熟成肉の格之進

2024年2月26日 第68回肉肉学会の概要

「オーガニックジャー黒!脱サラからの挑戦」 〜酪農経営が基盤だからできたオーガニックビーフ〜

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今回のゲストは、北海道江別市・株式会社Kalm角山:代表の川口谷仁さんです。

プレゼンする川口谷さん

全日本・食学会高岡副理事長の挨拶

川口谷さんは、東京板橋区出身。なんと、原田理事長と同じ中台中学の後輩にあたるそうです!川口谷さんは2000年に脱サラし奥様の実家である「関ファーム」に就農したものの小規模経営であったことから、酪農家5戸で「Kalm角山」を設立。2015年に稼働を開始しました。「Kalm」は英語では「Calm」ですが、オランダ原産というホルスタインに敬意を表してオランダ語の「Kalm」を採用したそうです。
Kalm角山(川口谷さん曰く、「すすきのに最も近い酪農場」)は、厳しい酪農環境を踏まえて、大規模化、ロボット化、循環型を目指した牧場です。搾乳ロボットを8台揃え(開場当時は最大の搾乳ロボット牧場)、搾乳牛頭数は約500頭です。搾乳ロボットは1台当たりで70頭程度の牛を完全自動で搾乳できるほか、乳成分などの様々なデータを計測してリアルタイムで牛の個体管理も可能になる優れものです(ハードナビゲーター)。

また、ふん尿はバイオガス発電し、消化液は畑に散布。地域のコカコーラ工場から得たコーヒー粕で牛の敷料(一般にはオガ粉を使用)とし、大豆カスなどは牛の飼料に利用するという循環型の牧場を実現しています。
川口谷さんは、この大規模な牧場を展開する一方、コストコからの「オーガニックミルク」製造要請を受けて、奥様の実家の関ファームでオーガニックミルクを製造することとし、2020年に「北のオーガニックファーム株式会社」を設立しました。

今日のお肉と肉おじさん

今回の勉強テーマである「オーガニックジャー黒」は、原田理事長が昨年秋に「北のオーガニックファーム」を訪問した際に発見した牛ちゃんで、この牧場で産まれたジャー黒のオス(母がジャージー牛、父が黒毛和牛)が子牛としての販売が難しいので、牛舎の片隅で搾乳牛のお姉さんたちと一緒に「オーガニック飼料」を食べていたのです。「ジャー黒は肉としては美味しいし、オーガニック飼料を食べているし、(当時)40ヶ月齢で旨味が増しているはずだし」と思った原田理事長は、その場で川口谷さんに肉肉学会での提供をお願いし、それが今日、実現したという訳です。
出荷時点で46ヶ月齢となったジャー黒ちゃんは、枝肉重量671kg!(黒毛和牛去勢平均で516kg)、肉質等級もB4(BMS 5)と立派に成長してくれました。

原田理事長と肉おじさんは、この牛を「奇跡の牛」と紹介しましたが、それは、ジャー黒・去勢・46ヶ月齢という希少性に加え、日本ではオーガニック認証牛乳を生産している牧場が十指にも満たないという現状にあるからです。欧米では普及している有機認証乳製品・畜産物自体が日本では「まれに見る製品」にとどまっているのです。

日本でオーガニック有機認証畜産物を生産しようとする場合、難しいのが有機認証飼料の調達と付加価値を付与した製品の販売です。有機認証飼料は、粗飼料であれば自ら所有する牧草地等で生産する牧草の認証を受けることが可能だとしても、穀物などの濃厚飼料は海外からの輸入に頼らざるを得ません(日本で有機認証の穀物が生産できたら食用に回しますよね)。当然、単価は高いしロットを大きくしないと分別管理で輸入すること自体が困難です。このため、国内での数少ない有機認証乳製品はグラスフェッドを選択するか、有機飼料の調達を乳業メーカーなど大手の取引先から供給してもらうなどの選択をすることになります。

北のオーガニックファームは、穀物(とうもろこし、大豆)については取引先が輸入品を確保し、粗飼料は北海道内の有機牧草生産者から購入しているそうです。このように乳牛と同様の高価な有機認証穀物を給与されていたのでB5という肉質と平均を大幅に上回る「枝肉重量を得ることが可能になったわけです(有機牧草だけでのグラスフェッドでは無理だと思います)。

こうした厳しい環境をクリアした北のオーガニックファームの生乳は、元々の生乳出荷先が「サツラク乳業」という、北海道で僅かな牛乳専門の乳業メーカーであることで、有機生乳の分別管理・工場としての有機認証取得が可能となりました。

飼料〜乳牛〜乳製品工場と3段階での有機認証を経て誕生したのが北のオーガニックファームのオーガニックミルク、というわけですね。

今回の「オーガニックジャー黒」は、と畜場も含めた有機認証を受けたわけではありませんが、北のオーガニックファームで生産される乳用種子牛の去勢牛や経産牛について、今後、有機認証を受けた牛肉としてのブランティングも可能であると思えわれます。楽しみですね!

川口谷さんのプレゼン資料の一部




本日のメニュー

〇 サーロインステーキ クレソンのサラダ添え

〇 ランプの低温調理
パルメザンチーズとバルサミコ

〇 ウチモモの味噌漬け焼き
MIXグリーンサラダ

〇 イチボのグリル
スネ肉のハンバーグ
ジャガイモのロースト

〇 ウチモモの牛丼
牛スジスープ

格闘中の遠藤シェフ

サーロイン

イチボ

参考文献


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