熟成肉の格之進

2019年11月29日 第36回肉肉学会の概要

新しい生産方式への挑戦!黒毛和牛経産牛放牧「鏡山牧場」

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要約

「第36回肉肉学会」のテーマは、宮崎県延岡市・鏡山牧場「黒毛和牛の経産放牧牛」です。

高岡顧問の開会の挨拶
高岡顧問の開会の挨拶

鏡山牧場専務の八崎和則さん
鏡山牧場専務の八崎和則さん

「鏡山牧場」専務の八崎和則さんは、兄の秀則社長と広島で農業資材会社を経営してますが、8年前に延岡市に繁殖農家として農業参入。離農鶏舎で繁殖雌牛2頭から肉用牛経営を始め、5年ほど前に、現在の鏡山牧場(農協の育成牧場でした)を借り受けて、繁殖雌牛100頭規模の経営を展開しています。

家畜市場で購入した経産牛を繁殖用として再利用し、生産された子牛は地元の家畜市場で販売。繁殖利用を終えた経産牛を、鏡山牧場の65?の放牧地で肥育し、精肉・加工品として販売。今日のプレゼンをしていただいた和則さんは、営業担当として全国を飛び回っています。 

遠藤シェフから料理の説明
遠藤シェフから料理の説明

USHISOBAの堀井さん
USHISOBAの堀井さん

「経産放牧牛」の難しさは、個体のばらつきが大きいこと。今日の牛肉は8歳の経産牛で、2年間放牧した肉ですが、格付はC2、枝肉重量237kgの肉でした。赤身が美しく、お味の方も、参加者の評価が高いものでした。この品質をいつも保証できないことが、悩みのタネというわけです。

「放牧牛はそういうもの」と消費者や料理人の理解が進めば、多少の品質の変動は許されるのでしょうが、現時点ではそうもいきません。

鏡山牧場は、いっそのこと「一頭丸ごとミンチ」にしてハンバーグとしてだけ販売することも検討したけど単価が引き合わない、という次の問題にも直面します。悩みは多いようですが、鏡山牧場のチャレンジは大いに注目に値します。「総本家更科堀井」と「格之進」のコラボ企画「USHISOBA」は十割そば。

学びの概要

いい肉の日(11月29日)に開催された「第36回肉肉学会」のテーマは「黒毛和牛の経産放牧牛」。宮崎県延岡市の「鏡山牧場」専務の八崎和則さんを迎えて、「宮崎牛」ではなく、黒毛和種の経産牛を放牧肥育する取り組みについて学んだ。

八崎和則さんは兄の秀則さんと広島県大崎上島で建材店を営んでいたが、公共事業の削減対応して農業資材の会社を始めた。建材店を営みながらも「何かを作りたい」という想いがあり農業分野への参入となったそうだ(この会社「ヤサキ」は今も「鏡山牧場の関連会社」)。「ヤサキ」が土壌改良資材の販売等で軌道にのると、八崎兄弟の「違うことをしたい」という思いが募り、「農業をしたいが、素人が他の地域に入って農地を確保するのは難しい。畜産ならいいか」と周囲に相談するとみんなが大反対されたのが8年前。
かえって「みんなが反対するのならライバルも入ってこないから10年やればトップになれる」と牛飼いを始めることを決意。?
牛飼いなら宮崎に行こう、とは思ったが、都城は本場で隙がない、延岡市は旭化成の町だし、畜産の離農者が多いと聞いたのでチャンスがある、と延岡市を選んだ次第とのこと
縁も所縁もない土地で牛飼いを始める、という畜産業界を知っていれば「清水の舞台」的な行動を進め、離農した鶏舎で2頭の繁殖雌牛を飼うことから始まったのが、「鏡山牧場」の初手だった。もちろん、繁殖経営など初めてで、ユーチューブを「先生」に分娩に立ち会うようなことで苦労の連続。10アールのパドックで放牧を始めたものの経産牛を10数頭放した当日に脱走されるなど、散々な経験を重ねてきたそうだ。
ある日、延岡市内の観光牧場として有名な「鏡山牧場」(もともと農協が管理する育成牧場だった)が空いていると聞き、人と違うビジネスをしようと、標高650mに位置し、放牧地65ヘクタールを有する「鏡山牧場」を借りて「黒毛和牛経産牛の放牧肥育」を始めることとなった。

現在は、親子で100頭の黒毛和牛を放牧している(冬期間は牛舎内で牧草のロールサイレージを給与)。家畜市場で経産牛を購入し、出産可能な牛は繁殖を試みて子牛を生産し、繁殖利用が困難な牛は肥育に回すという飼育方法なので、子牛の販売収入と、経産牛の牛肉としての販売収入が「鏡山牧場」の売り上げとなる。

飼育管理は、生産担当として兄の秀則さんが牧場に常駐し、宮崎大学出身の女性獣医師2人が分娩管理等を担当。「牛恩計」の導入で発情・分娩感知を効率的に行うことで繁殖事故を大幅に削減できた。本日、プレゼンしていただいた和則さんは営業担当として、「放牧経産牛」の販売に飛び回っている
現在は、精肉より加工品(ローストビーフ、ビーフジャーキーなど)が主体だ。

鏡山牧場は傾斜地が多く、放牧地は野芝とススキが主体であり、生産性は低い。最も大きな悩みは、個体差が大きいことで、今日の牛肉の質が良くても、この次に提供できる牛肉の品質を保証できない。いっそのこと、牛一頭をまるごとミンチにするような事業も始めたいが、ロースやヒレまでミンチにすると、希望する販売単価が高すぎて、商売にならないのが悩ましい。

八崎さんのユーモアたっぷりのプレゼンを伺っていると、あまり苦労を感じないが、「黒毛和牛の経産放牧牛」というレアな商品を、加工、精肉として販売し、どのようにブランド確立していくのか、発展途上であると感じたが、八崎兄弟の「挑戦」は、今後の黒毛和種のみならず、日本の牛肉生産と土地利用に、新しい風を吹かす事業として大いに注目していきたいと思ったところである。

本日のメニュー

1 ウチモモの生ハム 〜ブレザオラ〜

ビーフジャーキー(鏡山牧場さんの差し入れ)

2 チョップドサラダ

3 内モモのローストビーフ

4 サーロインステーキ

5 出来たてソーセージ

6 ネックとすね肉のハンバーグ

7 ランプの炭火焼き

8 USHIISOBA


今日のお肉は8歳の黒毛和種経産牛。2年間の放牧肥育。格付けはC2。枝肉重量237kg。


「出来たてソーセージ」の出来たて


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