熟成肉の格之進

  1. 熟成肉の格之進
  2. 門崎熟成肉

全共新潟県代表・関さんの黒毛和牛と山古志闘牛100日熟成闘牛肉を食する

山古志村の関さんは全共新潟代表であり闘牛文化を支える一貫経営農家

[caption id="attachment_4714" align="aligncenter" width="786"] 高岡さんの挨拶[/caption]

第12回 全国和牛能力共進会鹿児島大会に新潟県を代表して出品された黒毛和牛一貫生産者の関克史さんは、山古志の伝統文化である「闘牛」の牛持ちであり「勢子」もされています。山古志の闘牛は我が国の闘牛で唯一「国指定重要無形民俗文化財」なのですが、肉牛農家を中心に自腹で維持している状況。闘牛は10〜15歳で更新されますが、去勢しない玉ちゃん付きだし硬いし、お肉としては二足三文。伝統維持のために少しでも利益を生みさせれば、と地元新潟の飲食業・イデアルの和田さんが100日間熟成で商品化、都内でも一軒のレストランで食べることができます(見島牛並みに不定期)。

今回の肉肉学会では、滅多に食べられない闘牛の熟成肉を食し、フードチェーンから排除されがちな闘牛肉を救う道を探るとともに、牛が生活と文化に根付いている山古志の生産者の営みを学びます。こうしたアプローチは「見島牛の学び」に近いのですが、いかんせん私も食べたことがない闘牛肉。なので、同じ山古志(というか新潟県でも)のNo.1生産者である関さんの黒毛和牛肉も味わうことで、バランスを取りたいw、と思います。この黒毛和牛が関さんが全共に出品された「怪物君」なのです。5年に一度の牛のオリンピック「第12回全国和牛能力共進会」の第8区(肉牛部門)」出品の「怪物君」と、年に数頭しか出荷されない山古志の「闘牛」のお肉を食べ並べた貴重な機会となりました。

[caption id="attachment_4713" align="aligncenter" width="786"] 関さんを囲んで(後ろは山古志闘牛の面綱[/caption] [caption id="attachment_4715" align="aligncenter" width="443"] 和田亮さん[/caption]

最初に関克史さんのプレゼン。父の後を継いで一本立ちするまでの経緯と2004年に被災した中越地震の影響、完全一貫経営の良さと難しさ、伝統文化である闘牛を守る意気込みなど真摯に語ってくださいました。 そうした中越地震をめぐる貴重なエピソードをビデオとともに披露してくださったのが、テレビ東京時代に「田舎に泊まろう」をプロデュースされた大島信彦さん。2005年1月16日に放映された田中健二郎さんの山古志訪問レポートで、なんと!若き頃の関さんが奥さんと生まれたばかりの長女と登場!番組公式HPでは「続いて訪問したのは、前回の旅で闘牛を見せてくれた牛舎の親子だった。あいにくお父さんは仕事のため不在だったが、息子さんに会う事が出来た。地震で牛舎は倒壊し、飼っていた闘牛も死んでしまったという。それでも、再び山古志村で闘牛が見られるようにお父さんと共に頑張っていくという息子さん。決意を聞いて、田中は勇気を感じた」と紹介されてます。

[caption id="attachment_4716" align="aligncenter" width="786"] 関さんとの思い出を語る大島さん[/caption]

大島信彦さん、心温まるお話、ありがとうございました。

[caption id="attachment_4717" align="aligncenter" width="786"] ご家族が笑顔で写る、関さんのプレゼンの表紙。[/caption]

続いて、今回の闘牛肉を熟成していただいた和田亮氏(イデアル代表)のお話し。

和田さんは、新潟市を中心に新潟の食文化の活性に事業に向き合っているイデアルの社長として、新潟県長岡市にある山古志闘牛文化を知ってもらうきっかけに何なるように現役を終えた闘牛の牛肉が生かされていないことに着目し、闘牛の牛肉を独自の熟成技術で可食可能な状態に整え商品化に挑戦をしています。精肉のほか、パストラミ、水餃子などの加工品も手がけています

この日のお肉は本当に特別です。まず10月初旬に鹿児島県で開催された、和牛のオリンピック「第12回全国和牛能力共進会」に新潟県代表で出品された「怪物君」。全共に出品されたお肉は競り落としたお肉屋さんの「看板商品」となりますが、肉おじさんがその一部を購入(清水の無事から飛び降りて捻挫したとの噂ですw)、参加者に供されました。私も全共出品牛を食べるなんて、滅多にない機会です。

[caption id="attachment_4719" align="aligncenter" width="786"] 関牧場を訪問したときの肉おじさんと「怪物君」[/caption]

怪物君は、23か月齢(普通の去勢は平均28か月齢)という若齢ながら、生体重786kg、枝肉542.6、ロース芯97、バラ厚8.8、皮下脂肪1.9、歩留79.4、BMS12、A5、MUFA51.8、枝肉単価4160円/kg(神戸ビーフより高い!)という素晴らしい成績です。

並べた「闘牛肉」は2頭。「南部牛王」(16歳 黒毛×褐毛の交雑種)と「魚沼号」(12歳 和牛間交雑種)です。闘う姿も頼もしいですね。どちらも岩手県生まれ。岩手県は「塩の道」で運搬に利用した日本短角種の産地で、塩の道を通って山古志にたどり着いた牛をそのまま売って帰る(帰りは空荷になる)ことがあり、山古志の闘牛(岩手県の旧山形村も闘牛の里)の種まきをしてくれたのですね。「個体識別データ」のルール上、「黒毛×褐毛」交雑種はそのまま表記し、褐毛以外の牛との交雑(黒毛×短角種)などは「和牛間交雑種」と表記されます(どちらも食品表示のルールでは「和牛」と表示されます)。

なお、後日、あぶら兄弟(高橋勇会員)が当牛肉の脂肪酸組成を分析してくれたところ、オレイン酸が45、54という高い数値が出て驚きました。融点も低いですね。個体差が大きいのでこのデータのみではなんとも言えませんが、興味深い数値です。

今回の肉肉学会は帰米直前の外村仁さんが参戦されたので、フードテック関連の参加者も多数、ご紹介くださりました。そしてなんと!スペシャルなお土産として

・鈴廣かまぼこの「フィッシュプロテインバー」を全員お土産にいただきました。
・あの木村屋さんと日清食品がコラボした「完全めしあんぱん」をじゃんけんぽんで。

ステキなお土産ありがとうございました♪

[caption id="attachment_4721" align="aligncenter" width="701"] 外村仁さんと肉おじさん[/caption] [caption id="attachment_4722" align="aligncenter" width="565"] 鈴廣かまぼこさんが提供してくれたフィッシュプロテインバー[/caption]

本日のメニュー

〇 サーロインの低温調理(南部牛王&魚沼号)

〇 黒毛和牛ランプとイチボの塊焼き

〇 サーロインステーキ(南部牛王&魚沼号)、ハンバーグ(南部牛王&魚沼号MIX)

〇 黒毛和牛サーロインステーキ

〇 うしそば(南部牛王&魚沼号MIX)

[caption id="attachment_4723" align="aligncenter" width="786"] 本日の闘牛肉のデータ。魚沼号は黒毛と短角の交雑だが「和牛間交雑と標記される[/caption] [caption id="attachment_4725" align="aligncenter" width="786"] 本日のサーロイン並べ[/caption] [caption id="attachment_4726" align="aligncenter" width="786"] 「怪物君」の格付成績。23ヶ月齢でここまで仕上げる技術に驚きます。[/caption]

参考文献

獣医師であり種豚メーカー桑原さんの豚愛

世界の豚を知り日本の豚を創る男

[caption id="attachment_4695" align="aligncenter" width="786"] 高岡さんの挨拶[/caption]

今回のテーマは、豚というより人=桑原康さん。永らく、我が国有数の民間種豚場「富士農場サービス」を経営し、品種の維持・改良、養豚場への種豚、豚の人工授精用精液を供給されてきました。獣医師でもあり、豚に関する該博な知識から「豚博士」と呼ばれてます。

[caption id="attachment_4697" align="aligncenter" width="758"] 富士農場サービス・桑原社長[/caption] [caption id="attachment_4696" align="aligncenter" width="786"] 堀井さん[/caption]

桑原さんが生まれ育った静岡県富士宮市は、日本でも有数の養豚地帯だった歴史があり、桑原さんも幼少の頃から「豚と一緒に」育った、というほどの豚好き少年でした。今まで百数十カ国を豚の旅で廻ったというなかで、たどり着いたのは「日本人の味覚にあった豚肉創り」。加工品指向の高い世界の養豚・豚の改良の潮流は、加工適性の高い赤身肉(脂肪の少ないリーンミート)。品種的には、LWDの三元豚(L=ランドレース、W=大ヨークシャー、D=デュロック)が我が国を含めて世界の主流の組み合わせですが、桑原さんは、日本人が好む柔らかさ、甘み、弾力性、濃厚な旨味などを引き出すための品種の組み合わせ(雑種強勢)を目指しています。我が国で最多の品種を飼育し、自ら豚肉生産を行うとともに、他の養豚農家に優秀な種豚(肥育して肉豚となる子豚を産ませる雄豚と雌豚)、人工授精用精液(牛と異なり凍結できないのでチルドで宅配する)を提供しているのです。

そうした桑原さんの種豚事業を襲ったのが2019年に発生した「豚熱」です。桑原さんの飼育豚に感染した訳ではありません。東海地方から全国に拡大する過程で、豚熱感染地域の種豚を非感染地域へ流通させることができなくなったため、感染地域である富士宮市に種豚生産の拠点を有する桑原さんは、大きな影響を受けました。このため、非感染地域での種豚生産をめざし、岩手県→北海道へと第二種豚場を開設します。桑原さんは、本場を「男子校」、恵庭農場を「女子校」として使い分けながら種豚の選抜・改良を進める体制を築きました。

桑原さん曰く、「豚の味は遺伝で50%、飼料と環境が25%ずつで決まる」と言います。しかし、日本人が求める味は、海外の豚肉ニーズとは異なるため、海外の種豚メーカーが保有する遺伝資源では見つけることができなくなっています。

[caption id="attachment_4698" align="aligncenter" width="786"] 桑原さんのプレゼン表紙は、日本列島が豚ちゃんになっている![/caption]

今日、提供される桑原さんの豚肉は、桃豚(中ヨークシャーの純粋種)とセレ豚(せれぶー)/民豚(満州豚)とデュロックの交雑種)です。中ヨークシャー(y)は戦後まもなくまで日本の豚のほとんどを占めていましたが、体格が小さく肥育効率が悪いため、三元豚に置き換わって激減し、現在では一部の地域の銘柄豚としてブランド化されていますが、「種豚」を供給できる種豚業者は限られています。またセレ豚の元になる「民豚」は中国東北部が原産地の在来豚で、肉質が良いことで知られていますが、生産性は劣る豚です。桑原さんは民豚を他の品種と掛け合わせ二元豚を創り、味の良さと生産性のバランスを図っています。今日のセレ豚は民豚とデュロックの交雑種です。

朴訥としたなかでユーモアのある桑原さんのお話に魅了されたプレゼンでした。

[caption id="attachment_4699" align="aligncenter" width="786"] 富士農場サービスで生産している豚[/caption]

本日のメニュー
(満州豚の交雑種(セレブー)と中ヨークシャーの食べ並べ)

[caption id="attachment_4704" align="aligncenter" width="786"] セレブー ロース[/caption] [caption id="attachment_4703" align="aligncenter" width="786"] 中ヨークシャー ロース[/caption]

〇 パテドカンパーニュ(ウデ)

〇 ボイルハム(モモ)

〇 ソーセージ(ウデ&ウチモモ)

〇 ロースト(肩ロース)

〇 角煮(バラ)

〇 カツレツとグリル(ロース)

参考文献

天然記念物 見島牛、見蘭牛、黒毛和牛の食べ並べ

見島牛と見蘭牛

今回のテーマは「見島牛」です。「第31回肉肉学会(2019年6月26日)でも取り上げたことがありますが、今回は、見島牛、見蘭牛(ホルスタイン×見島牛)、黒毛和牛(岩手県産)を食べ並べました。

[caption id="attachment_4677" align="aligncenter" width="740"] 高岡さんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4676" align="aligncenter" width="746"] みどりや・藤井治雄専務[/caption]

見島牛は、朝鮮半島渡来の牛で、他の地域の牛たちが外国種との交配により「改良」されていく中で、トカラ列島の「口之島牛」と見島牛だけが、外国種の血が(遺伝子が)入っていない「在来種」という、我が国の古来の牛の姿を残す貴重な品種です。このため、見島牛は、昭和3年に天然記念物に指定され、食用に供さない役牛としてのみ使われてきました(口之島牛は、「野良牛」として野生化おり、人間の暮らしとの接点がありません)。ただ、天然記念物の指定は「見島ウシ産地」として土地とバインドしているため、見島から出る牛(種牛用に見島に残す以外の雄=去勢牛、廃用牛)は食べることができます。萩市内の食肉店「みどりや」さんは、永く、この島外に出た見島牛を肥育・販売することで、見島牛の維持を経済的に支えてきました。

見島牛は「肉牛」としては、大変非効率で、経済的にペイするものではありませんし、去勢で年間10頭程度の出荷に過ぎない、超希少種です。このため、みどりやさんは、近隣の酪農家と連携して、乳牛のホルスタインに見島牛を交配した「見蘭牛」を肥育することで見島牛のサシ&肉質を生かした牛肉を生産しています。

見島牛は、和牛の原点なのに、「和牛」と定義される4品種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)ではないため、販売時に「和牛」と表示することができません。このため、外国種と同様「肉専用種」と表示するしかないのです。このような矛盾を抱えながらも、この素晴らしい血統を維持し、更に活用するにはどうしたら良いか、参加者と議論し、3種の牛肉の特徴を味わい、とても素晴らしい肉肉学会でした。

[caption id="attachment_4678" align="aligncenter" width="786"] 脂のことなら「あぶら兄弟」[/caption]

また、この日は、「あぶら兄弟」こと高橋勇さんが、見島牛と他の品種との脂肪酸組成を比較したデータを説明してくださいました。見島牛のオレイン酸含有量の高さ、融点の低さが際立っていることが分かります。

[caption id="attachment_4679" align="aligncenter" width="786"] 見島牛と他の品種との脂肪酸組成比較(高橋勇会員提供)[/caption]

原田理事長のプレゼンの一部

本日のメニュー

[caption id="attachment_4685" align="aligncenter" width="786"] 見島牛(上)見蘭牛のサーロイン[/caption] [caption id="attachment_4686" align="aligncenter" width="786"] 岩手産黒毛和牛、見島牛、見蘭牛のサーロイン[/caption]

〇 カイノミステーキ(見島牛)

〇 シャルキュトリ盛り合わせ

〇 サラダ

〇 ランプのローストビーフ(見島牛)

〇 サーロインステーキ食べ並べ(見島牛、見蘭牛、黒毛和牛)

〇 堀井格之進 丑蕎麦

参考文献

「牛肉好き」トリオとみなさんで回顧録

肉肉学会第50回SPイベント

今回は50回記念スペシャルということで、今までに取り上げたお肉の中から、思い出深いものを牛、豚、鶏でチョイスしました。

[caption id="attachment_4659" align="aligncenter" width="589"] 堀井さんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4660" align="aligncenter" width="726"] 本日の生産者代表は鳥山さん[/caption]

第1回肉肉学会が開催されたのは2015年6月29日。ちゃんと、肉の日(29日)だったのですね。以来、7年にわたって積み重ねてきました。美味しさだけを求めるのではなく、生産者さんの思いを感じつつ、持続可能な生産方法や、貴重な品種、資源の活用などにも心を配り、毎回、テーマを掲げてきました。

毎回、生産者さんたちに来ていただいて、学んだあとに実食するというスタイルを貫いてきましたが、生産者さんたちに旅費や謝金はお支払いしていないので、皆さん、肉肉学会の趣旨を理解していただき協力してくださっています。改めて、感謝申し上げます。

また、お忙しいなか、毎回、楽しみに参加してくださるお客様にも感謝です。肉肉学会の参加者の皆さんほど、肉リテラシーの高い方はいない、と思うほど、皆さんの「肉感覚」と「肉知識は」高まっていますよね。

そんな生産者の皆さんと、参加者の皆さんに肉肉学会50回を一緒にお祝いしていただきたいということで、今回はメニューに示すようなスペシャルなお肉を用意しました。
(肉肉学会50回の歴史は巻末にまとめてあります)

[caption id="attachment_4661" align="aligncenter" width="717"] 毎回、感謝!遠藤シェフ[/caption] [caption id="attachment_4663" align="aligncenter" width="786"] 牛おじさん、肉おじさん、すき焼きおじさん    榮野川さくら子さんからいただいた記念Tシャツで[/caption] [caption id="attachment_4662" align="aligncenter" width="786"] 常連さんの一人、榮野川さくら子さん。 記念Tシャツ、ありがとうございました。[/caption] [caption id="attachment_4666" align="aligncenter" width="786"] 柿木畜産短角サーロイン[/caption] [caption id="attachment_4665" align="aligncenter" width="786"] アビタニア ジャージー サーロイン[/caption] [caption id="attachment_4664" align="aligncenter" width="786"] 前田牧場 ホル去勢 サーロイン[/caption]

本日のメニュー

〇 生ハム:ハモンイベリコベジョータ(4年熟成)

〇 ローストビーフ

・ランプ 赤城和牛(黒毛去勢29ヶ月齢) 鳥山畜産

・イチボ アン黒(去勢27ヶ月齢) 山之口畜産

〇 シャルキュトリー

・パテドカンパーニュ 今帰仁アグー 高田農場
・モモボイルハム 梅山豚 塚原牧場
・パロティーヌ 秋田高原比内地鶏 秋田高原フード

〇 ローストポークステーキ 三角バラ 白金豚 高橋精麦

〇 サーロインしゃぶ焼き オリーブ牛(但馬牛雌35ヶ月齢) 一(いち)牛(ご)

〇 サーロインステーキ 短角牛(雌 24ヶ月齢) 柿木畜産

〇 サーロインステーキ ジャージー牛アビタニアジャージー牧場

〇 サーロインステーキ ホル(去勢19ヶ月齢) 前田牧場

〇 シャモ出汁冷蕎麦 東京しゃも(東京しゃも生産組合)、更級堀井

参考文献

肉肉学会の軌跡

20150629 第1回肉肉学会ホルスタイン熟成肉と日本短角種熟成肉 20150712 第2回肉肉学会Q Beefと近畿中国四国農業研究センターの黒毛和牛の熟成肉 20150801 第3回肉肉学会『Qbeefの熟成肉』『熟成肉A短角牛(骨無し枯らし熟成)』『熟成肉B短角牛(Wet Aging)』『門崎熟成肉(黒毛和牛枯らし熟成)』 『ホルスタインの長期熟成』国産牛(骨付きロース熟成)をローストビーフで食べ比べ https://fb.me/e/1Ita0z7l3 20150927 第4回肉肉学会『牛肉を定量的に(数種類の味覚分析)評価されたものと味覚感応試験の検証について』 https://fb.me/e/2PxO5nax7 20160118 第5回肉肉学会『白金豚の高橋誠さん』と『梅山豚の塚原昇さん』の二大巨匠の次元的に思想の違う取り組みをしている生産者を招いて養豚の歴史と生産者体制の変革に伴う肉質の変革 https://fb.me/e/e5gzx8Nl3 20160326 第6回肉肉学会『フランスのバザス牛とボースラメールに学ぶ会』 https://fb.me/e/50PrOGzmY 20160529 第7回肉肉学会『シャルキュトリーについて』 https://fb.me/e/2JYggxXPY 20161127 第8回肉肉学会【しまね和草牛旨赤ビーフ】 https://fb.me/e/3lCVrHfsS 20170201 第9回肉肉学会【今帰仁アグー】 https://fb.me/e/4QVE47VOG 20170308 第10回肉肉学会『熟成肉とチーズとワインの相関関係の探求』 https://fb.me/e/2FyuRkO8s 20170420 第11回肉肉学会『放牧黒毛和牛の食味の探求…佐賀県鹿島市の挑戦』 https://fb.me/e/py7b00LuS 20170531 第12回肉肉学会『ジャージー牛未経産牛肉の食味の意見交換』磯沼牧場 https://fb.me/e/27MRL4gvp 20171021 【昼部】第13回肉肉学会研究会 山羊肉とジャージー子牛を食べ学ぶ会 https://fb.me/e/1L3MUaLCJ 20171021 【夜部】第13回肉肉学会研究会 山羊肉とジャージー子牛を食べ学ぶ会 https://fb.me/e/1GicHTUdt 20171123 第14回肉肉学会研究会 ジャージー牛去勢を和牛の飼料で育てた28ヶ月齢とジャージー牛去勢を牧草肥育で育てた64ヶ月齢の食べ比べ。 ジャージー牛生みの親(繁殖者)=新利根川共同農学塾農場代表理事上野裕さま ジャージー牛育ての親(肥育者)=小林牧場 代表小林将男さま https://fb.me/e/1BClfz8zK 20180127 第15回肉肉学会研究会『但馬牛繁殖家田中畜産の取組に学ぶ会and復習 和牛の飼料で育てた28ヶ月齢ジャージー牛去勢を118日熟成を味わう会』 https://fb.me/e/2I8xj1MAY 20180224 第16回肉肉学会研究会「沖縄県石垣島やえやまファーム『南ぬ豚(ぱいぬぶた)』【続編】うしそば研究 堀井格之進 and(仮)和牛飼料飼養28ヶ月齢ジャージー牛去勢145日熟成を味わう会 https://fb.me/e/1EcdYWIJy 20180321 第17回肉肉学会研究会『アビタニア牧場ジャージー子牛有難豚USHISOBA研究会』 https://fb.me/e/3wHvWasf1 20180528 第18回肉肉学会研究会 参加者全員ホストイット官能評価アンケート方式に参加・熟成肉食べ並べ「黒毛和牛&交雑種&ホルスタイン」USHISOBA研究会 https://fb.me/e/1wUgs2IXE 20180612 第19回肉肉学会研究会『秋田高原比内地鶏』秋田高原フード大塚さん『黒毛和牛×ジャージー』ルミノ中山さん『USHISOBA』堀井格之進 https://fb.me/e/2FMuP4kxg 20180723 第20回肉肉学会研究会『純和鶏』『亜麻仁脂肪酸カルシュウム(オメガ3)を食べて育った牛』に学び『USHISOBA研究会』を追求する https://fb.me/e/2MAtvITU0 20180831 第21回肉肉学会研究会 『ブラウンスイス 牛蕎麦』『コスモスファーム』14ヶ月齢に学ぶ『大笹牧場』24ヶ月齢に学ぶ『USHISOBA研究会』 https://fb.me/e/3nBBa5Jze 20180922 第22回肉肉学会研究会 『山之口畜産アン黒』『ダイワファーム ブランスイスチーズ 』『堀井格之進牛蕎麦』 https://fb.me/e/ftoQ23MjP 20181031 第23回肉肉学会研究会 『TOKYO X & 北海道タンポポ牧場の放牧ジャージー牛』 https://fb.me/e/1YFf08rdN 20181128 第24回肉肉学会研究会 『十勝若牛 ホルスタイン&ブラウンスイス 牛蕎麦』 https://fb.me/e/2Keu32itM 20181226 第25回肉肉学会研究会 『忘肉会SP=酒池肉林〜肉越蕎麦もあるよ〜』 https://fb.me/e/3vP2aElU8 20190126 【昼部】第26回肉肉学会研究会『尾崎牛…生産者ブランドとして世界ブランディグを確立した哲学者尾崎宗春氏に学ぶ』 https://fb.me/e/25H5zXmTA 20190126 【夜部】第26回肉肉学会研究会『尾崎牛…生産者ブランドとして世界ブランディグを確立した哲学者尾崎宗春氏に学ぶ』 https://fb.me/e/5v5skjtMG 20190209 第27回肉肉学会研究会 『福島牛の現在と未来』 https://fb.me/e/1KKwQw7Kw 20190321 第28回肉肉学会研究会 『赤城牛鳥山畜産の哲学に学ぶ』 https://fb.me/e/2lnMqAYgV 20190423 第29回肉肉学会研究会『お肉のイノベーション冷凍燻製技術の秘密を公開』 https://fb.me/e/1UazUCC80 20190530 第30回肉肉学会研究会 『オリーブ牛誕生秘話生産・流通・消費を支える人々〜脂肪の質から見える新たな旨味〜』 https://fb.me/e/2JEhMHARu 20190626 第31回肉肉学会研究会『天然記念物見島牛を食す〜生産流通を支えている見蘭牧場の志に学ぶ〜』 https://fb.me/e/2ScQiieM7 20190724 第32回肉肉学会研究会『山形村短角牛を支える柿木畜産の志に学ぶ〜闘牛文化の取り組みを交えて〜』 https://fb.me/e/3AOC08YHn 20190827 第33回肉肉学会研究会『東京しゃも&Omeチーズ アーティストとサイエンティストの饗宴』 https://fb.me/e/2HKW1Objq 20190928 第34回肉肉学会研究会『北海道十勝しんむら牧場の放牧豚「山森野豚」』 https://fb.me/e/26EJIkHH5 20191031 第35回肉肉学会研究会『土佐・本川「献上 手箱きじ」』 https://fb.me/e/2doj9uRCn 20191129 第36回肉肉学会研究会『新しい生産方式への挑戦!!黒毛和牛経産放牧「鏡山牧場」〜土作りのノウハウを応用した牧草作りで美味しい赤身肉〜』 https://fb.me/e/obYlmawr0 20191227 第37回肉肉学会忘肉年会『肉肉学会SP肉料理!!!』 https://fb.me/e/YFeU6tRT 20191227 第3回肉肉学会カンファレンス「お肉の未来」 https://fb.me/e/3q1OZzPDw 20200130 第38回肉肉学会研究会『全日本・食学会Beans47生産者大賞受賞 今帰仁アグーに学ぶ』 https://fb.me/e/1Rp2RDB19 20200327 第39回肉肉学会研究会「すき焼き鍋から肉食文化の未来を探る」 https://fb.me/e/1AIzgZQuj 20200426 第40回肉肉学会オンライン研究会「さの萬?前田牧場=ドライエージングの取り組み」 https://fb.me/e/faCJCRxJb 20200530 第41回肉肉学会オンライン研究会『幸せな牛肉 日本型グラスフェットビーフへの挑戦』 https://fb.me/e/4OOgrWuxR 20210211 第42回肉肉学会『田中一馬氏16歳但馬牛すき焼きから学ぶ』 https://fb.me/e/ZyqUXHxG 20211221 第43回肉肉学会忘肉年会『肉肉学会SP肉料理』 https://fb.me/e/1qrmhcvRW 20220128 第44回肉肉学会『新春肉祝 世界初!純血但馬オリーブ牛』山種畜産と一牛神の愛の結晶 https://fb.me/e/1znWeCajn 20220329 第45回肉肉学会『春の肉祭り 磯沼牧場ガンジー牛に学ぶ会』〜ガンジーに込めた想い〜 https://fb.me/e/1AorhGOhx 20220513 第46回肉肉学会『安曇野放牧豚に込めた想い』 https://fb.me/e/2qQNc4nS5 20220614 第47回肉肉学会『シャロレー牛にかける北十勝ファームの情熱』 https://fb.me/e/1pmcMpvDP 20220704 第48回肉肉学会研究会『スペインの2大変態イベリコ豚生ハム生産者奇跡のコラボ〜人生を賭けた日西オーガニック生ハム友情物語〜』 https://fb.me/e/1UqDIvRF0 20220721 第49回肉肉学会研究会『明治29年創業近江牛の老舗大吉商店の研究〜40ヶ月齢と29ヶ月齢の食べ並べ〜』 https://fb.me/e/2GZjRWu96 20220809 第50回肉肉学会研究会『「牛肉好き」トリオとみなさんで回顧録』〜『牛』おじさんと『肉』おじさんと『好き』焼おじさんとのテーマ食材大集合〜 https://fb.me/e/1ZmO2h9al

明治29年創業近江牛の老舗大吉商店の研究

近江牛・大吉商店について

今回のゲストは滋賀県高島市・大吉商店代表の永谷武久さんです。

[caption id="attachment_4636" align="aligncenter" width="786"] 高岡さんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4638" align="aligncenter" width="786"] プレゼンする永谷さん[/caption]

大吉商店は永谷武久さんの曾祖父の永谷大吉さんが明治29年創業した精肉店です。なんと126年も続く老舗です。3代目であった武久さんの父上が早世したことから、23歳の若さで4代目となり、以来、近江牛の老舗として近江牛ブランドを背負って来られました。

1代目・2代目は近江牛の生産も行ってきましたが、3代目で一度は生産部門から撤退されたとのこと。しかし4代続いた事業を軌道に乗せるためには6次産業化が欠かせないと考え、また「但馬牛への憧れ」を捨てがたく、武久さんは平成15年に近江牛の生産(肥育)部門を復活させ「大吉牧場」を創設しました。

[caption id="attachment_4637" align="aligncenter" width="600"] 全日本・食学会の村田理事長の挨拶[/caption]

現在800頭の近江牛を肥育し精肉として販売するほか、多くの加工品を製造しています。また、7カ国に輸出もしています。

大吉牧場では、主に宮崎県産の雌子牛を導入し30ヶ月齢程度で出荷してきましたが、後述するように兵庫県但馬産子牛の長期肥育と宮崎県産子牛の普通肥育という肥育スタイルになりつつあります。

今日は40ヵ月齢の兵庫県養父産の但馬牛の雌牛と27か月齢の宮崎県小林市産の雌牛の食べ並べです。なお、開催タイトルでは「29か月齢としましたが、永谷さんの厳しい眼力で選ばれたのは27か月齢の牛となりました。

今回の牛肉は血統の違い(但馬牛は純粋但馬系(父は丸谷土井、小林産は、気高系も入った牛で、父は耕富士)、月齢の違い(40か月齢、27か月齢)を味わっていただきます。なお、大吉商店さんは、但馬牛の40か月齢出荷牛、宮崎産子牛の33か月齢以上出荷牛、その他の30か月齢出荷牛と3グループのブランディングをしています。

[caption id="attachment_4640" align="aligncenter" width="786"] 上図:一般的な黒毛和牛の系統交配の組み合わせ[/caption]

全国的には雌牛の40か月齢でのと畜は、雌牛全体の0.2%程度に過ぎません。但馬牛は「少ない飼料を永く食べる」と言われ、長期肥育に適した系統といえます。また、永谷さんの飼い方の特徴として、昔ながらの「炊き餌(米や麦などを炊いた飼料で、手間はかかるが消化によく肉質も向上する)を乳酸菌発酵させた飼料を給与していることです。

但馬牛は兵庫県独自の閉鎖育種により、全国の生産者に但馬牛を、また種雄牛作りの素材として田尻系雄牛を提供していますが、閉鎖育種に伴う血縁係数の高まりという問題も抱えています。また、枝肉の売上価格を確保するため、気高系など肉量重視の牛づくりが進む中で、肉質・脂の質の良さがピカイチな但馬系は、和牛の中の和牛ともいえます。

一般の生産者は、田尻系、藤吉系、気高系を組み合わせた交配により肉量が多く肉質の良い講師生産を目標としています。こうした中で40ヵ月齢の但馬牛も雌牛生産を目指す永谷さんのチャレンジ精神に学びたいと思います。

また、肥育用の雌牛は、去勢と比べると発育速度が遅く、枝肉重量が小さい傾向にあります。と畜月齢のピークは29ヶ月齢ですが、去勢と異なり40ヶ月齢くらいまで漸減していく傾向にあります。とはいえ、40ヶ月齢まで引っ張るのは「特産松阪牛」など限定されたブランドに限られてます。

また、永谷さんは大吉牛の脂肪融点を計測していますが、驚くような低い値が出ています。

本日のメニュー

[caption id="attachment_4642" align="aligncenter" width="710"] 40ヶ月齢ランプ[/caption] [caption id="attachment_4643" align="aligncenter" width="786"] サーロイン[/caption]

〇 牛スジ煮

〇 サラダ

〇 シャルキュトリ盛り合わせ

〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ ランプ塊焼き

[caption id="attachment_4651" align="aligncenter" width="786"] 27ヶ月齢[/caption] [caption id="attachment_4649" align="aligncenter" width="786"] 40ヶ月齢[/caption]

〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ イチボ ローストビーフ

〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ サーロインステーキ

[caption id="attachment_4648" align="aligncenter" width="786"] 27ヶ月齢[/caption] [caption id="attachment_4647" align="aligncenter" width="786"] 40ヶ月齢[/caption]

〇 ガーリックライス

参考文献

イベリコ生ハム生産者と日本青年との奇跡のコラボ

本物のイベリコ豚を学ぶ

7月4日(月)の肉肉学会は、肉肉学会としては2回目(1回目はバザス牛)の海外産のお肉。タイトルの『スペインの2大変態イベリコ生ハム生産者奇跡のコラボ〜人生を賭けた日西オーガニック生ハム友情物語〜」に今日のテーマが全て詰まっている!

・スペインの2大変態イベリコ生ハム生産者:スペインの生ハム生産者、ベルナルド・エルナンデスさん(Beher社)とルイス・ミゲルさん(Julian Martin社)
・奇跡のコラボ:純粋のハモン・イベリコだけでなく、有機の生ハム(日本初披露)まで楽しめる!
・日西友情物語:今回の生ハムを輸入してくれた日本側パートナー「ライフジュエル」の山田悠平さんと舟根稔人さんのコンビのハモン・イベリコ愛。

[caption id="attachment_4624" align="aligncenter" width="786"] 山田さん、舟根さん、ミゲルさん[/caption] [caption id="attachment_4625" align="aligncenter" width="735"] エルナンデスさんとミゲルさん[/caption]

Beher社もJulian Martin社も、イベリコ豚の生産からと畜、精肉加工、生ハム製造まで一貫して行う会社。お二人の話を聞いて感じたのは、「イベリコ豚は但馬牛である」ということです。雌豚サイドの改良を主軸に、エコーでロース芯面積やサシの入り具合など様々なデータにより選抜する方法論は和牛改良のようです。

ハモン・イベリコは、イベリコ豚の血統割合とドングリ(樫の実)の食べ方で写真の「イベリコ豚の血統とランク」のように分けられます。

[caption id="attachment_4626" align="aligncenter" width="600"] 原木から生ハムを切り出すエルナンデスさん[/caption]

そして、トレサビリティによりタグ付けられた原木(生ハムの脚)が流通する管理システムですが、母豚の血統や交配が不明なまま生ハムを流通させる業者もいるようなので、信頼できる業者さんから取り寄せるに限るとのこと。

ハモン・イベリコに必須なものは、イベリコ豚とデエサ(樫の実がある放牧地)です。イベリコ豚は、1回当たりの分娩頭数が7〜8頭と少なく、成長が遅いという昔ながらの品種です(だから美味しい)。その上、ベジョータになる豚は夏に生まれ、1年後の夏(普通の豚はとっくにと畜してます)にベジョータになるための選抜に入り、秋から「デエサ」でたっぷりドングリ(カシの実)を食べて育ち、18ヶ月齢くらいでと畜されるという超スローペースな育て方。そして生ハムとしての熟成期間も2年以上必要という、生まれてから4年も経つ豚ちゃんなのです。

・イベリコ種の豚は単独一種の豚ではないようで、スペイン食料農業環境省のHPほ「品種カタログ』では、以下のように分類されています。イベリコ豚はBC3500年頃、イベリコ半島にいた野生のイノシシを先祖として様々な豚との交配を経て、大航海時代にはアジアの豚の血まで入ったそうなので、地方によって様々なバリエーションが存在するのですね。

Entrepelado(ぶちやまだらのある)
Lampino(無毛の)
Jabugo(毛を染めた)
Retinto(赤毛)
Torbiscal(赤毛、絶滅危惧種?)

の5種があるそうで、前者3種は黒豚、後者2者は赤豚と括っているようです。

今日のお話を伺って、「ハモン・イベリコ」の成立要件は「イベリコ豚という固有品種と、デエサと呼ばれるオークのある放牧地」だと思いました。

イベリコ豚は、1960年代の豚増産時代に、交雑種に席巻され始め、90年代には絶滅寸前まで頭数が減ったため、生産者と国が品種維持管理に乗り出して漸く、回復してきたのです。

それでは、1頭当たり1?が必要という広大な放牧地(デエサ)が存続した条件はなんだったのか?日本では農地開放などにより耕作地の細分化が進んだのですが、スペインでは、この広大な放牧地(オーク林と草地で成り立つ)が細分化されずに維持できた理由はなんだったのか。歴史の変遷により、デエサが国王領→教会領→民間有に変化しながらも、イベリコ豚生産のための管理規制等があったのか、今回はそこまでは分かりかねました。

ともあれ、実際のイベリコ豚生産者のお話を聞く大変、貴重な機会となりました。
脂(あぶら)兄弟こと高橋勇会員の脂肪酸分析によると、たオレイン酸は54.6(高級和牛並み)、α-リノレン酸も高く、融点は脅威の25.5度!
生ハムの融点の低さ、塩気を感じないまろやかさ、甘い脂、噛みごたえがあるのに口の中で馴染んでいく赤身、熟成チーズのようなシャリシャリのチロシン。異次元の美味しさに驚きます。

講演者

★山田悠平氏(合)ライフジュエル代表社員&舟根稔人氏
学生時代にスペインで通訳をしている小学校中学校の同級生がいるサラマンカ州ギフエロ村に観光に行った際にイベリコ豚の生ハムに出会い衝撃を受けてスペイン全土を2か月間バスで放浪。スペイン各地にあるイベリコ豚生ハム生産者や生ハムを食べ歩き、たどり着いたギフエロ産イベリコ豚生ハムを自身で輸入することを決意。現在スペインとの取引は7年目。年に3回ほど現地に行って仕入れた商品のフィードバック・製造ライン・農場の取り組み・スタッフとの交流を行ってます。また、今回の様に年に1度スペインの担当者などを日本に呼んで卸先の飲食店を回りチェックやアドバイス・日本のマーケットの理解を一緒に行い、より高いサービス体験を一緒に作ることを目標にしています。

★Beher(べエール):ベルナルドさん
今回オーガニックのイベリコ豚生ハムを一緒に取り組みしている老舗生ハムメーカー「Beher」は、飼料になる農場→養豚→堵畜→加工→熟成→製品まで自社一貫で行っております。Beherは大手企業でありながら純血統のイベリコ豚に特化している上に更にイベリコ豚を追求してとうとうオーガニック養豚まで開始した。餌もオーガニックで塩もオーガニックというもはや人間より良いもの食べている環境で育ってます。

★Julian Martin(フリアン マルティン):ルイスミゲルさん
こちらもBeherと同じくスペインはサラマンカのGuijueloと呼ばれるハモンイベリコのD.O産地でこちらも1社の一貫生産で養豚からやってます。そもそも分業の生ハム業界で1社1貫生産のところは数えるほどしかないのですが、例えばイベリコ豚を1頭放牧するのには法律で1ヘクタール以上の樫の木放牧地が必要とされています。ですがこれはミニマムの広さで、雨の量によって実りをみて、1頭/1.5ヘクタール〜1頭/2ヘクタール前後となります。

本日のメニュー

〇 生ハムの食べ並べ

[caption id="attachment_4630" align="aligncenter" width="786"] ハモンイベリコベジョータ純粋の原木[/caption]

・ハモンイベリコ・デ・ベジョータ100%血統 48ヶ月熟成
・オーガニック パレタ・イベリコ・ベジョータ100%血統 30ヶ月熟成
・オーガニック サルチチョン・イベリコ・ベジョータ100%血統
・オーガニック チョリソ・イベリコ・ベジョータ100%血統
・コピタ(肩肉)・イベリコ・セボ 24ヶ月熟成
・オーガニック パンセタ(バラ肉)イベリコ・デ・ベジョータ100%血統

〇 原木切り出し イベリコベジョータ純粋

〇 トントロ西京漬けとアバニコのグリル

〇 一口ヒレカツ

〇 ガルビュール

〇 肩ロースロティ スペアリブBBQ

[caption id="attachment_4631" align="aligncenter" width="734"] 肩ロース[/caption]

〇 ブロッコリー麺と大豆ミートソース

参考文献

シャロレー牛にかける北十勝ファームの情熱

北十勝ファームとシャロレー

「第47回肉肉学会」のテーマは、「シャロレーにかける北十勝ファームの情熱」。(株)北十勝ファームは北海道足寄町で上田金穂代表が経営される日本短角種の一貫生産の牧場。200頭の繁殖雌牛と7頭の種雄牛を飼育する、短角種としては日本最大の牧場だと思います。

[caption id="attachment_4600" align="aligncenter" width="640"] 高岡最高顧問の挨拶[/caption] [caption id="attachment_4601" align="aligncenter" width="640"] 北十勝ファーム代表・上田金穂さんの説明[/caption]

そんな上田さんから今日は「シャロレー牛」をお肉の提供をただきました。シャロレーはフランスを代表する肉用牛ですが、日本では曽田玄洋氏がフランスから購入したシャロレーを元に昭和39年に北海道駒ヶ岳山麓で開いた「曽田シャロレー牧場」で飼育された記録が残るくらいです。そのシャロレーを上田さんが飼うことになったのは、北海道別海町の(株)トータルハードマネージメントサービスの黒崎さん輸入したシャロレーの受精卵でシャロレーを生産し、肥育を上田さんに任せた、というリレーがあったためです。

[caption id="attachment_4602" align="aligncenter" width="640"] トータルハードマネージメントサービスの黒崎尚敏さん[/caption]

上田さんは、シャロレーは北十勝牧場の主力である日本短角種と比べ肉質は変わらない(赤身)が、歩留まりが高いので、熟成をかけたり、黒毛和種との交雑種を生産したりすれば期待できると考えているそうです。

たぶん、日本でシャロレーを肉用に肥育している牧場は、北十勝ファームだけだと思いますし、北十勝ファームのシャロレー出荷が始まったばかりなので。本日、提供されたシャロレーの肉は本当に貴重な国産シャロレー肉です。

また、本日は、曽田玄洋氏のお孫さんにあたるAkura Sodaさんもお見えになり、玄洋さんの思い出話を披露してくださいました。なんと!曽田玄洋氏をモデルにした夏木陽介主演のテレビドラマ「太陽野郎」(昭和42年〜43年)は、曽田シャロレー牧場でロケをしているのです。

[caption id="attachment_4603" align="aligncenter" width="561"] 雑誌「中学三年コース」特別付録の小説「太陽野郎」。在りし日の曽田シャロレー牧場が写ってます。[/caption]

本日のシャロレー肉は去勢で28ヶ月齢で、枝肉重量567kg。食肉格付による肉質等級は2、ロース芯面積は65cm2

肉質等級以外は、一般の黒毛和種去勢と同等の成績でした。

脂(あぶら)兄弟こと高橋勇会員が本日のシャロレーの脂肪酸組成を分析してくださいましたが、オレイン酸含量は49.5,融点は33.2℃で、黒毛和種10頭の平均値(オレイン酸52.2,融点28.7)に比較的近い数字でした。

本日のメニュー

〇 牛スジの塩レモン煮込み カナッペスタイル

〇 ウチモモの低温調理 サラダ仕立て

〇 シャルキュトリー盛り合わせ

〇 ウチモモのローストビーフ 赤ワインソース

〇 サーロインステーキ

〇 丑蕎麦 更級堀井謹製 二八平打ち麺 バラ肉の和風クリーム蕎麦

[caption id="attachment_4614" align="aligncenter" width="786"] (特別提供)セブンイレブン 格之進メンチカツバーガー[/caption] [caption id="attachment_4607" align="aligncenter" width="600"] 本日のシャロレーの枝肉(格付)写真[/caption] [caption id="attachment_4608" align="aligncenter" width="786"] 本日のシャロレーのサーロイン[/caption]

参考文献

安曇野放牧豚に込めた想い

藤原畜産の概要

「第46回肉肉学会」のテーマは、「安曇野放牧豚」。読んで字の如く、長野県安曇野市で「放牧養豚」経営をされている(有)藤原畜産(藤原仁代表)の藤原喜代子さんを招いての学びです。喜代子さんの父、仁さんの祖父が家畜商さんであったことから始まった牧場で、現在は仁代表が生産担当、喜代子さんが販売担当の親子二人三脚で、標高800mにある自然に恵まれた中で放牧養豚をされています。美しいけれど厳しい自然条件のため、寒さで豚が死んでしまうなどという経験を経て、発酵床(チップや米ぬかを発酵させた床の上で豚を群飼育)と山野放牧を組み合わせた飼育方法が軌道に乗り、「安曇野放牧豚」のブランド名で、直売やシェフへの提供を柱として経営してこられました。

そうしたなか、2019年から日本で発生し続ける「豚熱(旧名:豚コレラ)の影響で、新潟県の種豚場から子豚の導入ができなくなり、近隣の種豚場からの導入に切り替えましたが、豚の品種が変更(三元豚→合成豚)されたため、飼育管理方法の大幅な変更を迫られました。また、野生のイノシシからの豚熱感染を予防するため、放牧地に外柵を整備する間、放牧ができなくなったりと苦しい状況が続きました。 更に新型コロナの蔓延により取引先のレストラン等が休業に追い込まれるなど、災難続きの近年ですが、安曇野放牧豚に込められた藤原さん母子の想いは途切れることなく、飼育方法の改善、キッチンカーの活用や学校給食・小売りの増加等の対応で乗り切っています

[caption id="attachment_4582" align="aligncenter" width="780"] 高岡最高顧問の挨拶[/caption] [caption id="attachment_4584" align="aligncenter" width="616"] 肉おじさんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4583" align="aligncenter" width="706"] プレゼンする藤原喜代子さん[/caption]

徳子さんと疋田恵子さんのプレゼン

今回は、二人の特別ゲストも迎えました。

[caption id="attachment_4585" align="aligncenter" width="639"] プレゼンする徳子さん[/caption]

お一人は肉肉学会でもお馴染みの「徳子tokco」さん。株式会社レーマン(LAIMAN)CEOとして、日本における「メディカルイラストレーション」の普及・発展に努めています。もともと獣医でもある徳子さんは、人間と臓器が類似する豚の研究もされてるので、今日は「豚繋がり」でメディカルイラストレーションの重要性を豚の生体応用の立場からプレゼンしていただきました。

二人目のゲスト・疋田恵子さん(札幌在住・korokoron株式会社代表取締役)は、最近、注目を浴びている「海洋熟成酒」について、肉肉学会としても学びのテーマとしている「熟成」の観点から話題提供していただきました。お話だけでなく「海底熟成余市」を試飲用にご提供いただき、「海底熟成と非熟成」の飲み並べをさせていただきました。

[caption id="attachment_4588" align="aligncenter" width="775"] プレゼンする疋田恵子さん[/caption]

本日のメニュー

〇 パテドカンパーニュ

〇 モルタデッラ(ウチモモ)とプルドポーク(端材)

〇 モモハムのサラダ(ソトモモ)

〇 シュークルート(肩ロースほか)

〇 生姜焼き(リブロース)

〇 骨付きロースロティ(サーロイン)

〇 角煮バーガー(バラ)

参考文献

磯沼牧場ガンジー牛に学ぶ

はじめに

「第45回肉肉学会」のテーマは、「磯沼牧場ガンジー牛に学ぶ」。肉肉学会ではお馴染みの磯沼ファームさん。第12回「ジャージー未経産牛(フリーマーチンの30ヶ月齢)」でプレゼンしていただいだほか、「黄昏BBQ」などの特別企画でもご協力いただいています。

八王子という東京近郊で酪農経営をされている磯沼さんは、7種類の乳牛を飼育する、日本で唯一の酪農家でもあります。「ホルスタイン」「ジャージー」「ブラウンスイス」「ガンジー」「エアシャー」「モンペリアルド」「デイリーショートホーン」。乳牛博物館ですね。普通の酪農家は乳量が多いホルスタインを(日本の乳牛の95%)、チーズを作る場合はタンパク質の多いブラウンスイスを、乳脂肪が欲しい場合はジャージーを飼育したりしますが、その他の品種を飼うことは希です。変態・牛好きの磯沼さんだからできるのかも知れません。

ガンジーは日本で200頭にも満たない飼育頭数で、飼育する農家も4戸程度だと思います。こうした特殊な乳牛は、雄子牛や搾乳を終えた経産牛などを肉として利用する場合、ほとんど価値を認められず二束三文で取引されてしまいます。磯沼さんは、自家牧場産の経産牛などを肥育して「牛肉」としての価値を付与することに努めており、肉肉学会でもそうした取り組みを支援・紹介したく、ガンジーの経産牛を学ぶことにしました。

[caption id="attachment_4541" align="aligncenter" width="774"] 肉おじさんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4542" align="aligncenter" width="786"] 磯沼正徳さんの挨拶[/caption] [caption id="attachment_4543" align="aligncenter" width="786"] 堀井良教さんの挨拶[/caption]

磯沼ミルクファームさんとガンジーの話

磯沼牧場(正式名称は磯沼ミルクファーム)は、牛ふんにコーヒー粕を混ぜて発酵させた「コーヒーの香りのする牧場」であり、様々な体験教室などを通じて、地域住民や消費者の理解を得て都会の町中で牧場を経営されてます。

こうした消費者との交流においても「7種類の乳牛」がいることは、子どもたちの発見に繋がり、家畜を通した多様性を実感する学びの場ともなっています。とはいえ、普通に日本にいない乳牛を導入することは大変で、磯沼さんもガンジー、エアシャー、モンペリアルド、デーリーショートホーンは受精卵を米国等から輸入して、自家牧場の牛に受精卵移植して生産しています(BSE(牛伝染性脳症)の関係で、豪州・NZ以外の国から生きた牛を輸入することができないため)。

今回のガンジーも、米国から輸入した受精卵を、磯沼牧場のジャージー牛に移植して生まれた「みいちゃん」です。みいちゃんは2016年に生まれ、2回お産したあと繁殖が上手くいかなかったため、1年以上飼い直して(肥育用に飼料給与して)2022年2月にと畜されました。68ヶ月齢(5歳8ヶ月)、生体重1トン、枝肉重量569kgでした。

ガンジー牛は、英国のチャンネル諸島で閉鎖的に飼育されてきた乳用種で搾乳量は、ホルスタインには及びませんが、乳脂率が高いため、特に放牧等により青草を食べたガンジーの牛乳は黄色味を帯び、「ゴールデンミルク」と呼ばれます。日本でのガンジー飼育頭数は、どの資料を見ても「200頭」とされてますが、原田理事長が、ガンジーを飼育している牧場(栃木県・南ヶ丘牧場、大分県ガンジー牧場、新潟県・加勢牧場に確認したところ150頭くらいではないか、と思われます。いずれにしろ、大変、希少な牛種です。

磯沼さんからは、牧場の概要とガンジーを飼育するに至った経緯など発表していただき、併せて夏の新規開店に向けて牧場内で準備中の「カフェ」についても話を伺い、新たな「磯沼ミルクファームのビジョン」を共有させていただきました。

今回の「みいちゃん」のお肉は、思ったよりサシが入り(見た目にはB2.5という感じ。一般販売してないので、格付はしていません)、ロース芯もしっかりした仕上がりでした。もちろん、お味もグーッ!

本日のメニュー

〇 イチボの赤ワイン煮込み

〇 おランプのローストビーフ イチボの冷製 からし黄身酢和え

〇 サーロインタリアータ サラダ仕立て ヨーグルトドレッシング

〇 ランボソとイチボ先三寸の塊焼き

〇 サーロインステーキ

〇 ガンジーミートソースとミルクのホワイトソースのグラタン

参考文献

新春肉祝 世界初純血但馬オリーブ牛

概要

「第44回肉肉学会」は、「新春肉祝 世界初 純血但馬オリーブ牛」と題して「格之進肉学校六本木分校」の2階、3階を利用しZOOMによるオンライン参加を併用するハイブリッド方式で開催されました。 今回のテーマ「純血但馬オリーブ牛」とはなんでしょう?それも世界初?。

今回のプレゼンターは、オリーブ牛でお馴染みの香川県高松市の焼肉店「一(いち)牛(ご)」の森由樹博さんとオリーブ牛生産農家の山種易産業・倉山建造社長(お二人は現地からのZOOM参加)。通常のオリーブ牛は子牛の産地にかかわらず、香川県内で、オリーブ搾油粕を加工した飼料を一定期間与えられ肥育された3等級以上の牛肉です。但馬牛(うし)は他県からの血統を一切いれない兵庫県産の子牛で、肥育すればきめ細かいサシの入った素晴らしい肉になりますが、血統的に枝肉重量が小さいため、但馬牛(ぎゅう)、神戸ビーフ、特産松阪牛など超高級なブランド牛肉の素牛として利用されます。森さんと倉山社長は、あえて淡路家畜市場から素牛(9ヶ月齢)を購入してオリーブ牛として育てることで(33ヶ月齢出荷)、但馬牛(うし)の血統とオリーブ搾油粕飼料給与の融合による美味しい牛肉生産に挑戦されたのです。新春にふさわしい牛肉をいただくことができました。

オリーブ牛の特徴を活かした料理の数々は、岡橋シェフと遠藤シェフの競演によるものです。ごちそうさまでした。

[caption id="attachment_4534" align="aligncenter" width="786"] 一牛の森由樹博さん。(当日はZOOM参加)[/caption] [caption id="attachment_4536" align="aligncenter" width="642"] 山種易産業の倉山建造社長。原田理事長の牧場訪問時。[/caption] [caption id="attachment_4523" align="aligncenter" width="714"] 肉おじさんの挨拶[/caption]

堀井格之進登場!総本家更級堀井の堀井良教さんと格之進の千葉祐士さん

肉おじさんと純血但馬オリーブ牛のリブロース

今回の牛肉の素牛(淡路家畜市場でセリを待つ)

本日のメニュー

〇 肉スープ(スネ骨)

〇 カイノミ仕立て違い3種肉前菜

〇 牛スジ塩煮込み

〇 サラダ

〇 リブロースユッケ

〇 焼肉(ランプ、イチボ、ナカバラ、カイノミ、ブリスケット、リブロース

〇 柚子切りバラ肉蕎麦

〇 ほうじ茶パンナコッタ

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