熟成肉の格之進

スペイン&イタリア肉旅2017夏 世界最高峰のステーキと銘柄牛・銘柄豚を訪ねて〜7

肉屋の哲学を学ぶ「ダリオ=チェッキーニ物語」

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美味しいステーキを求めて世界中を旅したドキュメンタリー映画「ステーキ・レボリューション」で、ベスト10入りしたイタリアの「Cecchini(チェッキーニ)」にお勉強に行ってきました。

キャンティ地方の小さな村パンッツァーノで、創業250年を超える老舗精肉店を経営しながら、郷土料理である
Tボーンステーキ“ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ”を提供しているレストランが「チェッキーニ」。

オーナーのダリオ氏の「肉屋の哲学」を受講しました。
私のお肉に対する向き合い方とほとんど重なっており、牛の命で活かされている者としての在り方を深く再認識し、今後の在り方を熟考させて頂く貴重な機会となりました。

「肉屋の哲学」でのお話しの一部をシェアーさせて頂きますね。

ダリオ氏の講義より

「私は1955年生まれの62歳です。
私は「どこの部位が美味しい??」という問いに対して
どこの部位も全て美味しい」と答えているんです。
そこが私の根幹的思想です。

私は肉屋の息子で、肉屋の子として育ちました。
私が産まれた1955年は、今から500年前の農村風景のような本当の田舎でした。
みんな農業を主な生業としていました。

みんな裕福ではなかったけど、みんなが助け合い幸せに生活していました。

村人たちは日常的に牛肉を食べられなかったけれど、足りないものは何もなく、強いて問題といえばちょっと冬が寒いぐらいでありましたが、みんな幸せに生活していました。

私の両親は肉屋を営んでいて、私はおばあちゃんに育ててもらいました。
私の周りにはいつも大人がいて、見守られながら育ちました。
おばあちゃんはとってもお料理が得意で、お客様が買っていかないもの、つまりお店の余りもので料理してくれました。

鼻も血も骨も料理して食べていました。
でも、ビステッカ(イタリア語でステーキのこと)は売っているところは見たことがありましたが、私の食卓で見たことも食べたこともありませんでした。
私は肉屋の息子でありながら、ビステッカを18歳まで食べたことがなかったのです。

お父さんがビステッカを切って、お母さんが包んで販売していました。
ビステッカは販売するもので食べるものではなかったのです。
父親が、18歳の成人の時にプレゼントにビステッカを食べさせてくれました!!!
息子の私が成人したことのお祝いとしての父親からのプレゼントでした。

私は興奮し、ビステッカを食べられることがどれだけ嬉しかったことか!!
その時のお肉の匂いも味わいも、今まで忘れることはなく強烈な味覚として覚えています。
ずっと今でも鮮明に思い出すことが出来る味覚でした。
そのビステッカは、おばあちゃんが暖炉で焼いてくれました。

1口目を食べた時に
天国だ・・・・・
2口3口いつまでも美味しかった。
なんなんだぁ!このうまいものは!!!!

でも食べ続けているうちに思い返すもの、
それはおばあちゃんが作ってくれた料理の味。

お客様が買わないような部位を美味しく料理してくれていたことが、とても幸せなことだと深く気付かされました。
ずっとそのことを忘れずに今でも大切にしています。

牛肉の全てが美味しい、それはおばあちゃんの料理が教えてくれました。
このことが脳裏から離れないのです。

お客様は、「ステーキください」「ヒレください」と言うけれど、大切に育てた牛全ての部位が、最高に美味しいということをお客様に伝えることが私の使命だと思いました。

だからレストランを経営することを決めたんです。

私の家族が、牛の全ての部位を美味しく食べることが出来る幸せな環境にあったことに感謝しています。
お客様に全ての部位が美味しいと言う事実を伝えることが、私の使命だと確信しました。
全ての部位を全てのメニューにすることで、全てのお肉に対して敬意と感謝をすべきだと思います。

人間の都合で産まれ、人間の都合でお肉になっていく、その命のリレーに対して感謝と敬意の思いを大切にすべきだと思います。

だからこそ、鼻から尻尾まで使用することが肉屋の務めだと確信しています。
お肉に感謝することが大切だと。

100年前のイタリア料理のレシピに、スープがあります。
スープに重要なものは「骨」で、昔は「薬」のように大切にされていました。
けれどたった100年経った今では、こんなに価値が下がってしまいました。

骨は出汁にとって重要なものではあるが、牛骨は現在価値評価が低い状況にあるのです。
(解体しながら・・・)私はメガネ肉(骨盤周りの肉)が最高に美味しいと思うのです。マリネしてオーブンで焼き上げると最高に美味しい!

僕は肉屋として肉屋らしく、素材を活かし切ったものでいいと思います。

その中の代表作の一つとして、クリスマスの時にスネ肉でお肉の味を最高に引き出す方法を考えました。
今日は特別に教えたいと思います。

お肉の味を最高に引き出すスネ肉の調理法とは?

スネ肉は通常はミンチにするところかもしれませんが、凄くいい骨なら縦に二つ割りにします。
塩、セイジ・フレッシュなローズマリーをたっぷり、
そしてウイキョウー・黒胡椒を加えて、開いた骨の髄のところに味付けしたスネ肉を詰め込んで、骨を紐で縛ります。

周りに玉ネギ、エシャロットセロリとフレッシュなオリーヴをたっぷり添えて、180℃のオーブンで3時間ローストするのです。

これが私のスネ肉のスペシャルな料理です。

お肉バンザイ
お肉バンザイ
お肉バンザイ

(日本語でバンザイ! 以前日本人のスタッフがいたそうで、お肉、バンザイなどの日本語がしゃべれます)

和牛は美味しい・・・好きな味わいです。
私達のお肉とは全く違うのですが、それはそれでいいと思います。

日本のお肉は美味しい。

牛はいまや工業的に育った物が主流になったからこそ、牛の幸せを考えて私のような小さなお肉屋が、
牛の命に敬意を持ち仕事に取り組むことが大切だと思っています。

こんな小さいな村だけれど来てくれてありがとう。
知り合うことで絆が育っていく。とてもすばらしいことです。

ちっちゃな村に日本から訪れてくれることが何より最高に幸せです。

「お肉バンザイ」
「バンザイ」「バンザイ」
「ありがとう!!!」


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