手間も時間も惜しまずかければ、旨味は元の6倍にもなる熟成肉
赤身肉に付加価値をつける「熟成」
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熟成肉、熟成肉と今ではいろいろなところで耳にしますが、熟成肉というワードが、一般的になったのは2009年、静岡でいち早くドライエイジングの肉に取り組んだ「さの萬」の佐野佳治社長が「日本ドライエイジング普及協会」を立ち上げた頃からだと思います。
ニューヨークでは、30年ほど前からドライエイジングの手法が確立され、高級ビーフとして認知されており、その手法を佐野社長が日本に持ち込み、今の熟成肉ブームのきっかけを作ったと言ってもいいでしょう。
ニューヨークのドライエイジングは、アンガス牛の霜降りですが、前回も書いたように和牛の霜降りでは脂が多すぎて適さない。
そのため、「さの萬」さんでも、赤身の多い肉やホルスタイン、経産牛をドライエイジングしています。
そもそも熟成肉は、水分が飛び元の肉の2割ほど減量され、まわりについたカビなどを取り除き、トリミングし掃除をするので、結局元の半分くらいの肉量になってしまいます。
だから高値になってしまうのですが、ふくよかな味わい(旨味はなんと元の6倍とも!?)、香ばしい香り、やわらかな食感という付加価値がつくのですから、食肉を扱うものとしては魅力的な技法でもあります。
特に、日本では比較的安価な、ホルスタインや経産牛にも付加価値をつけることができるので、生産農家、食肉業者にもよい還元ができるのではないでしょうか。
和牛と言えば、たっぷりの霜降り肉がどうしても市場では高値がつきます。
けれど霜が少ない肉は、等級も低くなかなかいい値がつかない。
だから、せっかく育てた生産者が悲鳴をあげることもあります。
仔牛の値段は高騰し、飼料代、施設費もかかり効率の悪い職業になっているのが和牛肥育農家です。
でも、枯らし熟成では、赤身多めの和牛のほうがよいので、積極的に買い付けることができ、農家の方にとっても有意義な熟成テクニックだと私は思います。
熟成牛は、時間も手間もかかります。
けれど、和牛にさらなる付加価値をつけることができます。
私たち業者は、熟成肉をより多くの人に食べていただくことで、和牛のおいしさとともに、和牛農家のサステナビリティ(継続性)の大切さも伝えなければいけないと考えています。
これが、「格之進」の味を支える生産者への還元になればとてもうれしいことです。
だから私は、和牛に、そして枯らし熟成肉にこだわるのです。