジャージー牛です。[/caption]

実はこの肉は、「シェフと支える放牧肉用牛生産体系確立事業」3の「調理法検討試食会」で供されたものと同じもので、格之進で30日間熟成されたものです。ただ、「シェフ牛試食会」ではモモ肉の各部位を提供しましたが、「肉肉学会」ではウデ肉、モモ肉(かめのこ)のほかサーロインも用いました。

本日のメニュー

● シンシンのポトフ(ウデ肉)(写真1)
〇 ビアシンケンのサラダ(肩ロース・ヒレ)(写真2)
〇 あらびきソーセージ(肩ロース)(写真3)
〇 ポークチャップ/ポークソテー(ロース)(写真4)
● サーロインステーキ/カメノコステーキ(写真5)
〇 ハムサンド(モモ肉)(写真6)

● 放牧ジャージー牛
〇 TOKYO X

参考文献

TOKYO X生産組合HP株式会社ミートコンパニオンHP全日本・食学会HP(シェフと支える放牧牛肉生産体系確立事業調理法検討試食会)たんぽぽ牧場物語FB格之進HP

脚注

1 合成豚

我が国で一般的な豚肉は、いわゆる「三元交配」で肥育豚(コマーシャル豚)が生産されており、その際の基礎となる豚は、ランドレース、大ヨークシャー、デュロック、バークシャーなど繁殖性や肉質を考慮して荒廃されたもの。それに対して「合成豚」とは数種の豚の品種を組み合わせ「閉鎖群」で育種して系統をつくり、その種豚からコマーシャル豚を生産するもの。外国ではオランダ産の「ハイポ-」などがあり日本でも利用されている。斉一性が増すが、閉鎖群のため、十分な規模を確保しないと近郊係数が高まり繁殖成績が低下するなどの弊害がある。 

2 「東京SaBAQ」

前川清の「東京砂漠」をもじったものだが、「東京砂漠」を知らない世代が増え、通用しない場合も。

3 「シェフと支える放牧肉用牛生産体系確立事業」

全日本・食学会がJRAの助成を受けて実施(下図参照)

写真

1 ジャージー「シンシン」のポトフ

 

2 TOKYOX「パテドカンパーニュ」

3 TOKYOX「ビアシンケンのサラダ」(肩ロース・ヒレ)

 

4 TOKYOX「あらびきソーセージ」(肩ロース)

5 ポークチャップ(ロース)・ポークソテー(ロース)

 

6 サーロインステーキ・カメノコステーキ

7 TOKYOXハムサンド(モモ肉)

 

   

肉おじさんのプール焼き理論

スライス肉なら簡単に焼ける、と思っているあなた!本当においしく焼けていますか?焼きすぎてしまったら、せっかくのお肉も台無し。そこで「肉おじさん」こと千葉祐士の肉焼き理論「プール焼き」の出番です。

1.まずはお肉を並べて片面をしっかり焼き固める

一枚約20g、1cm弱の厚さにスライスしたお肉を6枚程度使用。まずは網の上に一枚ずつ並べて、焼き始めます。この時、乗せた順番を忘れないように配置するのがポイント。
火力はやや強めで、片面をきっちりと焼き固めて、肉汁の出口を塞ぎます。

2.片面が焼けたお肉を積み重ねてひとつの塊肉のように

しっかり焼き目がついたら、6枚のお肉をすべて積み重ねます。まだ焼いていない側は赤いままで構いません。最初に焼き始めたお肉をその次に焼き始めたお肉に乗せる。といった具合に順番に重ねていくと、最初に網に乗せたお肉が一番上にきます。
これで重なったお肉が、まるでひとつの塊肉のようになりました。

3.重ねたままのお肉を掴みサイドをサッと焼き締める

重ねたままのお肉をトングで掴み、側面を焼きます。あくまでも肉汁の逃げ道を塞ぐためなので、さっと焼き締める程度でOK。ただし、しっかりと掴まないとバラけてしまうため、丁寧に、けれども素早く焼くのがポイントです。
これで6面のうち、上面を除く5面に火を入れたことになります。

4.プールの水面のように肉汁が浮かび上がれば完成!

重ねたお肉を再び広げ、上部に注目。まだ火が通っていない場合は、火の通りの浅いお肉から順に再び重ねてしばし待ちます。火を入れていない上面にプールの表面張力のように肉汁が浮いてくれば「プール焼き」の完成です。
下はカリッと香ばしく、上はジューシー。2つのおいしさが同時に味わえるプール焼きを、召し上がれ。

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SDGs(Sustainable Development Goals)持続可能な開発目標について

SDGsとは?

2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて2030年までの国際目標で、持続可能な世界を実現するための17のゴール、169のターゲットから構成されているものをSDGsといいます。

SDGsは、発展途上国だけでなく、全世界で取り組むものであり、企業が、個人が誰もが積極的に取り組んでいくものとして、最近話題になっている言葉でもあります。

世界を変えるための17の目標

1、貧困をなくそう
2、飢餓をゼロに
3、すべての人に健康と福祉を
4、質の高い教育をみんなに
5、ジェンダー平等を実現しよう
6、安全な水とトイレを世界に
7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8、働きがいも経済成長も
9、産業と技術革新の基盤をつくろう
10、ひとや国の不平等をなくそう
11、住み続けられるまちづくりを
12、つくる責任 つかう責任
13、気候変動に具体的な対策を
14、海の豊かさを守ろう
15、陸の豊かさも守ろう
16、平和と構成をすべての人に
17、パートナーシップで目標を達成しよう

格之進がSDGsを推進する理由

 “戦後最長の景気回復”と言われる日本経済ですが、デフレから脱却できたとは言えず、景気の良さの実感もいまひとつないのが現状。GAFA(Google Apple Facebook Amazon)と呼ばれるIT系4社が世界の経済を牽引し、新しい技術やサービスを提供する企業として評価も高く、私たちの生活は格段に便利になりました。が、実態(表面だけでは分かりにくい状態)が伴わない会社は、格差社会をつくり経済弱者を生むでしょう。やはりいつになっても、手を動かし、体を使い、考え、実行する実務経済が社会を支えていると思います。
 これからの企業の価値は、利益ばかりを追求するのではなく、社会性や公益性も伴わないと、会社として成立しないと思いますし、これが経営課題でもあると考えます。
 格之進が岩手県一関市に事業の拠点を置くのは、企業は格差(ギャップ)を埋めることが、大事な仕事だと思うからです。首都圏ばかりが潤い、地方が取り残されることのないよう、経済的なギャップを埋めるのが格之進の役割だと思います。“地方はものを作るところ、首都圏は消費するところ“という役割のひとつとして理解し、そのプラットホームとなることが格之進の目指す企業のあり方です。
 格之進は、国連目標である、世界を変える17の目標、SDGsを推進する企業として、誰もが幸せになるため、そして、持続可能な社会のため、持続可能な日本の農業、畜産のために、創業から生産から消費までを通してウォッチするさまざまなアクションをしています。

1,貧困をなくそう

ハンバーグで、子供達が日本の未来の農業について考えるきっかけ作りを

 豊かな国のはずの日本ですが、2015年の調査では、子どもの7人に1人が貧困で、ひとり親世帯では、半数が貧困家庭と言われています。親の仕事の都合や、食への関心の低下などから、現代の家庭の食卓には“6つのこ食”があると言われています。一人で食事をする孤食、家族がバラバラに好きなものを食べる個食、決まったものしか食べない固食、パンやパスタ、ピザなど粉物ばかり食べる粉食、少ししか食べない、食べられない小食、加工食品など味付けの濃いものを食べる濃食。気がつくと当てはまるものが、大人にもあるかもしれない食環境が問題となっているのです。
 食の大切さが希薄になってしまっている子供たちのために、各地で食事をボランティアで提供する「子ども食堂」の活動があります。格之進のお店が多くある港区にも「子供食堂」があり、2019年から不定期ではありますが、格之進のハンバーグを提供させて頂いています。
 子供たちの大好きなハンバーグを一人ではなくみんなで食べて、楽しい時間を過ごして欲しいと思います。
 また、日本の未来を担う子供たちに、すべて岩手を中心とした国産食材で、化学調味料などの余分なものを加えない、安心で安全な素材の味が味わえる格之進のハンバーグを食べて、日本の食の未来を支える農業のことを考えるきっかけになればとも思っています。

5,ジェンダー平等を実現しよう

女性が活躍できる肉(牛)業界を目指す

 肉業界の中でも特に牛肉を扱う仕事は、男性社会のイメージが強く、実際に男性が多い業界です。お肉を捌く作業は、刃物を使いますし、格之進は一頭買いなので、大きなお肉を捌きますから体力も必要です。けれど格之進では、女性もお肉を捌きます。すでに牛一頭を捌ける女性を5人以上育てています。肉(牛肉)業界でも、女性が主人公になって活躍の場を作り、やりがいをもって仕事をしてほしいと思うからです。
 今、空前の肉ブームにより、いろいろなところでお肉を食べ、お肉について調べたりしている女性も多いと聞きます。お肉の提供の仕方も多様化し、おしゃれなお店も増えました。それは、お肉に対して女性の感性が反映されてきた証拠だと思います。もっともっと女性にお肉、特に和牛に興味をもってもらって、日本の畜産についても知ってもらえればと思います。格之進は、女性の感性を必要としているのです。
 女性の感性を入れることで、お肉の価値が多様化し、向上するとも考え、女性スタッフに捌く、焼く、接客などさまざまな仕事をしてもらっています。
 格之進では、やる気があれば性別も年齢も関係ありません。女性の店長もいますし、今後はもっと女性が活躍できるお店にしたいと思っています。

8,働きがいも経済成長も

地方と首都圏の特徴を生かしたワークバランス

 格之進は、それぞれの得意なことをして活躍できる環境を目指しています。お客様と直接接することで、お客様が何を求めているかがわかり、すぐにそれに応えられるようこころがけてもいます。お客様とのお肉を通したコミュニケーションも楽しく、やりがいがある仕事だと思います。
 格之進の会社理念である「一関と東京を繋ぐ」は、地方の地域と首都圏のギャップを埋める事業をすること。都会と地方では、経済的にも利便性もかなり格差があります。けれど、“地方は生産をするところ、首都圏は消費するところ”と考え、どちらもの特徴も活かせば、働きがいも経済成長も実現でき、お互いに持続可能な経済成長ができるのではないかと思います。
 社員の中には、一関出身者もいます。東京のゲーム会社で働いていましたが、楽しさや喜びは提供できたが、なんとなく実態がないことに不安を覚え、43歳で格之進に転職。地元の食の豊かさを再確認し、価値観が変わったと言います。彼は、自分の時間の有効活用することを考え、50歳を目処に一関の本社に戻り、地元で生活をする予定です。
 過疎化が進む岩手県一関市の郊外の廃校になった小学校をリノベーションし、本社を移転。体育館をハンバーグ工場に改造したのも、地域の雇用を促し、地域活性化の一助になればと思ったからです。格之進では、新しいトライアルやチャレンジや企画が日々ある楽しい職場を目指しています。

9,産業と技術革新の基礎をつくろう

お肉の概念を変えるイノベーションの提案

 “一次産業をお肉のイノベーション(技術革新)で支える”をテーマに、必ずお肉の一頭買いをし、お肉の評価を最大化することを目指しています。
 また、岩手県工業技術センター(岩手県内のものづくりに関わる技術支援を行う)の研究者と共にさまざまな研究や開発を行っています。熟成肉の仕組みやおいしくなる理由を追求し、今までの焼肉、お肉の食べ方の概念を変えることを提案することができました。熟成肉は、2001年頃から、塊肉の焼肉は、2010年から、骨つき肉は、2013年と、どこのお店よりも早く提供し、お肉の可能性の豊かさを表現してきました。そして、熟成肉を極限まで熟成させてうま味を引き出した調味料、牛醤の開発にも成功しました。
 ハンバーグをおいしくするには、何が必要かを追求してできたのが、オール岩手の食材で作った塩麹。ハンバーグの隠し味に使うことで、うま味がアップし、他にないハンバーグができ上がりました。
 また現在、冷凍しながら燻製する、冷凍燻製肉、冷凍燻製ハンバーグの製造特許も出願中です。
 どれも商品=お肉の付加価値を最大限にし、その経済的メリットを生産者に返すためのアクションです。

10,人や国の不平等をなくす

海外で認められるお肉を目指すには、外国人スタッフの力が必要

 2018年の来日外国人客数は、3000万人を超えました。格之進にも外国人のお客様も来るようになりグローバル化していく中で、いろいろな国の人に順応できるようにしないといけないと思っています。そのためにも、お店のスタッフに外国人を受け入れています。さまざまな国の人と一緒に仕事をすることで、日本との常識や風習の違いを日本人のスタッフは学ぶことができ、コミュニケーションも豊かになり、外国人にどう対応するかわかるようになると思います。
 “岩手を世界に届ける”も格之進のテーマのひとつ。海外で格之進のお肉が受け入れられるようにするためにも、外国人スタッフの力は必要なのです。
 また、格之進で働いた外国人のスタッフが、格之進のお肉の対する考え方や熟成肉について学び、母国に帰ってお店をオープンしたり、日本人の肉職人が海外で働いたり、お肉を通した人材交流ができたら素敵だと思います。

12,つくる責任 つかう責任

生産者との正確な情報共有と責任の共有

 格之進では、安心しておいしいお肉を提供するために、生産者を応援するために一頭買いをしています。格之進の店舗だけでなく、社外でのお肉の販売もあります。そのため、年単位で、どれくらいのお肉が必要か自店を含め確認してお肉を仕入れています。それは、生産者に必要なお肉の量を伝えるためで、必要な牛の肥育予定が立てられ、安心して牛を育ててもらえるからです。これが作る責任であり、売る責任であり、消費する責任であると思います。
 そして、明確なお肉をすべて一頭買いで仕入れ、すべての部位の個性を楽しめるよう余すことなく提供。大切に育ててくれた生産者に感謝し、熟成という付加価値をつけて生産者を支えることを使命と思っています。
 料理には食材が必要です。その食材を作るのは生産者です。食材を買い家で食べたり、外食したりすることは、実は生産者が作り続けるための投資なのです。“食べることは投資”そう考え、格之進は、責任をもって提供しています。

15,陸の豊かさも守ろう

耕作放棄地の有効利用で循環型農業の実現を

 日本の人口は減少傾向にありますが、世界の人口は年々増え続け、現在75億人ですが2050年には、98億人を超えると言われています。そうなると各国は食料の奪い合いになり、自給率40%以下の日本は、非常に厳しい状況になりかねません。すでに牛肉は、値段の安さもあり輸入品が多く、国産牛の生産も消費も下降気味というのが現実です。
 格之進は、今後の日本の畜産を生産者はもちろん、料理人や大学の先生などと共に考え、新しい肥育の仕方にもチャレンジしています。
 牛の餌になる牧草の3割弱が輸入、トウモロコシなどの穀物になると8割以上が輸入です。日本の各地には、もう農作物の生産をやめてしまった耕作放棄地がたくさんあります。この土地を活用して牧草や飼料用のトウモロコシを作り、放牧で牛を育てたりすることで、休耕地はなくなり、国内で作ったものを餌に国内で肥育し、消費する循環農業が可能になると考えています。
 また、農地や牧場を一般の人が見学できる施設を作り、観光農業ができるようになれば、生産者を支え、荒れた土地を回復し、大地の緑を守り、持続可能な畜産、豊かな農業も可能になるのではないかとも思います。

うにく=海のものとお肉の融合 Surf & Turf

アメリカのステーキレストランでは、ステーキとシーフードが同じ皿に盛られた料理のことを海のものと陸のものという意味で、サーフ&ターフメニューと呼ばれ定番となっています。

岩手県は、ご存知のように沿岸部では牡蠣やホタテの養殖が盛んで、魚介類もたくさん獲れます。格之進は、お肉のお店ですが、岩手の食材を積極的に使うお店でもあります。魚介類も何かの形で扱えないものかーーとずっと考えていました。

2009年恒例の寿司店「さいしょ」さんと「格之進」とのコラボイベントで、うにの軍艦巻きを見て、ひらめいたのが、海苔を熟成肉の炙りに変えたうにの肉巻き軍艦。これをきっかけに、「うみ(海)のものとお肉を合わせた料理“うにく”」の提案が始まりました。つまり、これは日本版のサーフ&ターフ(Surf&Turf)であり、格之進がやるべきことだと考えたのです。
「うにく」は雲丹とお肉の組み合わせで「うにく」と考えられている事が多いですが、そもそもは「海」と「肉」で「うにく」なのです。

海のアミノ酸とお肉のアミノ酸の融合。アメリカスタイルのように、ただ同じ皿に魚とお肉が乗っているだけではなく、海の幸とお肉が融合し相乗効果で、想像を超えるおいしさを実現するのが、日本のサーフ&ターフ(Surf&Turf)だと格之進は考えています。

牡蠣とお肉の素晴らしい出会い

そんな時ある出会いがありました。佐賀県の牡蠣の生産者「海男」の梅津聡さんが、「牡蠣は海のミネラルの塊であり、アミノ酸の結晶である」という話を聞きひらめきました!

「お肉もミネラルやビタミン豊富な牧草や餌を食べて育ち、熟成することでアミノ酸の塊のようなお肉となる!
牡蠣と熟成肉は同じではないか!?
ならば、ふたつのうま味を合わせれば、きっとおいしくなるに違いない!」

と、肉おじさんは考えたのです。そこで作り上げたのが、牡蠣とローストビーフを一緒に食べる”牡蠣肉”です。濃厚な旨味の牡蠣と大地のアミノ酸の塊、和牛の熟成肉、まさしくサーフ&ターフの料理です。

うま味を重ねることでおいしさ10倍!?

日本人は、素材を組み合わせるのがとても上手いと思います。たとえばラーメン。鶏や豚骨スープと魚介だしを合わせたスープはWスープといわれ、ものすごくおいしい。
これも考えてみれば、サーフ&ターフ。海のエキスと山のエキスが合体し、アミノ酸とグルタミン酸とさまざまな旨味が合わさり、うま味が何倍にもなった日本の味。
日本人のうま味への追求と技が作り上げた名品です。

うま味は、重ねることで、倍どころか3倍、10倍にもなると言われています。日本のだしは、鰹のアミノ酸と昆布のグルタミン酸を合わせることで、それだけで十分おいしい味となります。さらにこのだしに、鶏やお肉を足すと、さらにアミノ酸が加わっておいしくなることを、料理人たちは知っているのです。
また、日本人は、一皿一皿ではなく、いろいろなおかずを食べながら、口の中で口中調味する習慣があります。その調味を、料理として具現化したのが、海のものとお肉を融合させて、おいしさのハーモニーを作る”うにく”の元となる考え方です。格之進の考えるサーフ&ターフは、まさしく日本のうま味を重ねる発想の進化系なのです。

“うにく”メニュー続々開発中!

軍艦巻きは、うに、牡蠣、ホタテ、いくら、あん肝、甘エビ、ホタルイカなど、うま味の濃い食材と相性が良く、次々と新しいメニューが登場しています。牡蠣とお肉のコラボは、サーロインに牡蠣を詰めて塊焼きをするという、大胆な発想で新しいおいしさを発見しました(肉おじさん曰く、カプセルボンバー理論)。

海のものとお肉を合わせる“うにく”は、雌牛の熟成肉だからこその脂の良さ、うま味、香りの条件がそろっているから、今までに体験したことのない至福の味が実現できるのだと思います。

日本版サーフ&ターフ(Surf&Turf)。これから要注目です!

格之進のうにくを食べることができる店舗

熟成肉割烹 格之進82(カクノシン エイティツー)
東京都港区六本木7-14-16 六本木リバースビル1F

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熟成焼肉 格之進 R+ (カクノシン アールプラス)
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お肉は、調理法でおいしさが変わる

“実験美学”という言葉をご存知でしょうか?

人が芸術に感じる美について、様々な自然科学的な手法で、芸術の中にひそむ秩序や法則を解明しようとするもの。歴史的には心の科学である実験心理学と兄弟のような関係です。実験心理学での大切な分野である心理物理学の生みの親、フェヒナーが実験美学も提唱したからです。

実験美学では1970年代に、バーラインが、「芸術作品のなかに含まれる特徴の程度が一番心地よいのは、情報量が多すぎず、少なすぎない、中程度の範囲にあるときである」ということを示しました。

例えば、情報量でなくても、音楽を鑑賞したときに音の大きさは大きければ大きいほどいい、というわけではないでしょう。ようは過不足がない程度というバランスが大事なのです。
そして、この実験美学ですが、実は、食べることにもあてはめることができるのです。

人は、お肉を食べるとなぜおいしいと感じるのでしょう?

お肉だけでなく、おいしいものを食べると幸せを感じるのでしょう?

味覚についての研究はかなり進んでおり、和食のおいしさにとって欠かせない「うま味」の成分や、お肉の熟成でうま味成分がどのように変化するのかが見出されるようになってきています。けれど、食品に対して感じるおいしさは、人それぞれの嗜好の問題なので、最終的には人の感情です。食品そのものの化学的、物理的特性や、それを味わう人間の感覚や心の特徴の両者で食べるときの人の心を明らかにしようとするのが私が研究をしている「食の心理学」です。芸術に感じる美も感性や嗜好の問題なので、食べ物の味も同じ理屈で考えられることも多いのです。そこで実験美学の理論が適応できそうです。

うま味成分などの物質の量に対する動物行動や、受容体(味のセンサーのようなもの)の活動を物差しとした研究では、うま味が多ければ多いほど、おいしいと感じることを前提としているかのように見えます。このような実験では、いい結果が出やすい範囲の物質量のところだけを扱うことが多いと聞きますがそれが一因かもしれません。でも、実際に自分の体験で考えるとあてはまらなくないでしょうか? 味覚で考えると食品も塩辛ければ塩辛いほどおいしい、というわけではないですよね。極めて強い塩味に対しては痛みを感じる受容体も反応してしまうようです。このように、食でもなにかの物質の量が高ければ高いほど良く感じる、というわけではなさそうです。これは先ほどの実験美学の考え方とよく似てますね。これは具体的な食品にも当てはまります。

例えばお肉。

和牛がおいしいと言われるのは、脂肪交雑(サシ)が多く、調理しても柔らかく、濃厚なうま味があるから。とはいえ、詳しく調べてみると、お肉を焼いて食べた場合、脂肪含量36%くらいのものが最も好まれ、おいしいと評価されるという結果がでています(日本女子大学:飯田文子先生「官能評価学会誌Vol.20.No.2「牛肉の食味評価」より」。この実験の結果は、牛肉の客観的な特性の評価をしっかりとできる方々においしさの評価もしてもらった結果をまとめたものです。

脂肪の量とよく知られている和牛の等級は関係しています。脂肪の量が十分にないと等級が上がりませんので。脂肪含量36%は、等級でいうと3等級と4等級の間くらい。高級でおいしいと言われる5等級ではないのです。これこそ、等級の高さではなく、人の嗜好をできるだけ客観的に測定した結果なのです。

ただ、これは焼いたお肉の場合で、実は調理法によっては、評価が変わってくることも飯田先生の研究で示されています。

和牛といえば、すき焼きは代表的なメニューですが、すき焼きの場合は、より脂の多いお肉つまり、5等級に近いお肉の評価が高く、等級が下がるとおいしさ評価が落ちるのです。焼くのではなく煮熟(煮詰めること)する料理には、脂肪含有が多い方が、ほどよく脂も煮溶け、やわらかくおいしいという嗜好になるのです。たぶん、おいしさを感じるピークが煮熟の場合は、焼成の場合よりも等級が高いほうへシフトするのでしょうね。

ステーキで食べる場合は、2等級や3等級のお肉の方が、好まれることもあります。

調理法によって、食べる量も変わります。私はステーキはちょっと噛み応えがあるのが好きで、たくさん食べたい! 派なので、脂も少し控えめがおいしいです。お肉のおいしさの感じ方は違うのです。ちょっと面白いですよね。

“味”おじさん=和田有史

立命館大学 食マネジメント学部教授 副学部長
1974年静岡県生まれ。
農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構) 食品総合研究所主任研究員等を経て、2017年より立命館大学教授。博士(心理学)。専門官能評価士。専門は実験心理学。
”食”をモチーフに多感覚知覚、エキスパート知覚、消費者認知などの研究を行い、人の心のメカニズムの解明とその知見に基づく応用技術の開発を目指している。
所属学会:肉肉学会(理事)、日本官能評価学会(理事)、日本基礎心理学会(理事)、日本認知心理学会、日本心理学会、全日本・食学会

美味しいすき焼き

すき焼きの起源

すき焼き(すきやき・鋤焼)はお肉を醤油と砂糖で焼いたり煮込んだりする料理ですが、関東風と関西風ではその調理方法も大きく変わってきます。

すき焼きの起源は江戸時代にまでさかのぼります。

江戸時代。文化元年(1804年)の『料理談合集』と呼ばれる今で言う江戸時代のレシピ本にも、具体的に「鋤焼き」に関する記述が見られるのです。

使い古した鋤を火にかざして鴨などの鶏肉や鯨肉、魚などを加熱するいわゆるグリルする焼料理であったことが記されています。

すき焼きの語源はこの江戸時代に農夫が仕事で使う鋤を使って具材を焼いたという説と、すき身(魚や肉などを薄く切ったもの)の肉を使うことから「すき焼き」と呼ばれるようになったという説と大きく2つの説に分かれています。

関東の牛鍋 関西のすき焼き

いわゆる関東風のすき焼きは割り下で煮る感じで作る牛鍋スタイルですが、関西のすき焼きは最初に肉を焼きつけて、後から砂糖や醤油などを入れる「焼く」スタイルです。

日本で最も古い「すき焼き屋」は京都が発祥であると言われています。もちろん関西風のすき焼きで、江戸時代末期にはお店があったと言われています。一方、関東で牛鍋が誕生したのも幕末で文久2年(1862年)。横浜の入船町で「伊勢熊」というお店が誕生しました。
一般的に牛鍋は明治になって広まったと言われていますが、江戸時代末期には関東にも牛鍋専門店があったと言われています。

ご存知の通り、江戸時代は仏教色が強かったため食肉は禁忌とされてきていました。
ただ、珍味としてこっそりと食べる習慣は当時からあったようです。

明治になって文明開化で肉食が解禁されて牛鍋屋は関東圏に多く誕生しました。
そして、明治5年に明治天皇が初めて牛鍋を食べたことから一気に牛肉を食べる文化が関東に広まったと言われています。

ちなみに関西風のすき焼きが関東に広まったのは関東大震災がきっかけだっと言われています。関東大震災を契機に関西の商売人が様々な形で関東に進出してきます。
そのさいに関西風のすき焼き屋も関東に一気に広まったと言われているのです。

関東風と関西風。どっちが美味しい!?

関東風のすき焼きと関西風のすき焼き。どちらが美味しいか?よく議論になったりもしますが、これは個人の好みの問題になります。
ただ、シンプルな味付けで肉の旨味を味わうことに特化しているのは関西風のすき焼きです。関東風のすき焼きは煮込むことで肉の旨味が逃げてしまい、水分が奪われて肉が固くなってしまうのです。

ただ、関東風のすき焼きでも肉を少量ずつ入れて火が通った順に手早く食べたりと工夫をすることでお肉を美味しく食べれたり、肉の旨味が野菜にも伝わりやすかったりと行った良い面もあるのです。

昔から幸せの象徴であったすき焼き。
せっかくだから美味しく食べたいですよね。

すき焼きにオススメの具材(材料)

一般的にすき焼きには薄切りにした牛肉が用いられます。
すき焼きにオススメの第1位から第3位までとその他の代表的な肉の部位を紹介します。

おすすめ第一位=サーロイン

シルキーな上質な脂質の霜降りでお肉の王様とも呼ばれている大道の味わい。しっかりとした甘みと赤肉の旨味。薄切りであればとろけるような食感をしっかりと味わえる部位です。

おすすめ第二位=リブロース

きめ細かな肉質で、霜降りのロースはすき焼きにベストマッチのお肉です。溶け出した上質な脂は上質な出汁となって一体化しますし、肉質はとても柔らかく旨味や甘味をしっかり感じることが出来ます。

おすすめ第三位=カタロース

ハネシタと言うさっぱりした脂の綺麗な霜降りの部位と味わいが濃く繊維質の感じるカタロースの芯の部分が同時に楽しめる部位で、さっぱりした脂と味わいの深いカタロースの芯の部分を同時に味わえることにより味覚のグラデーションの幅が広いので味わいを楽しめる部位です。

バラ肉

繊維が多く、キメ粗いですが、濃い味わいですき焼きにすることで脂がトロリと溶け出す美味しさが楽しめます。関東風の場合、煮込みすぎると固くなりやすいので注意が必要です。

モモ

ロースに比べるとあっさりとした味わいです。さすがにとろけるような食感はありませんが赤身特有の旨味をしっかり感じることが出来ます。

野菜

ネギ、ハクサイ、シュンギク、シイタケ、焼き豆腐、シラタキ、麩等が一般的には用いられます。

また、すき焼きは地方によって様々な進化を遂げています。北海道や関西ではたまねぎを入れるのが定番と言われています。牛肉が高価だった東北地方や北陸地方では豚肉を入れるのも一般的です。
その他、地方によってはお餅、ゴボウ、大根、トマト、じゃがいも、はんぺん。〆にラーメンを入れたりと様々な楽しみ方があるみたいです。

すき焼きのタレ・割り下のオススメ・レシピは!?

すき焼きに使う割り下(「割り下地」の略)とは、だし汁に醤油、みりん、砂糖、塩などの調味料を加えて煮立てた汁のことを言います。
一般的にすき焼きのタレというのも割り下と同じ意味合いをもっています。

明治28年創業のすき焼き、しゃぶしゃぶの専門店である人形町今半は創業以来変わらない割り下の黄金比率があるそうです。
「醤油4:みりん3:砂糖2:水1」といわれるその黄金比率で割り下を作るととても美味しい割り下が作れるとのことです。
昆布だしとこの比率さえ守れば美味しい割り下の完成です。後は好みでちょっとずつ割合を変更しても美味しくいただくことが出来ますね。

本格的な熟成肉で格之進のすき焼きを楽しもう

一般的には熟成肉よりもフレッシュなお肉のほうが見た目がキレイな薄いピンク色をしているため、「すき焼・しゃぶしゃぶ」用のお肉としてはフレッシュのお肉のほうが多く使われがちです。

すき焼きのお肉。熟成肉の専門店である格之進ではもちろん「からし熟成+ウェットエイジング」でしっかりと熟成されたお肉です。
普段召し上がっていただいているフレッシュなお肉とはまた違った新しいお肉の表情を見つけることができるはずです。食感、旨味、風味、甘さ、香り。しっかりと変化した門崎熟成肉はすき焼きのお肉としても大変美味しくご賞味いただけます。

肉おじさんの手切りすき焼き

ちなみにすき焼きを最も美味しく食べるためには「手切り」ですき焼きのお肉を切ることも重要な要素です。
職人が包丁を使って均等な暑さでカットすることを「手切り」といいますが、ほとんどのすき焼き屋さんでは肉を均等な薄さで切ってくれるスライサーという機械を使うか、予めスライサーで薄切りにカットされた状態で納品されたお肉を使っています。
一般的なスライサーでお肉を切った場合、お肉の繊維や柔らかさやそのお肉の個々の筋組織の結束状態(硬さ)や霜降りの入り方によって最適な力加減でカットすることによりお肉の細胞が綺麗な状態で切り分けられるのでお肉へのストレスが最小で済むことによりお肉の肉汁が流出しにくくなりお肉の旨味を最大の状況で愉しむことができます。そうするとお肉の素晴らしさを逃さず愉しむことができます。
スライサーでカットするとお肉にとって部位ごとに最適な力でカットされる設定になっていない限り、機械の一定の力でそのお肉の部位に特徴に関係なくカットするため、そのためお肉の繊維が押しつぶされてしまったり、必要以上に摩擦が起きてお肉にストレスを与えてしまうことがあります。霜降りの溶けやすい脂は摩擦で一度溶けた後に再度固まってしまうことがあるのですが、その際に出てしまう脂カスがアクの出る要因にもなりやすいと言われております。 お肉のことをしっかりと理解した職人が手切りでカットをする場合、お肉の状態や部位の抵抗に合わせて強弱をつけて切ることができるのです。
必要以上に摩擦が起きないように切ることが出来、繊維も押しつぶされにくいです。
最もお肉にストレスをかけないようにカットすることができるのが手切りすき焼きだと思っております。

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肉おじさんオススメのすき焼き専門店

浅草ちんや
1880年(明治13年)に創業の老舗。高級黒毛和牛の熟成肉を使ったすき焼きをいただけます。
住所:〒111-0032 東京都台東区浅草1-3-4
URL:http://www.chinya.co.jp

人形町今半
近江牛を東京で広めた老舗の銘店。とろけるような脂肪の柔らかさに拘った牛肉を楽しめます。
住所:〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-9-12
URL:https://www.imahan.com

銀座吉澤
松阪牛を東京でブランディングした老舗銘店。こだわりの松阪牛を楽しめます。
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座3-9-19
URL:http://www.ginza-yoshizawa.com

門崎熟成肉のすき焼きを食べることができる店舗

熟成肉ならではの深い旨味と味わい深いコクが特徴の 門崎熟成肉を使ったこだわりのすき焼きを楽しめます。
格之進自慢の一品です。

格之進82

格之進82
住所:東京都港区六本木7-14-16 六本木リバースビル
URL:https://kakunosh.in/restaurant/kakunoshin-82.html

丑舎格之進

丑舎格之進
住所:岩手県一関市川崎町薄衣字法道地21-16
URL:https://kakunosh.in/restaurant/ushiya-kakunoshin.html

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ハンバーグと日本の食文化

日本の食文化となったハンバーグ

ハンバーグの起源は、騎馬民族タルタル人が食べていた生肉料理と言われ、ドイツに伝わり、アメリカに移民したドイツ人がよく食べていたことがはじまり。
日本でハンバーグが食べられるようになったのは、文明開化で洋食が食べられるようになった頃のようですが、家庭の味になったのは戦後のこと、1960年代あたりのようです。1971年には、マクドナルドが日本に上陸し、誰もが知る、大人も子供も好きな人気メニューになっていったのです。

とはいえ、海外では、ハンバーグステーキというものはほぼなく、欧米ではハンバーガーが主流です。そもそもハンバーガーのお肉は、牛肉100%でひき肉を固めたパティと言われるもので、日本のハンバーグのように玉ねぎや香辛料、パン粉や牛乳などで調味したものではないのです。

日本のハンバーグは、ラーメンやとんかつのように、海外から渡来した料理を日本人の嗜好に合わせて最適化したものなのです。

ハンバーグは日本の味!?

その味作りの原点になるのが、日本人独特の口中調味という食べ方。
日本人には、白いごはんを食べながら、魚を食べ、煮物を食べ、口の中でいろいろな素材を混ぜ合わせながらおいしさを調整して味を楽しむという習慣があります。いわゆる三角食べといわれるものです。日本のハンバーグも格之進のハンバーグも、ひき肉だけでなく、玉ねぎやパン粉、スパイスなどが入っています。ハンバーガーの具材がお肉に混ぜ込まれている、そう考えると、ハンバーガーを調理したものが、日本のハンバーグなのではないかと考え、日本人が好きな理由ではないかとーー。日本人が受け入れて日本人の嗜好に合わせ、融合させる適正化したものがハンバーグだと思います。
そして、和牛を含む国産牛の肉質の向上がより日本のハンバーグを進化させおいしくさせたと思います。また、日本のハンバーグと、いわゆる海外のハンバーガーのパティとの大きな違いは、豚肉のおいしさも合わせた合挽き肉を使用する場合が多いことも大きな要因。海外の食肉事情を見ても、牛と豚の合挽き肉というカテゴリーがあるのは、日本だけの食肉文化なのです。

日本のハンバーグは、日本風に調理したもので欧米にはないものです。寿司が海を渡り、アボカドやサーモンを海苔巻きにしたカリフォルニアロールが日本に逆輸入したように、日本のハンバーグが、アメリカに渡ることもあるかもしれません。ハンバーグはまだまだ進化しています。世界の人たちが「おいしい」と言われるハンバーグ作りに、格之進は挑戦していきたいと思います。

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ハンバーグのプロフェッショナル!
格之進のハンバーグのレシピ(作り方)

格之進のハンバーグは、国産牛+白金豚の「金格」、和牛+白金豚の「白格」、和牛だけの「黒格」の3種類。

ハンバーグというと、ステーキやすき焼きなど、メイン料理のあまったお肉や硬く扱いに手間のかかるスネ肉など、いわゆる端肉を使って作るものというイメージもありますが、格之進では、ハンバーグに適した部位を厳選してミンチにしています。一頭買いをしているので、あらゆる部位を使うことができるからこそのこだわりです。

また白金豚は、引き合いの少ない腕肉とモモ肉をあえて使用しています(豚肉は、ロース、バラの需要がほとんどなのです)。これは生産者の都合にあわせたものでもあります。また、赤身と脂のブレンドも、お肉をしっかり見極めながら職人が絶妙な配合でお肉をカットしています。
そして、切り刻むのではなく、お肉の繊維の方向を的確に縦に切断しながら細かくカットしてミンチにします。豚ひき肉と調味料を合わせる時もしっかり混ぜ合わせますが、練りの行程は極力抑えて、お肉にストレスを与えないように作っているのです。
それは焼いても、加工してもお肉にやさしく向き合うことが大切と考えているからです。

ハンバーグに使われる材料は、オール岩手

格之進ハンバーグの隠し味とも言えるのが、塩麹。
絶滅危惧種にも登録されているミナミメダカが生息する田んぼ(つまり農薬などを使わないとても自然な環境であるということ)で作られたお米、めだか米に岩手の南部杜氏為に研究開発したのオリジナル麹菌「黎明平泉」を加え発酵させたものです。
岩手は南部杜氏と呼ばれる流派があるほど日本酒造りが盛んなん土地で、2011年秋に開発された麹菌が黎明平泉です。

牛乳は、あの不二家のミルキーの原料ともなっている一関市大東町にある不二家乳業のものを。パン粉は、格之進オリジナルに開発してもらったパン粉で、粗めで細長くしっとりしたタイプのもの。国産小麦を使用し、無添加にこだわって、肉汁の吸収と他の食材との合わさり具合がもっともマッチしたものを特別に作ってもらっています、一関にある共栄フードは、年間18万トン(岩手の工場のみ)のパン粉を専門に作る、日本一の規模を誇る会社です。そんな大きな会社が、格之進のハンバーグのために、専用のパン粉を作ってくれているのです。
お肉も塩麹も牛乳も塩も、そして卵も岩手産。岩手の食材で岩手で作られているのが、格之進のハンバーグです。

その黎明平泉でメダカ米を発酵させて出来た米麹に三陸の海水を昔からの製法、薪窯直煮製法で復活させた天然塩「のだ塩」を使用してオールいわての塩麹を自社で製造しておりこの塩麹が素材を活かしたハンバーグの味わいを支えております。

ハンバーグのソースについて

格之進のハンバーグは、ソースなどをつけることなく、そのまま食べても十分満足していただけるお味に仕上げています。そのポイントは肉汁にあります。塩麹を使いお肉の旨味を引き出すこと、そして和牛の脂で旨味をさらにプラスしているからです(和牛の脂は、本当に味が濃く旨味がすごい!)。だからハンバーグを切るとジュワッと肉汁が溢れます。

これは、ハンバーグの中にソースが入っているようなもので、このジュがあるのでそのままでも十分味わえ、ごはんとの相性も抜群なのです。
とはいえソースとの相性ももちろん◎
定番のデミソースもいいですが、玉ねぎのすりおろしと醤油の和風ソースは、特にオススメです。

ハンバーグの味を決める牛脂

格之進のハンバーグには、牛脂が味付けのひとつとして入っています。とはいえ、ただ脂を入れればおいしくなるわけではありません。

牛肉の脂は、それぞれの部位によって動きが違う(それぞれにかかる負荷が違う)ので、脂肪の質も違います。格之進では、肩、ロース、もも、バラ、おっぱい、ケンネン(内蔵の脂)の6種類の牛脂を分類してカットしています。
それを脂肪酸構成の違いで3つに分類すると、一つは、焼いても繊維が残り溶けてしまわない脂。これはももやおっぱいの脂。すき焼きに使う脂は、この脂(おっぱい)です。二つ目は。焼くと溶けて甘みが残る脂。ロースやケンネンなどがそれ。そして、焼くと程よく繊維が残り溶けて濃厚な甘みが残るのが、バラや肩の脂です。

格之進は、肥育期間30ヶ月以上、枝肉重量400kgのメス牛を一頭買いしているので、これらの脂がすべて手に入ります。その利点を生かし、これらの部位の脂をオリジナルでブレンドしてハンバーグのお肉に混ぜ合わせています。

格之進ハンバーグ増産中!

2018年春からは、小学校の体育館をリノベーションし、最新設備を揃えたハンバーグ工場も完成しました。国産牛(和牛を含む)と、日本有数の銘柄豚(白金豚)のおいしさを最大限に引き出した“日本の味ハンバーグ”が、格之進のハンバーグ。
これからもどんどん作りますよ!

肉おじんさがオススメ!
格之進以外でも食べることができるおいしいハンバーグのお店

Bistro-Q
元祖!フォアグラハンバーグを作り上げた山下九シェフのお店。ふっくらジューシーなハンバーグに濃厚なフォアグラは、ベストマッチ!
住所:東京都港区 2丁目20-15 HAGAビル1F
TEL:03-6459-1909
URL:http://bistro9.com

ハンバーグ ウィル
新宿で有名な行列のできるハンバーグ店。岩手県の銘柄豚、岩中豚の様々な部位を絶妙にブレンドしたふっくらジューシーなハンバーグ。
住所:東京都新宿区 新宿1丁目3-8 YKB新宿御苑ビル 101
TEL:03-3358-4161
URL:http://www.hajimenoippo.co.jp/pages/will-menu.html

京都中勢似 月(にくづき)
熟成肉の「中勢似」のハンバーグのお店。マシンを使わず手でミンチにした、お肉の味をしっかり堪能できる粗挽きハンバーグ。
住所:京都府京都市東山区稲荷町北組573
TEL:075-748-1429
URL:http://www.kyotonakasei.jp/nikuduki/

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J-WAVE『ANA WORLD AIR CURRENT』 ─熟成肉「格之進」の“肉おじさん”と世界の肉を巡る旅

【葉加瀬】 お会いしたのって多分6月になるか、7月になるか、まあ、そんなころですね、初夏ですよね。

【千葉】 そうですね、はい。

【葉加瀬】 我々の仲間と一緒に食事に行きましょうと言って、今日何食べるの、お肉ですと言って、僕はステーキなのかな、焼き肉なのかな。何か何も聞かずに千葉さんのお店に行きまして、いやあ、マニアですよね、まずね。マニアって変な言い方ですけど、ただ肉を、もちろんいろんな焼き肉があるじゃないですか。 でも、千葉さんの焼き肉って肉を焼いて、たれで食べるっていうだけの話じゃないですものね。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 いろんな肉にどうやって熱を入れていくのか、あるいは入れないのか。で、どのタイミングで食べていただくのかという、そのすべてをコントロール、プロデュースしたいから千葉さんがお焼きになられると。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 僕たちはそれをずっと1切れ、1切れ待つと(笑)。それでコースでずっと物語がドラマティックに、まるで1曲の何かシンフォニーを聞くかのようなあのフルコースをいただきましたけれども、でもその焼いてくださる前にやっぱり熟成なり何なりというのがあるわけで、言ってみればすごい時間をかけてあの食事が成り立つんですよね。

【千葉】 そうなんです。もうそもそも牛自体が約4年ででき上がるんですよ。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 種づけしてから10カ月で生まれて、生まれてから最低、私が買っているのは30カ月以上なので、最低40カ月かかって、そこから牛からお肉になって、1カ月ぐらいそのままゆっくり枝肉の状態のまま、あのつり下がっている状態のまま1カ月じっくりうまみを増して、それからまた4分体に分けて、また場所を移動させて2段階目の熟成をさせて、それから皆さんに行っているんです。 なので、もうテーブルに着いた時点で2仕事ぐらいもう終わっているんです。

【葉加瀬】 そうですよね、そういうことですよね。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 いや、でもその熟成肉というのは、ここ数年間ぐらいとても人気の物ですけれど、そもそもそれほどじゃなかったじゃないですか。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 特にこの東京ではというか、日本では。千葉さんは初めから熟成肉を売り出すというか、ドンドン前に出されてやられたでしょう。これはどういう経験からなんですか。

【千葉】 いや、実はもう2002年から熟成肉というものは意識してやっておりまして、今からもう本当に16年前ぐらいから黒毛和牛の熟成というものにずっとチャレンジしてきたんですね。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 そもそも何で熟成肉というものに気づいたかというと、自分の家でもともと牛を飼っていて、その牛を1頭使うという前提で始めたんですよ。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 なぜかというと、自分の家では牛を飼っていたので、お客さんの食べる分だけしか仕入れないというのは、これ生産者に対して申しわけないと思ったわけですよ。だから、私は牛を1頭使うというのは、これは大前提だよねという前提で始めたんです。

【葉加瀬】 はー。普通はでも要するにお肉を食すためのレストランと、そういうことをやられている方というのはそこまでは考えないものね、逆に言うと。卸のことはわからないじゃないですか。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 でも、千葉さんの場合はご実家がというか、おうちがその要するに牛を育てている家だった。

【千葉】 はい、そうです。

【葉加瀬】 子供のときから、じゃあ、牛と一緒にいた。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 (笑)

【千葉】 もう小さいころは牛の世話をしましたね。

【葉加瀬】 そうだね。

【千葉】 えさをあげたり、水をあげたり、肥やしを出したり、飼料の配達をしたりとか、そんなことをしながらやってきましたよね。牛を育てているだけじゃなくて、うちのおじいさんの代から家畜商という馬喰と呼ばれている牛の商売をする家系でもあったんです。

【葉加瀬】 なるほど、なるほど。

【千葉】 それで、並行して牛も飼い始めていたという環境の中に育っていたので、もう牛はもう本当に生活の一部というか、そういった中で高校を卒業していったような感じだったんですね。

【葉加瀬】 僕なんかごちそうになって、やっぱりこんなにお肉を楽しんで食べられるんだというその経験じゃないですか、お客さんのこっちは、ユーザーは。やっぱり全然違いますもんね。

【千葉】 そうなんです。いや、肉って人間と一緒なんですよ。

【葉加瀬】 ほー。

【千葉】 例えばですよ、誰でもいいです。1人の表情を見ていたときに、何かあるとすごい笑顔になったり、何かあるとすごい悲しそうな顔をしていたり。

【葉加瀬】 (笑)

【千葉】 同じ生命体なのに全く違う表情じゃないですか。

【葉加瀬】 わかる(笑)。

【千葉】 お肉もそうなんです。

【葉加瀬】 あはは(爆笑)。

【千葉】 お肉もお肉にどう向き合ってあげるかで、お肉はいっぱい表情を出すんですよ。

【葉加瀬】 (笑)もう、これ、ずっとこう言いながら焼くんだよ、もうこのおじさんは。肉おじさん、ずっと。ほら、今、おれ、笑っているでしょう(笑)。

【千葉】 そう、そう、そう。やっぱり中の自分が肉になっちゃうんですよ。

【葉加瀬】 (爆笑)すばらしい!

【千葉】 もう自分が肉になっちゃって、もう自分が肉だったら今こんなふうにやられると、おれ、こんな感じだぜみたいな。わかります?

【葉加瀬】 (笑)。でも、そうやって調理されてたもんね。

【千葉】 そう、そう。だから、一番やっぱり難しいのは、お肉に一番最初のサーロインの上にヒレを乗っけて、ウニを乗っけて包んで食べたやつがあったじゃないですか。

【葉加瀬】 はい、やられました。

【千葉】 あの極意はお肉にばれないことなんですよ。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 お肉が焼かれているってばれないようにあの肉汁をキューッと、キューッとこぼれないように加熱してあげて、香りがフワッと出たあたりで止めてあげるみたいな。

【葉加瀬】 そうだね。

【千葉】 あれっ、おれ、焼かれてない、うん、みたいな。

【葉加瀬】 (笑)そうだね。

【千葉】 まあまあ、焼かれてはない。

【葉加瀬】 ないよね。

【千葉】 ねえみたいな感じ。

【葉加瀬】 本当にそういうぐらいの感じですもんね。

【千葉】 そう、そう。

【葉加瀬】 あれがもう言葉にならないぐらいおいしかったですよ。

【千葉】 いや、もう。

【葉加瀬】 感激しました。

【千葉】 本当にもうお肉ちゃんはですね、もう本当にすごい能力を持っているんですよ。

【葉加瀬】 そうですね。そういうような話を伺いながらずっとご飯を食べました。そして、おいしいお肉をたくさんごちそうになって、それから数日後ですよ。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 千葉さん、ずっとロンドンに行かれていたでしょう、イギリスに。

【千葉】 はい、はい。

【葉加瀬】 まあ、もうすごい時間にいっぱい写真を送ってくださった(笑)。もう次から次へと写真が送られてきて、何だと思う、肉の写真ばっかり全裸で、ありがとうございます。僕も肉が大好きだから、もう業界では「ギュウさん」と呼ばれていますから。それがいっぱい。あれはイギリスの旅だったんですね。

【千葉】 ええ、そうです。

【葉加瀬】 あれ、もういろんなところを旅に行かれていると思うんですけど、やっぱりこれはいつも肉を求めていろいろ勉強ですか。

【千葉】 もうそうですね。やっぱり海外に行くのは、やっぱり自分の領域をどう幅を広くさせるか。やっぱり私はもう肉にしか反応しないので。

【葉加瀬】 (笑)

【千葉】 もう本当に申しわけないけども、観光地の皆さんには。全く観光しないんですよ。

【葉加瀬】 (爆笑)もう本当にそのイギリスの旅の1日目に肉屋。それがまた僕がずっとロンドンで住んでいた一番家の近くの肉屋さん。これがいい肉屋なんだけど、その肉屋の看板の写真から始まって。

【千葉】 そう、そう。

【葉加瀬】 ショーケースから始まって、今度はまたいろいろファームも行かれていたでしょう。

【千葉】 そう、行きました、行きました。

【葉加瀬】 ねえ、牛の写真とかいっぱい送られてくるんですよ、豚の写真とか。今回のイギリスの旅はいろいろ収穫がありましたか。

【千葉】 いやあ、ありましたね。やっぱり何かというとやっぱり肉屋さんを見ていて、どういう肉が重要視されているかというと、やっぱりローストビーフにしたらうまそうな肉が。

【葉加瀬】 そうなんだよね。

【千葉】 結構重要なポジションに置いているんですよ。

【葉加瀬】 そう、そうなんですよ。まず何よりもイギリスってオーブンの文化なんですよ。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 とにかく90%のクッキングはオーブンでやっちゃうんです。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 ですから、肉もどうやってローストをするかという、ほとんどそうです。

【千葉】 私、あの肉屋さんを見たときに、部位のセンターってあるじゃないですか。もうセンターに何が乗るかで大体その国の主食の料理って。

【葉加瀬】 なるほど、一番。

【千葉】 そう、そう。

【葉加瀬】 みんなが好きで買う量が多い物ね。

【千葉】 そのとおりです。

【葉加瀬】 そうね。

【千葉】 そのときにやっぱりセンターにもう塊の、それもああ、これ、ローストビーフにしたらうまそうだなみたいなやつが、どこの店に行ってももう目に入るんですよ。

【葉加瀬】 そうですね、本当にそのとおりですよ。

【千葉】 だから、ステーキカットは中心じゃないんですよ。

【葉加瀬】 ないですね。

【千葉】 だから、うわー、やっぱりロンドン、イギリスというものは、やっぱり塊の文化であり。

【葉加瀬】 そうなんですよ。

【千葉】 ローストビーフの文化なんだなということは、もう直観的に感じましたよね。

【葉加瀬】 いや、もうまさしく全部オーブンなので、ビーフはとにかく2〜3キロの塊からスタートですし、まずあと赤身が好きですからね。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 量を食べますからね。イギリスってやっぱり和牛もはやってきているでしょう。

【千葉】 ええ。

【葉加瀬】 和牛、すごかったでしょう。

【千葉】 和牛、もう和牛、和牛となってましたね。

【葉加瀬】 wagyu、wagyuって。あのスペリングで書いているwagyuっていうのはやっぱり大体本当に高いですからね。ダブルスコアぐらいの、倍ぐらいの値段がしますから。

【千葉】 実はこれ、すごい話があって、結構日本の方がなかなか実は理解していない、知られていないことなんですけど、和牛でダブルスコアって言ったじゃないですか。それ、実は日本産じゃないんです。

【葉加瀬】 うん、オーストラリア。

【千葉】 ねえ、そうなんです。だから、海外に行くと和牛っていうものは認知してても、和牛ってオーストラリアでしょうとか。

【葉加瀬】 そうなんですよね。

【千葉】 私もフランスにいたときに、シェフと話したときに、私、和牛のレストランを16店舗やっているんだ。おお、おまえ、和牛のレストランをやっているのか。おれも和牛を使っているぞ。おれ、スペイン産だけど、おまえはどこ産を使っているんだと言われて。

【葉加瀬】 そうなんだよね。

【千葉】 エーッみたいな。

【葉加瀬】 そうなんですよね。だから、あれはどういうあれになっているんですか、基準はなっているんですかね。日本の黒毛和牛の牛をどこで育てても和牛は和牛ってこと?

【千葉】 ほとんどは99%ぐらいが純粋な和牛の流通というのはしていなくて、F1と呼ばれている和牛とアンガス牛であったりとか、和牛の種に現地の牛を合わせたりとか、そういうF1と呼ばれている物がほとんどなんですね。

【葉加瀬】 なるほど、なるほど。

【千葉】 なので本当の純粋の和牛という物は、世界で流通している、日本じゃない物の流通している物の純粋な黒毛和牛という物は1割も多分。

【葉加瀬】 ないんだ。

【千葉】 いない、1割いないと思います。

【葉加瀬】 なるほどね。

【千葉】 もうほとんどがそういうF1とかF1クロスというふうな、F1にまた。

【葉加瀬】 次を掛けて。

【千葉】 そう、掛けてやってF1クロスとか、そういうような物はあったにしても、ほとんどがF1ですね。

【葉加瀬】 これからってどんどんどんどん和牛ってやっぱり世界に出て行きます、もっとはやってくるものかしら?

【千葉】 そうですね。今日も実はシカゴのレストランオーナーがちょっと私に会いに来てくれて、いろんなシカゴの実情を話していたんですけど、もうすごいブームらしいんで。

【葉加瀬】 そうですか、やっぱりそうなんだ(笑)。

【千葉】 もうダブルスコアどころじゃない価格でレストランでは流通しているという話になり、もう千葉さん、早く一緒にやろうみたいなことを言われているんですけど、やっぱりでもこれから、いや、まだまだ日本の可能性はあると思っていて、それはなぜかというと世界の人たちが、もうほとんどの人たちが日本の牛肉という物は、神戸牛は認識しているんですよ。

【葉加瀬】 そうね、神戸ビーフとしか言わないもんね。

【千葉】 神戸ビーフはもう日本の物、すごいという。もう和牛よりももっとすごいというふうにもう認知されているんで。

【葉加瀬】 はい、はい。

【千葉】 ところが、和牛自体が日本の物だというふうな認知が全然されていないということは。

【葉加瀬】 うん、まだ。

【千葉】 本当は危機なんですけど、ちゃんと情報を伝えていければ日本のアドバンテージは物すごいものになると思うんです。

【葉加瀬】 なるほど。逆に言うとチャンス。

【千葉】 私はもうそうとらえるしかないんですよね。

【葉加瀬】 ほー、おもしろ。

【千葉】 もうだってもう商標も取られてしまって、もう和牛という物自体がもう日本の物だということがもうできない状態。できないというか。

【葉加瀬】 伝えづらいですよね。

【千葉】 づらい状態なので、でもちゃんと伝えていければ和牛が、いずれ時間はかかりますけど、間違いなく日本の和牛はもう圧倒的に違うので。

【葉加瀬】 そうですよね。

【千葉】 これはでも本当に圧倒的に違うんですよ。

【葉加瀬】 うん、別物ですよね。

【千葉】 別物です。もう海外の和牛と言っている物と、日本で育てた和牛は本当に違います。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 ただ、その中でブリーダーは違いますけれども、じゃあ、本当にお客さんに受けるのはどっちかとなってくると、またこれはちょっと別軸の問題はありますけれども、でも日本の和牛は明らかにまるっきり違う牛だということは、やっぱり私はある程度行った国の中で比較するともう圧倒的に和牛のほうが違いがある。 まあ、おいしいかどうか。おいしいと評価するかどうかは、その国のバックグラウンドによって。

【葉加瀬】 違うからね。

【千葉】 評価基準は違いますけれども、圧倒的に違う牛肉であるということは伝えることができると思いますね。

【葉加瀬】 フランス、よく行かれているということなんですけど、どういうきっかけで、どんなことをされに行ってるんですか。

【千葉】 フランスは、もともとはシャルキュトリーってシャルキュトリーです。

【葉加瀬】 ああ、シャルキュトリー、つまり豚肉を加工したハムとかソーセージとか。

【千葉】 はい。シャルキュトリーを勉強しに行くのに初めて行ったのと、その中でピエール・オテイザさんというバスク豚、キントア豚って言うんですけども、これが絶滅、もう27頭ぐらいまでしか。24頭だったか、そこまで減ったものを、今もう8,000頭から1万頭ぐらいまで戻しているんですけども、それはなぜそういうふうに絶滅になった物を増やせたかというと、何でそもそも絶滅になったかというと、生産効率を求めていったらそのキントア豚というのは生産効率が悪いんです、おいしいけど。もう通常よりも時間はかかるし、お金もかかるし、お肉にもならない。だから、もうそれは選ばれなくなってきて、生産性の追求をした余りそれがなくなってしまう。

【葉加瀬】 ああ、なるほど。イベリコみたいには成功しなかったんだ。

【千葉】 いや、イベリコもですね、実は。

【葉加瀬】 同じような。

【千葉】 同じようなことだったんですよ。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 イベリコも火がついたから今またこういうぶり返していますけど。

【葉加瀬】 ああ、なるほど。

【千葉】 もともと。

【葉加瀬】 同じことか。

【千葉】 そうですね。ただ、イベリコの場合は生ハムの文化があって、もう最高の物に関してはイベリコ豚を使うというふうな規定というか、ルールが生ハムの。

【葉加瀬】 そうですよね。

【千葉】 中にあったので、イベリコ豚はまだ。

【葉加瀬】 守られた。

【千葉】 守られていましたけども、キントア豚に関してはもうあくまでも生産効率と比較したときに圧倒的に不利だったんですね。おいしいか、おいしくないかと言ったら、まあ、十分おいしい。でも、やっぱり時流に乗っていなかったんですよね。それでなくなりそうなときに、いや、この在来種をしっかり守らなきゃいけないということで、ピエール・オテイザさんという方がキントア豚というものを増やしていきながら、自分の直営の小売のところでシャルキュトリーにして販売する。ないしは、星つきのレストランにしか売らないというふうなやり方をやって、そのキントア豚というものを通じながら地域創生事業をやられた。 だから、私の中ではそういう私も牛肉という物を使って地元でつくられた牛肉をベースに、それのよさを伝えながら地方創生をしていきたい。そこに附帯する例えばお米とか野菜とかいろんなものもそういうお店でハブとして伝えていきながら、食を通じた地方創生をしたいとずっと思っていて、それをやっぱり見事に成し遂げていたのがそのピエール・オテイザさんだったので、オテイザさんのところに勉強しに行きましたし、その関係性でいろんなシェフを紹介されたりとか。

【葉加瀬】 そうね、横につながっていきますからね。

【千葉】 はい。やっぱり新しい価値を生み出して、その価値を共鳴してくれるお客様と一緒にシェアして拡散していく、守っていくというふうなことですよね。だから、私はもう皆さんから見ると焼き肉屋さんをやっているような感覚で多分見えると思う。別にそれでいいんですけど、やっている本人としては。

【葉加瀬】 全然違う(笑)。

【千葉】 もう全然違っていて、もう本当に証券会社を経営している感覚で。

【葉加瀬】 あはは(笑)。

【千葉】 もう私はお店という証券取引所があって。

【葉加瀬】 なるほど、なるほど。

【千葉】 その証券取引所では私はもう岩手、一関を中心とした岩手の生産者の生産物。それも岩手の生産者だったらいいというのではなくて、これ、伝えたい生産者。

【葉加瀬】 おもしろ!

【千葉】 生産物を私は証券として仕入れているわけです。それをお客様は消費という名の私にとっては投資家なんですよね。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 だから、私は消費者。私の目の前には消費者というのはいなくて、私がつながっているのはみんな投資家なんですよ。

【葉加瀬】 ふーん。

【千葉】 だって皆さんも頑張って稼いだお金をいろんな、私からするといろんな証券取引所があるんですよ。格之進というような、格之進という証券取引所は岩手、一関を中心とした岩手の食材に投資できる取引所ですよというふうなことなわけです。

【葉加瀬】 ふーん。

【千葉】 だから、そういう私はコミュニティをつくっていきながら、どうやって農業をデザインしていくのか。

【葉加瀬】 おもしろい。まあ、とにかく千葉さんの要するにレストランというのは、焼き肉屋さんという形をとっているけど、おっしゃるとおり本当にそれはもうその日本の文化、あるいは岩手の文化であり、日本の文化をどうやって表現するかというアトリエでもあり、コンサート会場でもありということだね。

【千葉】 そうですね。

【葉加瀬】 いや、おもしろいですよ。もうそのとおりだと僕は思いましたし、本当にすごい、あんな体験したのは初めてだったし。でも、あそこに行って、あのお肉を、千葉さんのお肉をいただくというのは、1つの千葉さんのショーを見に行くってことだもんね。おもしろいね、本当。これからも頑張ってください。

【千葉】 ありがとうございます。

【葉加瀬】 今後はお店の展開ももちろんですけれども、いろいろ何かビジョンはあるんですか、やりたいことは。

【千葉】 そうですね、私がやりたいことはやっぱり食を通じた地方創生というか、やっぱり今言ったように消費者はいなくて皆さん投資家なんですよね。食べる人たちは私から見ればみんな投資家なんですよ。だから、1つは皆さん食べる人たちはその消費者じゃないよ、自分は投資家なんだというふうに考えてもらえれば、自分が頑張って稼いだお金を日本の食の未来のためにどのように投資しようかなとちょっとだけ思ってもらえれば、日本の農業の未来って物すごい明るいものになると思うんですよ。

【葉加瀬】 そうだね。

【千葉】 そういったところに貢献したいということが1つ、役に立ちたいということが1つと、あともう1つは、私、この間来ていただいたところ、格之進肉学校という校舎にしていますけれども、あそこは六本木分校なんですよ。

【葉加瀬】 (笑)。

【千葉】 本校は私の小学校の母校なんですけども、人口が1,000人もいるか、いないかなんですけども、コンビニも信号もない場所なんですけど、そこの廃校になった私の小学校の母校を今実は本社にしていて、そこの体育館をハンバーグ工場にしているんです。そこがうちの本社であり、格之進肉学校本校なんですよ。

【葉加瀬】 なるほど。

【千葉】 肉の聖地である格之進の肉学校の本校に来てもらって、地域のあの自然を、もうビオトープ豊かな自然の中で、こういう思いで自分たちはやっているんだということを体感してもらいながら、来てさえくれればさまざまな生産者がいるので、この生産者と触れ合ってもらいたいんですよ。これは牛だけじゃなくて野菜とか。

【葉加瀬】 そうだね。

【千葉】 そうするとみんな自分の仲間は哲学を持っているんですよ。自分はどういう思いでこの米作りをしている、どういう思いでこういう野菜を作っている。これですね。お金もうけにも当然つながるんですけども、でもそれよりも自分はどうありたいかということをやっていて、だから私、生産者というのは思想家であり哲学者だと思っているんですよ。

【葉加瀬】 そうだね。

【千葉】 だから、結局どのような考えで、どのような思想で思っているからこそこういう野菜ができる、こういうお米ができると私は思っているんですよ。

【葉加瀬】 すてき。

【千葉】 だから、そういうふうなことを知ってもらって、より豊かな投資家になってもらいたいと思っているんですよ。

【葉加瀬】 いいですね。ほら、千葉さんがロンドンから送ってもらったというリドゲートというお肉屋さん。今思い出したら本当にうちの娘なんかはちっちゃいときに、それこそだって10歳にならないころに、お肉屋さんのイベントでファームの見学に行ってるんだよ、遠足に。

【千葉】 あー、ねえ。

【葉加瀬】 お肉屋さんの前で集合して、小学生みんな行って、それをみんな連れて、みんなでそういう牛の育てるところを見て、ガチョウを追いかけて、七面鳥をもらって食べて帰ってきて、ファームの中を泥んこになって帰って来ていたから、だからそういうのって本当に大切だよね。

【千葉】 いや、大切ですよ、大切。

【葉加瀬】 ねえ、生産者の顔を見て、子供のときに何かというのは。

【千葉】 そう。

【葉加瀬】 いや、そうか、あれは自然にやっていて、うちなんかイベントで何かちょっとでも体験させたいからと言って応募して行っていたけど、ああいうのってやっぱりいっぱいたくさんやったほうがいいね。

【千葉】 やったほうがいいと思う。豊かになると思います、感性が。

【葉加瀬】 なるね、そうだよね。

【千葉】 ええ。

【葉加瀬】 子供たちなんかが自然とそれを勉強して、あと何かこう知っていくことが大切だもんね。楽しいな。これから今後とも何か肉の旅を続けてくださいませよ。

【千葉】 はい。

【葉加瀬】 さて、最後にこれは必ずゲストの方に伺っているのですが、千葉さんにとって旅って一体何ですか。

【千葉】 肉との出会いです。

【葉加瀬】 あはは(笑)。ありがとうございました。

「ジャージー子牛肉」と「有難豚(ありがとん)」

要約

「第17回肉肉学会」のテーマは「アビタニア・ジャージーファームのジャージー子牛」と「高橋希望(のぞみ)さんの有難豚(ありがとん)」。
アビタニア・ジャージーファームのジャージー牛肉は7か月齢と11か月齢の子牛肉。経営主の安原栄蔵さんには、「第14回肉肉学会」の「64か月齢のジャージー去勢牛肉」でも登場していただいた。今回は、子牛牛肉だけでなく、低温殺菌牛乳やヨーグルトも提供していただき、酪農家の恵みをフルに活用させていただいた。
「有難豚」は東日本大震災で宮城県名取市にあった養豚場が津波に流されてしまった高橋希望さんが東京で飼う放牧豚。津波で養豚場が流されたとき、高橋さんは東京で仕事をしていたが、養豚場にいたお父さんは「縦型コンポスト(堆肥を発酵させる密閉した発酵装置で高さは10mを超える)」の上に避難して無事だった。流された母豚たちのうち一部は自力で波から逃れ、倒壊した飼料タンクの中で残った餌を食べたり、近所の見知らぬ家で保護されたりして数十頭が高橋さんの元に残ったという。この日提供された豚肉は、それらの子孫に当たり、東京都杉並区の某所で放牧肥育されたもの。

安原栄蔵さん
高橋希望さん
更科堀井・堀井社長(中央)

牧場の概要

アビタニアジャージーファームの概要

「ABITANiAジャージーファーム」は青森県鰺ヶ沢町にあるジャージー牛専用牧場。1990年に6頭の牛からスタートし、現在は成牛、子牛合わせて約100頭の牛を飼育している。経営主の安原栄蔵さんは、我が国のジャージー飼育の草分け的な存在である「神津牧場」で勤務した後、カナダでの実習等を経て、現在地に新規参入農家として就農した。就農に当たっては、農林水産省の「畜産基地建設事業」を活用している。
1997年にはアイスクリーム工房「ミルム」を設立。2016年には畜産クラスター事業(農林水産省の補助事業)を活用して、食肉加工もできる乳製品製造施設が完成。現在では、牧場で生産・肥育したジャージービーフを自ら販売するほか、チーズ、バター、ヨーグルトの製造販売も行っている。
本牧場では、雌雄判別精液の使用による雄雌生産のコントロールはしていないため、生産される雄子牛は自家肥育を行っている。肥育方式にはあまりきっちりしたルーティンはなく、雌肥育同様、牧草と少量の配合飼料で飼育しているため、肥育期間は長くなる傾向にあるようだ。雌牛肥育は、繁殖時に太りすぎたものなどを肥育に回しているほか、自家更新で余った雌牛も適宜、肥育を行っているとのこと。十和田市のと畜場でと畜し、大分割したあと、2016年に完成した食肉加工施設で自ら部分肉加工し、加工場に併設するカフェ[MilMu]でジャージービーフとして提供している。更に、弘前市のホテルにも販売しているが、量的には限界があり、定期定量販売というところにまでには至っていない。
ジャージー牛の管理は、放牧も行いながら自給飼料生産も実施しているが、栄養価が高いアルファルファをカナダから輸入して給与している。乳脂率の高いジャージー牛の飼育には、1アルファルファ給与が必要との考えからだ。

「有難豚(ありがとん)」の概要

前述したように、高橋希望さんは、東日本大震災の発災時は、東京で食育コーディネーターをしており、兄と弟がいたので実家の養豚場を継ぐ意志はなかったとのこと。現在は、宮城県栗原市の養豚場(名取市の実家養豚場が崩壊したあとで借りている豚舎)の母豚から生まれた子豚を東京都世田谷区の植木屋さんの敷地内で7〜8ヶ月放牧飼育している。精肉販売とハム・ソーセージなどの加工品(ハム工房等への委託生産)を契約販売している。事業規模の拡大は難しいので、小頭数ながら、付加価値を高める戦略である。飼育する豚の品種は、もともと飼育していた黒豚やデュロック種を交配したものが主体で、茶色と黒の斑柄の豚は、見た目にも人気があるとのこと。 なお、ゲーム開発会社とタイアップした「ようとん場」というゲームアプリが180万ダウンロードを超える人気を有しており、100万ダウンロード記念の「豚肉プレゼント企画」で「有難豚」の精肉やソーセージをプレゼントしたこともあるとのこと。

本日の食材

月齢の異なる2頭のジャージー去勢子牛の肉で、1頭は2017年4月25日生まれの11か月齢、1頭は2017年8月5日生まれの7か月齢で、どちらもアビタニアジャージーファーム産、2018年3月14日に出荷され、同日、十和田食肉センターでと畜されたもの2。前者の枝肉重量は57kg、後者は同46kg。給与飼料は同牧場が飼育する他の肥育牛と同様、牧草(アルファルファ主体)と若干の配合飼料とのこと。「子牛肉」といっても、ミルクのみを給与する「ヴィール」ではなく、肉食も赤身である。

「有難豚」は飼育規模が小さく、定時定量出荷という体制がとれないため、また精肉は契約販売を主体としていることもあり、今回は「有難豚」の生ハムに。放牧豚のモモ肉の2年熟成とのことで宮城県内の業者に委託製造している。肉色が美しく原木の香りも芳しい。適度な塩加減で風味豊か。美味しい。
(写真:有難豚の生ハム原木)

本日のメニュー

〇 アビタニアジャージーファームの牛乳(乾杯)
〇 有難豚の生ハム(写真1)
〇 クリームヨーグルトのカナッペ「セルヴェル・ド・カニュ」(写真2)
〇 ヨーグルトとフルーツ、ジャージー牛の生ハムのサラダ(写真3)
〇 ジャージー子牛の内臓のソーセージ「アンドゥイエット」(写真4)
〇 ハツのソテーとレバテキ(写真5)
〇 ハチノスとセンマイのトマト煮込み(写真6)
〇 子牛のステーキ (7か月齢と11か月齢)(写真7)
〇 子牛のミートボール モッツアレラチーズのグラタン(写真8)
〇 子牛のジャージーミルク煮(写真9)
〇 牛そば 肩ロース首もととスジ肉の付け汁(写真10)

参考文献

アビタニアジャージーファーム HP
有難豚 FB
総本家更科堀井
家畜改良センター個体識別情報検索サービス
格之進 HP

脚注

1 アルファルファはヨーロッパ原産のマメ科牧草。栄養価が高く「牧草の女王」と呼ばれるが、酸性土壌の多い日本では栽培適地が少なく、ほとんど北米からの輸入に頼っている。

2 個体識別番号「1363840722」「1363840630」を「家畜改良センター」の個体識別情報検索サービスで確認。

写真

1有難豚の生ハム
2クリームヨーグルトのカナッペ
3ヨーグルトとフルーツ、ジャージー牛の生ハムのサラダ
4ジャージ肉の内臓のソーセージ「アンドゥイエット」
5ハツのソテーとレバテキ
6ハチノスとセンマイのトマト煮込み
7 子牛のステーキ 7か月齢と11か月齢
8子牛のミートボール モッツァレラチーズのグラタン
9子牛のジャージーミルク煮
10 肩ロース首もととスジ肉のそばつけ汁

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