熟成肉の格之進

2018年1月27日 第15回肉肉学会の概要

「田中畜産の放牧敬産牛」と「八丈島乳業のジャージー乳製品」「和牛飼料で育てた28ヶ月齢ジャージー去勢牛118日熟成」「総本家更科堀井さんとの共同研究:肉そば」

カテゴリ

要約

第15回肉肉学会のテーマは、「田中畜産の放牧敬産牛」「八丈島乳業のジャージー乳製品」「和牛飼料で育てた28ヶ月齢ジャージー去勢牛118日熟成」に「総本家更科堀井さんとの共同研究:肉そば」と盛りだくさん。
田中畜産は兵庫県但馬地域の繁殖経営だが、経産牛について、穀物飼料で飼い直すのではなく、6〜8か月間の放牧により仕上げて牛肉として販売している。放牧による草だけの仕上げなので肉量は少なく肉質も固いものとなるが、田中畜産では、この牛肉を自ら部分肉、精肉にカットし宅配することで売り切ってしまう。
八丈島乳業のジャージー乳製品は、八丈島で僅かに残った乳牛であるジャージー牛の放牧搾乳し、ソフトクリーム、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を製造、島内中心に販売している。ジャージー牛の特徴を活かした乳製品は人気を集め、島外では入手困難なほど。
「和牛飼料で育てたジャージー牛28ヶ月齢118日熟成肉」は前回の学会で入手した千葉県山武市の小林牧場の牛肉を熟成し続けたもの。
「肉そばの研究」はシークレット企画で、日本そばの老舗「総本家更科堀井」さんと「格之進」さんとの共同研究。今回はシリーズ1回目となる。
今回のゲストは、田中畜産の田中あつみさん、八丈島乳業の歌川社長、魚谷工場長、総本家更科堀井の堀井社長。

田中あつみさん
魚谷さんと歌川さん
千葉さんと堀井さん

牧場の概要

① 田中畜産

田中畜産(たなちく)は、田中一馬さんが代表を務める和牛経営。但馬牛1は、日本の和牛のルーツであり、田中さんは黒毛和種の繁殖経営として子牛を家畜市場で販売する業務をメインに、精肉販売、削蹄業(牛の蹄を手入れする事業)を営む。今回は、一馬さんの都合がつかず、奥様のあつみさんにプレゼンしていただいた。あつみさんは宮城県登米市の出身で、岩手大学を卒業後岩手の牧場でアルバイトをしていたときに一馬さんと知り合い、結婚。兵庫へ移住して牧場の仕事と子育てを両立させるスーパーかあさんである。
子牛生産の役割を終えた雌牛(経産牛)は、通常、そのままか配合飼料を給与した「飼い直し肥育」を行って、と畜するが、田中畜産では、放牧による飼い直し肥育を行っている。ただ、このような牛肉は赤身主体で枝肉重量も大きくならないので経済的にはメリットが薄く、一般の流通ルートには乗りがたい。このため、田中さんは自ら精肉として販売し、SNSを活用することで、「放牧敬産牛」というブランドで消費者に直接販売して活路を見いだしている。ご夫婦揃って、強力な発信力を持っていることが奏功し、「放牧敬産牛」は発売早々、あっと言う間に売り切れる人気商品となり、今回の牛肉も何とか確保できた「トモバラ」である。

② 八丈島乳業

「八丈島乳業」は、八丈島唯一の乳業会社であり、自ら「ゆーゆー牧場」2という直営牧場でジャージー牛を飼育している生乳生産から加工まで一貫して行っている乳業メーカーである。歴史的には八丈島は「ホルスタインの島」として酪農牛業が島の中心産業だった時代もあるが、乳業工場撤退等に伴い、島内の飲用消費だけで酪農経営を持続することは困難となった。
(写真:牧草を食べるジャージー搾乳牛)
このため、一端、酪農経営、乳業工場は島からなくなるが、八丈島乳業が自ら牧場と乳業工場をもつことで、島内での酪農・乳製品製造が復活した。この際、ホルスタインより乳脂肪率が高いジャージー種を導入し、島の自然環境を活かした放牧酪農を取り入れたことで、観光ともマッチした独自の乳製品開発が可能となった。
(写真:ゆーゆー牧場で放牧中の搾乳牛)
魚谷さんが工場長となったことで、チーズを中心に知名度もアップしているが、現在では、需要に製造が追いつかないという嬉しい悲鳴も聞こえている。このため、現在の海岸に隣接した放牧場だけでは飼料が不足することから、和牛用に開発された「八丈富士牧野」等の活用も視野に入れて増頭する計画も進行中とのことである。
(写真:八丈小島を臨む和牛の放牧地)

③ 小林牧場(山武分場)

「第14回肉肉学会の概要」を参照のこと。

本日の食材

ア:
田中畜産さんの「放牧敬産牛」は「てるとよ」の「トモバラ」。「てるとよ」は平成13年生まれの雌牛だから約14歳の牛。
イ:小林牧場(「第14回肉肉学会の概要」を参照のこと)
小林牧場のジャージー去勢牛は、枝肉重量365kg、格付等級はC2。
今回は、118日熟成という超長期熟成肉。

本日のメニュー

田中畜産の放牧敬産牛、八丈島乳業の乳製品
小林牧場の和牛飼料で育てた28ヶ月齢ジャージー去勢牛118日熟成

〇 八丈島乳業ジャージー牛乳と市販牛乳の対比
〇 八丈島乳業モッツァレラチーズのカプレーゼ(写真1)
〇 八丈島乳業マスカルポーネサラダ(写真2)
〇 八丈島乳業ジャージー牛乳のラザニア(写真3)
〇 28ヶ月齢ジャージー牛コーンドビーフ(写真4)
〇 28ヶ月齢ジャージー牛リエット(写真4)
〇 28ヶ月齢ジャージー牛モルタデッラ(写真4)
〇 放牧敬産牛と28ヶ月齢ジャージー牛のトモバラ・煮(写真5)
〇 放牧敬産牛と28ヶ月齢ジャージー牛のトモバラ・焼き(写真6)
〇 28ヶ月齢ジャージー牛 ソトモモローストビーフ(写真7)
〇 28ヶ月齢ジャージー牛 リブロースステーキ(写真8)
〇 更科堀井格之進 うしそば2種牛スジそば&シンシンそば(写真9)

参考文献

田中畜産HP
田中畜産の放牧敬産牛の哲学(農畜産業振興機構HP)
年末食べる用の食材その2 田中畜産・田中一馬君が放牧で育てた経産牛いや敬産牛「きょうふく」のお肉。(やまけんの出張食い倒れ日記)
八丈島乳業HP
総本家更科堀井

格之進 HP

脚注

1 但馬牛
「但馬牛」は「たじまうし」と読む場合は生体あるいは血統を指し、「たじまぎゅう」と読む場合は牛肉を指す。「たじまうし」の子牛を買って他県で肥育すれば他県のブランド牛となる(国内での原産地表示は、最も長く飼育した場所となるので、通常1歳以下の子牛を買って、最低でも1年半以上肥育する和牛の場合は、肥育地名が牛肉の原産地名となる)。「たじまうし」は肉質に優れるが、小さい牛なので、肉量はとれない。
「但馬牛(たじまぎゅう)」あるいは「但馬ビーフ」は我が国で「地理的表示保護制度(GI)」に登録されている牛肉で「但馬牛(たじまうし)を素牛とし兵庫県内において出荷まで肥育を行った生後28ヶ月齢以上60ヶ月齢以下の雌牛・去勢牛であり、肉質等級A・B2等級以上」と定義されている。

2 ゆーゆー牧場
「八丈島乳業」の生産部門である牧場。もともとは八丈富士の麓に近い山腹にあったが、搾乳しやすい海岸そばのミニゴルフ場跡地に移転し、日本では珍しい「リンクス」牧場となっている。このため青い海と放牧地というコントラストが素晴らしく、観光資源としても有望な牧場となっている。
潮風を始終浴びているため、通常の放牧に必要な「鉱塩」(飼料となる塩等の塊)を給与する必要がない。ただ、放牧地としての草量に乏しいため、搾乳頭数を増加させるためには面的な拡大が必要であり、隣接地の買収等が課題となっている。

写真

1 ジャージーのモッツァレラのカプレーゼ
2 ジャージーのマスカルポーネサラダ
3 ジャージー牛乳のラザニア
4 28ヶ月齢ジャージー牛肉のコンビーフ、リエット、モルタデッラ
5 ジャージーと放牧敬産牛:トモバラ煮
6 ジャージーと放牧敬産牛:トモバラ焼き
7 28ヶ月齢ジャージーのソトモモのロースト
8 28ヶ月齢ジャージーのリブロースステーキ
9 堀井更科の更科と二八そば、牛スジのつけ汁

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