2016年1月18日 第5回肉肉学会の概要
白金豚と梅山豚
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要約
第5回肉肉学会のお題は、初めての豚肉。「白金豚」と「梅山豚」。
「白金豚」(はっきんとん)は岩手県花巻市の高源精麦(株)のブランド豚肉。名前の由来は花巻市ゆかりの作家・宮沢賢治の「ブラン豚農学校の豚」という小説からとか。
「白金豚」は、品種(三元交配)、給与飼料等に独特の工夫をして、東日本でもかなりの人気を誇るブランド豚肉となっている。最近は水田転作で生産された子実用トウモロコシ1や稲SGS2の利用や豚肉の台湾への輸出についてもチャレンジしている。
「梅山豚」(めいしゃんとん)は中国原産の豚で、1腹当たりに出産する子豚の頭数が多い特徴があり、我が国には繁殖成績の改良用に導入されたが、豚肉としての生産性が低いため、コマーシャル用にはほとんど利用されていない品種である(日本では2か所のみ3との報告がある)。
茨城県境町の塚原牧場では、梅山豚の雌豚にデュロック種の雄豚を交配したF1、及びこのF1の雌に更にデュロック種の雄を交配した豚を肥育している。また、高源精麦さんと同様、子実用トウモロコシの栽培にも熱心に取り組んでいる。この日は塚原さんが急遽、来られなくなってしまったのが残念でした。
写真左:高源精麦社長高橋誠さん
写真右:格之進社長の千葉さん
「白金豚」の概要
高源精麦(株)の高橋誠さんに「白金豚」のプレゼン、原田前農水省畜産部長4が日本の豚肉生産の概要と、塚原さんに代わって「梅山豚」の説明をした。
? 牧場の概要
「白金豚」を生産している高源精麦さんの養豚場は岩手県花巻市に所在し、母豚の受胎・出産が行われる「分娩舎」、生まれた子豚が離乳期を送る「離乳舎」、離乳した子豚を肥育する「肥育舎」と豚の成育ステージ5に合わせて生産農場を移るシステムをとっている。これは主として衛生対策のためである。
「精麦」という社名だが、養豚には昭和33年から関わっているとのことで永い歴史を有し、「白金豚」(別名「プラチナポーク」)としても「ブランド豚」の草分け的な存在。「白金豚」は小売りをせずにレストラン・ホテル等(自社レストランを含め)への卸売りを主体に宅配等による直接販売をしていることに特徴があり、「花巻」(岩手)に行かないと食べられない豚肉としての有利性を構築している。
? 品種の特徴
我が国の豚肉のほとんどは「三元豚」(LWD=ランドレース大ヨークシャーデュロック)であるが、白金豚はLWB(ランドレース大ヨークシャー黒豚(バークシャー))という交配に特徴がある。 豚の品種の特徴、一般的な三元豚、「白金豚」の交配の特徴については次の図を参照のこと。
「梅山豚」の概要
?梅山豚の特徴と塚原牧場の交配方式については、次図を参照のこと
本日の食材
白金豚と梅山豚それぞれ同じ部位を同じ料理にして食べ比べるという趣向で、シャルキュトリも豚肉らしいチョイスとなった。
白金豚vs梅山豚のメニュー
1:前菜(シャルキュトリ)
(時計回りに)
バラ肉等をラードの中で煮たパテみたいな料理。
備えのパンにのせて。
生ハム(ヒレ肉)
ヒレ肉の生ハムには意表を突かれた。
しっとりした食感。
ジャンボンブラン
モモ肉のハム。これは王道ですね。
重量感も味もどっしり。
パテグランメール(梅山豚のみ)
おばあちゃんのパテ、といわれる
定番シャルキュトリ。
ピクルスとオレンジのコンチュール
2:サラダ
豚バラ肉を揚げたサラダ。
マンゴーのヴィネグレットソース
3:メイン
参考文献
白金豚公式サイト:
http://www.meat.co.jp/main.htm
岩手食材発信プロジェクト(高橋誠さんインタビュー):
http://www.jr-morioka.com/shoku.project/primary/5.html
塚原牧場(梅山豚)公式サイト:
http://www.meishanton.com/
格之進 HP:
http://kakunosh.in/
脚注
1 子実用とうもろこし とうもろこしの子実のみを収穫・乾燥した飼料で、輸入されるとうもろこしはこの形態。我が国での飼料用とうもろこしは、ほとんどが未成熟の子実と茎葉を混合した「コーンサイレージ」として牛の給与飼料として利用されるため、あえて「子実用とうもろこし」として区分している。実だけなので、牛だけでなく、豚、鶏にも給与でき、栄養価が高い。一方で、我が国では気候条件の違い、畑等の規模の違いから、輸入とうもろこしとの価格差が大きく、「転作助成金」のような一定の補助金がないと継続的な作付けは難しい。
2 稲SGS 飼料用米は、転作作物でも稲作並の所得を補償する「経営所得安定大作」の実施により、輸入とうもろこしと同程度の価格で畜産農家への供給が可能になり、作付けが拡大し平成29年度は約92千?と、25年度(約22千?)の4倍強に拡大。一方で、食用米と同等の乾燥経費がかかることから、乳酸発酵させて嗜好性と貯蔵性を高めることで畜産農家が生産利用しやすくすることも可能。このように飼料米を乳酸発酵させたものを「Soft Grain Silage」(ソフトグレインサーレージ)と言い、SGSを略称される。
3 梅山豚の飼育状況
正確な統計はないが、我が国では塚原牧場と、熊本県の養豚場の2か所で計200頭程度飼育されているといわれる。
4 肉肉学会の現在の原田理事長は、この5回目から参加で、この時点ではまだ、お客さん的な扱い。
5 豚の成育ステージ 肥育用の豚は、「母豚」の妊娠期間114日を経て生まれ、「子豚」として3か月程度(生後3〜4週間で離乳)過ごし、「肥育豚」としてさらに3か月強過ごし、114kg程度で出荷される(黒豚等は肥育期間が長い)。農家により、「母豚」、(離乳)、「育成」、「肥育」などの各段階で別の豚舎で飼育する場合がある。