熟成肉の格之進

2019年8月27日 第33回肉肉学会の概要

東京しゃもとOmeチーズ

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要約

「第33回肉肉学会」のテーマは、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催で注目される「東京食材」の「東京しゃも」と「青梅産のチーズ」。

「東京しゃも」は東京都畜産試験場(現農林総合研究センター)が「しゃも系」の新たな品種として創り出したものだが、そのために、生産者をまとめ東京しゃもを生産し続けた「東京しゃも生産組合」の浅野良仁組合長と、東京しゃもを消費者に提供する立場から、生産者を叱咤激励されてきた、鶏料理の老舗「玉ひで」の山田耕之亮社長(玉ひで8代目)に来ていただいた。


アーティスト・浅野組合長


高岡最高顧問が山田社長を紹介。


「玉ひで」の山田社長

また、青梅市でチーズ工房「フロマージュ・デュ・テロワール」を経営されている鶴見和子さんは、フランスのチーズ大学で学んだ本格派のチーズ職人。家畜は飼育していないが、地元の生乳、自ら培養した乳酸菌でものチーズ生産へのこだわりは、生乳からチーズを作る科学的な製造過程をしっかり押さえた知識と技術の裏付けがある故である。

「テロワールとは『土着』だ」という鶴見さん、「農産物は土地が味を決める」という浅野さん。一見、「テロワール」を意識できない東京でも、土地を選び、素材を選び、風土を活かす畜産物生産を実現されている。


サイエンティスト・鶴見さん

今回は、東京しゃもと青梅チーズとのマリアージュも含め、東京食材の可能性を確認した肉肉学会となった。

学びの概要

今日のテーマは「東京しゃも」と「青梅チーズ」。一見、直接の関係はない素材のようだが、東京しゃもの生産者は西多摩地域に散在しており、本日、お招きした「東京しゃも生産組合」の浅野良仁組合長は、あきるの市在住である。また、鶴見和子氏が経営するチーズ工房「フロマージュ・デュ・テロワール」はあきるの市に隣接する青梅市にあり、どちらも同じ「テロワール」で育った食材とも言える。

1. 青梅のチーズ(フロマージュ・デュ・テロワール)

「フロマージュ・デュ・テロワール」は家畜を飼育しないチーズ工房なので、原料である牛の生乳は近隣の牧場から、ヤギ乳は長野県佐久市の「家畜改良事業団長野牧場」から購入している。チーズ原料を外部から購入する場合、都府県のチーズ工房は「飲用向け生乳」とほぼ同じ価格で購入しているのが実態1であり、2019年4月から4円程度値上げとなっている(地域によって飲用向け生乳価格は異なるが、115円〜120円/kg程度)。また、ヤギ乳価格は、関東地方のチーズ工房が依存する「家畜改良事業団長野牧場」が今春から頒布価格を上げたため、家畜を飼育しないチーズ工房では、原料乳代の値上げを商品価格に転嫁せざるを得ない状況となっていうる。
そういう状況でも、日本におけるチーズ消費量は増加傾向で推移し、チーズ工房のチーズも消費者に好評で、多くの工房が生産不足になっている。
「フロマージュ・デュ・テロワール」も曜日を決めて多種類のチーズを製造しているが、生産が追いつかない状況である。
経営者兼チーズ職人の鶴見和子さんは、フランスのチーズ大学でチーズを学んだ理論家肌のチーズ職人であり、「テロワールはいわば『土着』であり、市販のものを使ったらテロワールにならない」という持論の持ち主である。
そのため、乳酸菌は自分で起こし、ルヴァン(発酵種)を種継ぎして培養している。通常の工房ではスターターとなる乳酸菌は市販のものを購入するので、珍しいケースだが、鶴見さんは「安定しないけど面白い」と楽しんでいるようだ。さすがに凝乳酵素はフランス産のものを使っているとのこと。塩は大島産と使用しているが、これはスーパーでも買えるのでいざというときの安心感があるようだ。地元の素材としては、「フロマージュ・ドーメ」は小澤酒造の生もと酒を使ったウォッシュするが、酵母が勝ってリネンス菌がつかないそうだ(皮がオレンジ色にならない)。逆に、焼酎でウォッシュするとリネンス菌がつき綺麗な色になる。
本日、使用したチーズは、モッツアレラ、丸木の形をしたヤギのチーズ「ビュッシュ」、牛のセミハードフルム・ドーメ(アリゴに)、フロマージュ・ブランである。

2. 東京しゃも

「東京しゃも」は令和元年5月8日に「地理的表示保護制度(GI)」に登録された(令和最初の登録)。鶏肉としては2例目である。
「東京しゃも」は、江戸時代の「軍鶏鍋」の味わいを再現しようと、品種改良した軍鶏とロードアイランドレッドを交配した交雑種に、再度、軍鶏を戻し交配した品種で、軍鶏の系統が75%あるため、軍鶏の特徴がよく出ていると言われる。「本日のメニュー」に東京しゃもの「丸と体」の写真があるのでご覧になっていただきたい。
注意したいのは、「東京しゃも」は「地鶏」ではないということである。実際、飼育現場を拝見すると、東京しゃもは「ケージ飼い」2しており、「地鶏」の定義に当てはまらない。鶏の種類としては「地鶏」に該当するが、飼育方法が「地鶏」に当たらないということになる。なお、飼育日数は120日間以上となっている(通常のブロイラーは55日程度)。
浅野組合長は、もともと採卵養鶏家だが、若い頃に新規就農したという変わり種。農業に従事したことはなかったが、当時の養鶏研究者から「農産物幅所が味を決める」といわれ、東京中を歩き回って、秋川周辺で採卵経営をやろうと決めたという。東京しゃもの飼育は、東京しゃもの雛育成をしていた「東京都畜産会」の業務を引き継ぐ形で始めたもので、現在でも、浅野養鶏として採卵経営を続けつつ、東京しゃもの育成を引きうけている。
浅野さんは、多趣味な方で、絵を描くことからオペラで歌うこと、最近ではハンググライダーを楽しみ、若さ溢れる人柄である。
東京しゃものブランド確立に当たり難しかったことは、江戸時代から続いている軍鶏の味を追究することで、「玉ひで」さんの意見を聞きながら飼育管理方法を追究してきた、とのことである。
なので、今回は人形町「玉ひで」の8代目・山田耕之亮社長もお越しいただいた。老舗の味を代々受け継ぐ山田社長は「本当の鶏肉が分かる最後の男」であり、東京しゃもの育成に当たっては、東京都畜産試験場のみならず、全国の畜産試験場にもデータを当たった経験をもつ、東京しゃもの「産みの親」とも言える方である。「焼きしめる行為は地鶏には向かない」と仰る山田社長の確かな目と舌が、東京しゃもを現在のブランドに押し上げたのだ。

本日のメニュー

〇 しゃもレバームース(写真1)

〇 モッツアレラのカプレーゼ(写真2)

〇 砂肝コンフィとビュッシュフリットサラダ(写真3)

〇 しゃもソーセージとフルム・ドーメのアリゴ(写真4)

〇 手羽のポトフ(写真5)

〇 炭火焼き4種(ハツ・ポンジリ・ムネ・モモの炭火焼き(写真6〜8)


〇 しゃもの炊き込みご飯(写真9〜10)

〇 フロマージュ・ブランのクレームダンジュ(写真11)



東京しゃも(手前)とブロイラーのと体


東京しゃものコラーゲン



VRおじさんと肉おじさんのベンチャー「エナジーバーグ」の秘密の発表3


試作中の焼酎ウオッシュチーズ


脚注

1 チーズ向け乳価

我が国の生乳価格(酪農家の手取り価格)は、飲用牛乳向け、生クリーム向け、バター・脱脂粉乳向け、チーズ向けと大きく分かれていて、価格の高さは、飲用>生クリーム>バター・脱粉>チーズとなり、農家の手取り乳価は、それぞれの単価に仕向け量を乗じた加重平均単価(「プール乳価」という)となる。北海道のチーズ工房は(歴史的な経緯もあり)チーズ乳価で仕入れることが可能だが(チーズ乳価は生産コストを下回る水準なので酪農家には国からの助成金が交付される)、都府県のチーズ工房は飲用乳価あるいは「プール乳価」で仕入れている場合が多い。

2 東京しゃもの飼育方法

地理的表示(GI)で登録されている管理方法は「ケージ飼い」又は「平飼い」とされているが、いずれにしても「地鶏」とは称していない(写真は浅野養鶏場のケージ飼い)


3 エナジーバーグ

この日は、「エナジーバーグ」の秘密のお披露目があった。エナジーバーグは、肉おじさん(千葉祐士事務局長)とVRおじさん(藤井直敬理事)という肉肉学会コンビが開発した「味覚を通じて脳に働きかける体験型食品」で、「格之進『金格ハンバーグ』+玉露パウダー+くるみ」 というスーパーな組み合わせで実現したハンバーグなのだ。

参考文献


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