熟成肉の格之進

2017年3月8日 第10回肉肉学会の概要

熟成肉とチーズとワインの相関関係の探求

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要約

第10回肉肉学会のテーマは、「熟成肉とチーズとワイン」。
いずれも「発酵」により美味しさが増す食品。特に日本のナチュラルチーズが生産量、種類とも増加し、その品質も国際的なレベルに育っている中で、熟成肉とチーズを合わせるとどんな化学反応が起きるのだろうか、と科学的探究心を刺激されたわけである。
また、普段の「肉肉学会」ではアルコール類は随意となっていて、参加者が持ち込んだり、お店の飲み物を個別に注文したりしているが、今回は、熟成肉とチーズのマリアージュの相手に、南澤ソムリエがワインをチョイスした(もちろん、参加者の持ち込みも自由である)。
今回のお客様は、栃木県の那須高原今牧場チーズ工房の高橋雄幸さん。高橋さんは同じくチーズ製造をされている奥様・ゆかりさんと、ご夫妻で「ギャルド・エ・ジュレ」1という称号を授与されている。高橋さんご夫妻が作るチーズは、国内の数々のチーズコンテストで優秀な成績を修め、我が国を代表するチーズ工房となっている。特に特徴的なのは、雄幸さんが主にヤギ乳のチーズを、ゆかりさんが牛乳のチーズを作りバラエティなラインナップを持っていること。今回は、季節柄、ヤギ乳のチーズは生産シーズンの前と言うことでトライできなかったが、牛乳のフレッシュチーズとウォッシュチーズを使用させていただいた。

高橋雄幸さん
南澤ソムリエと遠藤シェフ

国産ナチュラルチーズの概要と今回のチーズについて

① 国産ナチュラルチーズ

現在、国内では280を超えるナチュラルチーズ工房が設立されている。そのほとんどは、個人が設立し、チーズ製造をしている小規模工房で、酪農家がいわゆる六次化の試みとして、牧場内に設置している工房が多い。チーズは図「牛乳乳製品の製造工程」で示すように、生乳(酪農場で乳牛から搾られた乳で、殺菌前の状態)に乳酸菌や酵素(レンネット)を加えて、タンパク質であるカゼインを分離した「カード」を熟成させることで作られる乳製品であり、生乳の種類、乳酸菌やカビ等の種類、熟成期間等により多種多様な種類が生産される。
我が国で製造されているナチュラルチーズも多種多様にわたるが、消費者の嗜好等から、フレッシュ系、白カビ系、セミハード系のチーズを製造する工房が多い。
一方で、経験豊富なチーズ工房では、ウオッシュ系、青カビ系など、日本の消費者が「クセがある」と敬遠してきた種類も、消費者の嗜好にマッチした穏やかなテイストを実現するなどしてファンを増やしている。

② 今回のチーズ

今回の肉肉学会では、熟成肉と国産ナチュラルチーズとの初めてのマッチングを研究するために、ウオッシュ、青カビ、ラクレットなど、肉料理とのうま味の相互作用が期待できるチーズで、国内的にも評価の高い工房のチーズをチョイスした。

〇那須高原今牧場チーズ工房
・ゆきやなぎ(塩入り/塩なし)
・りんどう(ウオッシュ)
 第10回ALLJAPANナチュラルチーズコンテストで審査員特別賞を受賞

〇アトリエ・ド・フロマージュ 
 長野県東御市を拠点に軽井沢、東京南青山でチーズ料理のレストランも経営
・ブルーチーズ
 フランスで開催されたチーズ国際コンクールで「スーパーゴールド」受賞

〇十勝品質事業協同組合
日本チーズの新しい取組として、十勝の6工房が「型入れ」まで行った「グリーンチーズ」を受け入れて「共同熟成」2を行う工房
・十勝ラクレットモールウオッシュ

③今回のワイン

南澤ソムリエがチョイスしたワインは次の通り。
・Cremant d`Alsace Domaine Rifl  ピノブラン100%
・Cteau Bourguignons Domanine Pillot ガメイ80%、ピノノワール20%
・Ctes du Rhne Valvigneyre Maison Paret  シラー100%
・Bouegogne Chardonnay les Chazots Domaine Bonnard  シャルドネ100%

本日のメニュー

【りんどう】
温かいグジェール 熟成肉のコンビーフ  (写真1)
可愛く美味しく薫り高い一品

【十勝ラクレット】
フライシュケーゼ(写真2)

【ブルー】
熟成肉の生ハム入りケークサレ  (写真2)

【ゆきやなぎ(塩入り)】
トマト、サニーレタスと熟成肉すね肉のゼリー寄せ  (写真3)
驚きのマリアージュ!

【りんどう、ブルー、ラクレット】
 熟成肉すね、骨付きミスジ、Lボーン  (写真4、5、6、7)

【ゆきやなぎ(塩入り)、りんどう、ブルー、十勝ラクレット】
 熟成肉の骨とすじ肉からとったスープで炊いたリゾット  (写真8)

【ゆきやなぎ(塩なし)
 クレームダンジュ  (写真9)

【りんどう、ブルー、十勝ラクレット】
ベイクドチーズケイキ  (写真9)

写真1 温かいグジュール
写真2 十勝ラクレットのフライシュケーゼ、ブルーチーズのケークサレ
写真3 ゆきやなぎと熟成肉すね肉のゼリー寄せ
写真4 熟成すね肉と骨付きミスジのグリル
写真5熟成肉のグリルに載せた十勝ラクレット
写真6 十勝ラクレット、ブルーチーズ、りんどう
写真7 門崎熟成肉のLボーンのグリル
写真8 熟成肉の骨とすじからとったスープで炊いたリゾット
写真9 ゆきやなぎ(塩なし)のクレームダンジュ

参考文献

那須高原今牧場 HP
アトリエ・ド・フロマージュ
十勝品質事業協同組合 HP
国産チーズの状況(農林水産省)
各地で活躍するチーズ工房の例とチーズの種類
ナチュラルチーズの知識(一般社団法人中央酪農会議)
日本のナチュラルチーズ工房リスト(一般社団法人中央酪農会議)
ALLJAPANナチュラルチーズコンテスト(一般社団法人中央酪農会議)

格之進 HP

脚注

1 ギャルド・エ・ジュレ
「ギルド・デ・フロマジェ エ コンフレリー・ド・サントュギュゾン協会」(現在会員数は世界33カ国、3500人、会長:ローラン・バルテルミー)が授与する「会員資格」で日本では10人ほどしかいない。
「ギャルド・エ・ジュレ(Garde et Jur)」は、乳からチーズを加工する乳製品関連農業団体あるいは工場に従事し専門適格を有する管理者および従業員、卸業務あるいは小売業務において製品の選定をできるチーズ専門職、その目的にあった自らの場所で選定および熟成をおこなった高品質チーズを陳列できる商品棚を有する食料品販売業者、は資格申請を行うことができる。チーズ選定および熟成の場所は最低二年間、場所が移転された場合はさらに一年間を経過したものとする。また、チーズ保存のための場所を有するものとする。

2 共同熟成
フランスなどでは、必ずしも一戸の農家(あるいはチーズ工房)がチーズ製造の全工程を賄うわけではなく、生乳からカードを分離して型枠入れまでを行い(この段階をグリーンチーズという)、後の工程を専用のチーズ工場で行ったり、共同の熟成庫に持ち込んで、専門の「チーズ熟成士」に管理を委ねたりするケースもある。

「地域認証ラベル」を持つチーズでは個々のチーズ工房ではなく、地域のチーズとして共通の規則でチーズを製造するので、共同熟成による品質の均質化は重要な工程であり、農家にとっては、グリーンチーズとして早い段階で販売する方が経営上にリスクが小さいという、双方の利点がある。「十勝品質事業協同組合」はこのような「分担化」の魁けである。
(写真:ラクレットウォーマーと千葉さん)

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