2019年1月27日 第1回乳乳学会の概要
那須高原チーズのテロワール
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要約
記念すべき「第1回乳乳学会」のテーマは「那須高原チーズのテロワール」。
那須高原地域のチーズ工のチーズがメインテーマですが、宮崎県小林市ダイワファームの大窪和利社長もチーズ持参で参加してくださいました。
「肉肉学会」で何度か、熟成肉とチーズのマリアージュを試みた経験から、伸長著しい国産ナチュラルチーズをフューチャーして学ぶ「乳乳学会」をスタートすることにしたのです。
まず、原田英男理事長(肉もチーズも大好きなので「乳乳学会」でも理事長に就任)が、国産ナチュラルチーズの現状を紹介。
続いて、那須高原今牧場チーズ工房の高橋雄幸さんが「那須ナチュラルチーズ研究会」1の紹介とご自身のナチュラルチーズ製造への想いを熱く語っていただきました。
また、山羊チーズを製造している高橋さんからは、この日のために特別な「10か月齢の子ヤギ」を提供していただき、食べ尽くす、という「乳乳学会」に相応しい内容となりました。
この日は、原田理事長が昨年、フランスに本部がある「チーズギルドクラブ」2の叙任を受けたことを記念した会ともなりました。
デザートには、高橋さんのサプライズ・プレゼントとしてギルドクラブのメダルをかたどった「ガレット・デ・ロワ」3をいただきました。
学びの概要
1. 国産ナチュラルチーズの現状
原田理事長から「NO CHEESE NO LIFE」と題して、国産ナチュラルチーズの現状と「乳乳学会」設立の意義を説明しました。ここ数年、いわゆる「アルチザンチーズ」の工房が増加していて、最近では全国で300を超える状況になっており、これは日本ワインのワイナリーとほぼ同じ数。北海道に半数、都府県に半数とほぼ全県でナチュラルチーズが製造されています。また、家畜を飼っていないチーズ製造だけの工房や、山羊チーズなど牛以外のチーズも徐々に増えています。4
一方で、小規模な工房が多いことから、地元での販売や宅配での販売に限定されていることが多く、その認知度や知名度は今ひとつとも言えます。
日EUとEPA、TPP11が発効するなど、海外製品との競争も激化すると思われ、また、国内での酪農家戸数の減少により生乳生産量が減少傾向となっているなかで、こうしたナチュラルチーズ工房の生産者・製造者を招いて、その「チーズ哲学」を学んで行きたいと思います。
チーズの科学はタンパク質の科学ですし、発酵・熟成の科学でもあり5、乳乳学会として、追究するテーマも大いにあると思ってます。
2. 那須ナチュラルチーズ研究会
那須ナチュラルチーズ研究会は那須地域のチーズ工房が組織している研究会です。今日のチーズも、会員のチーズ工房の自慢のチーズが揃っています。日頃の研究活動や、関東ナチュラルチーズコンテストの原動力になるなど、ほかの地域にない連帯力で「那須ブランド」を作ろうと研鑽されてます。
特に最近では、那須地域由来の乳酸菌の研究をしており、那須ワインから抽出した乳酸菌によるチーズ製造に挑戦しているそうです。
3. 本日のチーズと料理の特徴
那須ナチュラルチーズ研究会の工房のチーズと参加された宮崎県小林市で「ダイワファーム」を経営している大窪和利社長からの差し入れチーズを味わいました。
牛の品種として、ボルスタイン、ジャージーのほか、ダイワファームはホルスタインとブラウンスイスの混乳を使用。今牧場さんからやヤギのセミハードタイプのチーズを特別にいただきました(この時期はヤギの泌乳期ではないのでフレッシュタイプのチーズはありません)。
チーズの種類として、リコッタ、パスタフィラータ、白カビ、セミハード、ウオッシュ、ブルーなどバラエティ豊かな品揃えになりました。
なお、今牧場から提供されたヤギ肉はモモ肉の丸ごとローストのほか、内臓を使ったシャルキュトリに。ウデ肉やレバーを使ったカンパーニュでは食道や気道のコリコリ感がアクセントになってました。
脚注
1 那須ナチュラルチーズ研究会
那須地域にある8か所のチーズ工房、酪農家、販売者等23人で構成。チーズ製造の研究のほか、地元のレストランやホテル等と連携したチーズ料理の開発や観光への活用等幅広い活動をしている。今後の活動目標として、?更なる品質向上、?美味しいチーズは、人を笑顔にする、?那須にしかないチーズにチャレンジする、?地域との連携 を揚げている。
2 チーズギルドクラブ
正式には、「ギルド・デ・フロマジュ・エ・コンフレリー・ド・サントュギュゾン協会 クラブ・ジャポン」。フランスに本部がある国際的なチーズ職人/支援者の組織「ギルドインターナショナル」の日本支部。
UGUZON”(ユギュゾン)はイタリア北西部ロンバルディ州の羊飼いで、貧しい人たちにチーズと羊を分け与えたこころ主人に怒られ殺されてしまい、Val Cavargna(イタリアのヴァル・カバルニャ)の殉教者として「聖ユギュゾン」と呼ばれようになったそうで、この由来からチーズ職人の守護聖人として崇められている。
3 ガレット・デ・ロワ
フランスで新年を祝う公現節(1月6日)に食べる菓子。中に「フェーヴ」という小さな人形が入っていて、これが当たった人は王冠を被り、祝福を受ける。
本日のメニュー
1. チーズプレート※
※ブリー・ド・那須(チーズ工房那須の森)
さけるチーズのたまり漬け、リコッタ(あまたにチーズ工房)
ジャージーゴーダ(りんどう湖レイクビュー)
りんどう、ヤギのセミハード、子山羊肉(今牧場)
やまんくっばい(ブルー)、ワイン粕で漬けたセミハード(ダイワファーム)
2. りんどうを使ったキノコのキッシュ
3. リコッタチーズのサラダ
4. 子ヤギのパテドカンパーニュ
5. ハツとタンのコンフィ
6. 手切りのほほ肉とハラミの入ったカチョカバロ ハンバーグ
7. 子ヤギモモ肉の丸ごとロースト
8. 子ヤギのミートソースパスタ/ヤギのセミハードチーズかけ
9. ガレット・デ・ロワ