熟成肉の格之進

2019年10月5日 第4回乳乳学会の概要

「F1エンジニアのチーズの作り方とは?」 〜Bosqueso Cheese Lab. 是本健介氏に学ぶ〜

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要約

「第4回乳乳学会」のテーマは「Bosqueso Cheese Lab.」。長野県佐久市春日から是本健介さんに来ていただきました。

是本さんは、大学卒業後、本田技研に就職し、研究所でジェットエンジンやF1マシンの車体設計等の研究を行っていた生粋のエンジニアという経歴をもつ異色のチーズ職人です。

チーズ好きが高じてチーズプロフェッショナルとなり、技術者的感覚でチーズ製造の腕に磨きをかけ、奥様の実家がある佐久市に2015年に「Bosqueso Cheese Lab.」を開設しました。

開業わずか4年で「Japan Cheese Award」で金賞を受賞するなど、確かな技術と佐久市の自然を活かしたチーズが好評です。社名の「Bosqueso」はスペイン語のBosque(森)とQueso(チーズ)を組み合わせた造語。「チーズを通じて森づくりをしたい」という思いが込められています。

これまでの「乳乳学会」では家畜を飼養しながらチーズを製造する工房である「農家チーズ(フェミリエ)をテーマにしましたが、今回は最近増加しているレティエ(家畜を飼養しないチーズ工房)を招きました。是本さんは、将来的には森で家畜を放牧することも視野に入れていますが、当面は、地域の農場やレストランとのコラボによるチーズつくり、チーズ文化の実現を目指しています。

チーズづくりと自動車製造との類似性など是本さんならではの視点から捉えたチーズ談義に花が咲きました。

高橋雄幸副理事長

人形町今半の高岡さんのあいさつ

是本健介さんのプレゼン

遠藤シェフ

学びの概要

1. チーズへの志

是本健介さんは1969年生まれ。福岡県出身で、大学・大学院では航空宇宙工学を専攻し、(株)本田技術研究所に入社、ジェットエンジンやF1マシンの車体設計、燃料電池車の車体開発など、「技術の本田」でエンジニアとしての道をまっしぐらに進んできた。そんな是本さんが、仕事でヨーロッパと日本を往復するうちに、ヨーロッパのチーズを食べてチーズファンになっていき、ついにはチーズプロフェッショナル、チーズ職人になってしまったという。驚くばかりの道程である。

チーズづくりの道を歩もうと決意した是本さんが、その場に選んだのが、奥さんの実家があった佐久市だった。ご実家に何回か通ううちに、友人知人も増え、良質な生乳を生産する酪農家とも出会い、軽井沢が近いということでトップシェフとも連携できる、その上、乾草冷涼で住みやすい土地とチーズづくりを始めるには最適の土地だということに気がついたそうだ。

2. Bosqueso Cheese Lab.のチーズづくり

是本さんの経歴を聞けば、誰もが「F1エンジニアがなぜ、チーズづくり?」と不思議に思うかも知れないが、是本さん曰く「エンジニアリング的考え方と高精度の計測器及び情熱があれば他分野への展開は十分に可能」。確かにチーズづくりは、技術的・科学的に多くの知見が集約されており、乳酸菌やカビなどの微生物の培養技術等も完成しているので、環境条件さえ制御すればInput―Output系は安定している、と言える。

是本さんは、現時点では家畜を飼育せず、外部から生乳を購入してチーズ製造を行う工房(農家工房の「フェルミエ」に対して「レティエ」という)だが、「良質な原料乳を提供してくれる生産者と連携できれば問題ではない」という。牛の生乳は「スプレドール小林牧場」(是本さん自身、6か月ほど実習をした)から高品質な生乳を仕入れているし、ヤギ乳は、佐久市内にある「家畜改良センター長野牧場」(家畜改良センターで唯一山羊を飼育している)から仕入れることができる。今年度は、牛の生乳もヤギ乳も仕入れ単価が上昇して経営的には厳しいものがあるが、昨年は「Japan Cheese Award」でヤギのセミハードチーズ「SHIRAKABA」が非加熱圧縮4か月未満部門で金賞と最優秀部門賞を受賞、イタリアで開催された「World Cheese Awards 2019」で「KARAMATSU-RH」がBronze medalを受賞するなどチーズへの評価は高まっている。

工房開設後4年と短期間の間に、是本さんは驚くほど多くのアイテムを製造するチーズ職人となっている。こうした製造技術の広がり・深まりにも驚くが、是本さん曰く「自動車製造は共通のプラットフォームから多様な車種と創り出している。チーズ製造も同じで、共通の製造基盤から乳種及び菌を変えることで多様なアイテムを作ることができる。」と仰るのである。なるほど、目から鱗でござる。

脚注

1 是本健介氏のプロフィール

2 是本健介氏のHONDA時代

3 是本健介氏のチーズづくり:発想は「くるまづくり」

本日のメニュー

○「TATESHINA」と生ハムのカナッペ

○「MIMAKI(Kimoto)」&「MOCHIZUKI」とシャルキュトリ(パテドカンパーニュは十勝しんむら牧場「山森野豚」)

○チョップドサラダ

○「KASUGA-specR、ヤケテルハンバーグ、じゃがいものグラタン」

○アン黒のサーロインステーキ&セミハード「KARAMATSU」

○モッツァレラのFUSEのカプレーゼ風炊き込みご飯


○MIMAKI Fraisとホエイソース

今日のチーズのみなさん


上段左から「MIMAKI FRAI」牛のフレッシュチーズ
「MOCHIZUKI」牛の白カビチーズ 「KARAMATSU」牛のセミハードチーズ(欄外)
「FUSE」牛のモッツアレラチーズ
下段左から「MIMAKI」牛の酵母のチーズ
「KASUGA Spec-R」温泉水で洗った牛のウオッシュチーズ
「TATESHINA」牛のリコッタチーズ


参考文献


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