2023年5月16日 第60回肉肉学会の概要
消費者目線で挑戦!経産牛の夏山冬里方式 陽子牛の挑戦
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肉肉学会、第60回、還暦の回のタイトルは「消費者目線で挑戦!経産牛の夏山冬里方式 陽子牛の挑戦」です。
「陽子牛」とは、肉肉学会の常連さんでもある田中陽子さんが秋田県大仙市の繁殖農家の茂木洋平さんに預けていた90ヶ月齢の黒毛和種経産牛です。
茂木さんは、夏の期間は大仙市営の協和放牧場に牛を預け、冬の期間は牛舎の中で買う「夏山冬里方式」を行っています。「夏山冬里」は岩手県の日本短角種で用いられる飼育方式ですが、黒毛和種は通年、牛舎内で飼うことが多く一般的ではありません。茂木さんは、雄牛も同時に放牧して一部の雌牛は本交させているので、里に降りる頃には雌牛たちは妊娠しているのですが、昨年の10月に山から帰ってきた「よしすぎ」は妊娠していませんでした。既に5回の分娩経験があるよしすぎは、若い雌牛に「更新」されることになり、このまま「廃牛」として屠畜されるのが普通です。
しかし、この牛に出会ってしまった田中さんは、このまま屠畜場に向かわせるのではなく、冬の間、濃厚飼料ではなく粗飼料を給与する経産牛肥育を行い自らが買い取ることを茂木さんに提案し「陽子牛」と名づけました。茂木さんは、黒毛和種の繁殖牛70頭あまりの家族経営。祖父の代より100%地元産粗飼料(乾草、イネホールクロップサイレージ)で飼育している農家さんです。田中さんの提案受け、陽子牛の粗飼料として地元の「あきたこまち」を稲WCS(whole Crop Silage=ホールクロップサイレージ=稲の穂も葉も茎も一緒に収穫し乳酸発酵で保存性と嗜好性と消化率を高めた飼料)を給与して肥育牛として仕上げることにしたのです。
この稲WCSを提供したのが、薪燃コーポレーションの代表取締役 柴田 興明さん。こうして、放牧地で牧草を食べ、冬季の6ヶ月間を牛舎の中で稲WCSを食べた「グラスフェッド」陽子牛が誕生しました。
4月20日に屠畜した陽子牛は、A2という予想通りの格付(肉質等級の2はともかく、90ヶ月齢の経産牛で歩留まり等級がAは立派。無駄な脂がないということですね)。
田中さんは、クラファンで資金調達&同志を求め、経産牛の活用と国産粗飼料給与の意義を広めることとし、見事に目標をクリア。「肉肉学会」だけでなく、様々なイベントを通して消費者にグラスフェッドや経産牛の価値を訴えています。地元の秋田の畜産関係者や消費者の反応も上々で、今後、陽子牛2号、3号…と継続したいと意気軒昂です。
肉肉学会は、CSA(Community-supported agriculture)を活動目標のひとつとしていますが、「陽子牛」は、まさにCSAとして定着していくことに期待しています。
「よしすぎ」の枝肉断面
「よしすぎ」が2022年5月〜10月に預けられていた大山市営協和放牧場
サーロイン
本日のメニュー
〇 ナカニクコンビーフ
〇 シキンボ昆布締めとうるいのマリネ
〇 ランプ肉の低温調理 マッシュルームとベビーリーフのサラダ
〇 陽子牛ハンバーグ
〇 サーロインステーキ コシアブラのフリットと長いもソテー
〇 牛すじ煮込みごはん