熟成肉の格之進

2019年7月24日 第32回肉肉学会の概要

山形村短角牛を支える柿木畜産の志に学ぶ

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要約

開会の挨拶は江渡副理事長から。

「第32回肉肉学会」のテーマは「岩手短角牛」。和牛4品種のひとつ「日本短角種」は、岩手県をルーツにしており、今回は、岩手県でも日本短角種の故郷ともいえる山形村(現久慈市)の柿木畜産代表の柿木敏由貴さんに来ていただいた。

「山形村の短角牛」を熱く語る柿木社長

柿木さんは県立農業大学校在学時に他の牛を学んで、短角種の良さに気がついたという。もともと短角しかいない土地なのに、短角は売れない、儲からないため、地域では黒毛和種への転換が進んでいく。「これだけ素敵なのになんで売れないんだ」と悩んできたが、飼料は全て国産原料であること等にこだわって経営を続けてきた結果、ようやく「赤身の美味しさ」に気づいてもらえた、とのこと。

柿木畜産の母牛は50頭。夏の間は共同の放牧地で親子放牧させ、交配は牧牛(まきうし)による自然交配。独自の「CSA」に取組み、消費者への直接販売を行う。

本日の牛肉は、柿木畜産生産の29か月齢の去勢牛。2017年2月に柿木畜産の牛舎で生まれ、5月から10月まで放牧地で美味しい草をいっぱい食べて過ごしたあと牛舎で国産飼料だけを食べて2019年6月にと畜された牛です。

全日本・食学会・高岡副理事長

また、山形村は平庭高原での闘牛大会が地域の伝統的な行事として根付いており、柿木畜産でも伝統文化維持のために闘牛用の雄牛を飼育し、年に数回行われる闘牛大会で勇姿を見せているそうです。

恒例の「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ「堀井格之進のUSHISOBAは「山形村短角牛・ばら肉時雨煮そば」。

堀井格之進ブラザーズ

学びの概要

今日のテーマは「日本短角種1」。前回の「見島牛」で、「和牛」と表示できるのは黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種の4品種と、これらの種間雑種ということを学んだが、その一画を学ぶ機会となった。

日本短角種は旧南部藩時代に沿岸と内陸を結ぶ「塩の道」の物資輸送に使われていた南部牛に、明治初期に米国や英国から導入されたショートホーン種又はデイリー・ショートホーン種の交配を重ねて作出された品種である。

日本短角種は放牧適性に優れており、繁殖牛は春から秋にかけて共同草地等に放牧され、牧(まき)牛により自然交配が行われる。秋の終わりに牛舎に戻り春がくるまで牛舎の中で飼育され、その間に子牛を産む。この飼育サイクルは「夏山冬里方式」と言われ、夏の稲作との複合農業と強く結びついた飼育方法であった。

しかしながら、複合経営の規模では稲作、養牛とも中途半端であり、ハウス野菜作等への専業化が進むにつれ、短角種飼育農家は減少していった。更に牛肉の輸入自由化等により競争力の高い黒毛和種への転換(日本短角種と黒毛和種との交配による「短黒和牛」も含む)が拍車をかけ、現在の日本短角種の繁殖は北上山系に限られる状況となっている。

なお、日本短角種は岩手県が主要な生産地だが、青森県、秋田県、北海道などでも飼育されている。

北上山地を繁殖基地としている日本短角牛は、県内各地で肥育されていたが、現在では久慈、岩泉、二戸、盛岡の4地域で肥育されており2、それぞれ給与飼料等の違いから肉質も若干異なるといわれているが、去勢牛でもほぼ全てがA2あるいはB2と格付けされる(Aの方が割合は多い)。換言すれば、和牛といってもホルスタイン去勢牛と同程度の肉質だということになる。このため、牛肉自由化(平成3年度)以降は、輸入牛肉等との競合にさらされ、かつ「夏山冬里」生産方式のため、秋に子牛が一斉に市場出荷され肥育後、同じ時期に出荷される流通特性から「定時定量販売」が困難な商品として一般マーケットから閉め出されてしまうことになった。このため、一部の生協や飲食店以外ではお目にかかることのできない牛肉となってしまったのである。

近年の「赤身肉ブーム」で「日本短角種」の美味しさが見直されつつあるが、大幅に減少した雌牛頭数の回復は難しく「希少価値のある牛肉」として存在している。

柿木社長は、農業学校で他の牛を学んだときに、改めて短角牛の良さに気がついたという。実家に戻り短角を飼いながらも「これだけ素敵な牛なのになんで売れないんだ」と悩んだ時期もあったが、今になって、赤身の美味しさに気がついてもらえたと思う。日の目をみない短角牛のためにビデオを作ったり、CSA(Community Supported Agriculture3)による消費者への直接契約販売も行ったりしている。牛肉は、自分が食べたい、家族や友人に勧めたいという想いで生産している。黒毛和種の方が収入は上がるが、自分はそれをしない。

柿木畜産では50頭の繁殖雌牛を飼育し子牛を生産しており、自然交配用に雄も1頭飼育している。標高700~800mの高原で、放牧できない冬の間の牧草、肥育用のデントコーンまで自給生産している。自然交配なので、お産は冬期となり、気温はマイナス20℃にもなるが、寒い時期は雑菌がないので病気のリスクが小さい。産後のひだちが悪いときは牛湯のお灸を据えることもある。

肥育の飼料は国産100%にこだわっている。日本短角種は月齢で味が変わってくるし。個体差が大きい。28か月齢から脂が乗ってくる。今日の牛は29か月齢なので自信がある。軽やかな脂と赤身の味の濃さ、引きの良さがある。肥育の出荷頭数は年60頭で、直接販売を基本にしている。

平庭高原の闘牛大会にも闘牛と一緒に参加している。闘牛の牛は雄牛で、闘牛のためだけに飼っている。飼料代など持ち出しが多く一銭にもならないが、地域の伝統として守っていきたいとのこと。

闘牛界の牛若丸
柿木 敏由貴
チーム最年少にしてエース。
軽やかに舞うその姿は会場を魅了する
(岩手平庭高原闘牛大会HP)

USHISOBA

「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ企画「牛そば」。
今回の企画は「短角牛バラ肉の時雨煮茶漬け」。「バラ脂の薫りと旨味をどのように引き出すか」とテーマとしたそうです。
麺は更科そば、出汁は昆布と鯖出汁。温かい蕎麦にして薫りを立てやすくし、お茶漬けのような出汁の旨さを前面に出さず、バラ脂の旨味を前面に出すようにした。バラ肉と出汁のブリッジに山椒とゴボウを。

本日のメニュー

〇 ブレザオラ&モルタデラ(写真1)

〇 リブロースステーキ(写真2)

〇 外バラ焼肉スタイル(写真3)

〇 ランプ炭火焼き(写真4)

〇 いのぶたパテドカンパーニュ(三良坂フロマージュのいのぶた)(写真5)

〇 牛そば 外バラ時雨煮(写真6)


柿木畜産短角牛のリブロース

柿木畜産短角牛のランプR


山形村の共同放牧場での日本短角種の放牧風景。

平庭高原の闘牛大会で、闘牛を引く柿木さん


脚注

1 日本短角種

2 岩手県での短角種(肥育地による区分)

生産地(肥育地)

飼料の特徴

久慈市

国内で生産された濃厚飼料だけを原料とした配合飼料を給与

岩泉町

市販の配合飼料を給与

二戸市

市販の配合飼料及び豆腐製造粕を給与

盛岡市

市販の配合飼料及びビール製造粕を給与

3 CSA(Community Supported Agriculture)

生産者と消費者が連携し、前払いによる農畜産物の契約を通じて相互に支え合う仕組み。CSAは米国で1980年代に始まり、現在では欧米を中心に世界的な広がりをみせている。

参考文献


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