2019年10月31日 第35回肉肉学会の概要
土佐・本川 献上 手箱きじ
- カテゴリ
-
要約
「第35回肉肉学会」のテーマは、高知県いの町「本川手箱きじ生産企業組合」の「手箱きじ」です。
稲見副理事長の挨拶で開会。
「本川手箱きじ生産企業組合」代表の山本周児さん
「手箱きじ生産企業組合」代表の山本周児さんは、もともとは地元の建設会社を経営されていましたが、農家が協同で経営していた「手箱きじ生産組合」が立ち行かなくなったため、地元の企業として「きじ生産」に取り組むことになったそうです。とはいえ、きじについては、全くの素人だったので、農家の方の技術を引き継ぐとともに、加工・販売方法等にも工夫を重ね、土佐藩時代に殿様に献上したという歴史ある「手箱きじ」としてブランド化を進めています。
「養殖きじ」の難しさは、きじそのものの生産効率が悪いことです。ブロイラーはもちろん、地鶏や豚よりも生産効率が劣ることから、牛肉生産並みの飼料効率となっています。また、鶏のように周年、卵を産むわけではない上に、出荷まで240日程度かかるので、春に生んだ卵を孵化、雛育成、成鳥として出荷するのは12月〜3月の限られた期間になります。現在、2年飼育する試みも始めています。
また、今回の「手箱きじ」では、「焼き鳥陀らく」の薮内孝志さんが、きじの「捌き」と「焼き」を担当してくださり、きじとブロイラー(鶏肉)との肉や骨、腱の付き方の違いなどを学ぶこともできました。
「総本家更科堀井」と「格之進」のコラボ企画は「USHISOBA」ならぬ「KIJISOBA」ですが、鴨とは異なるとはいえ、当然、きじ肉はそばに合いそう。あっさりスープに肉団子+更科の王道そばでした。
特別ゲスト「陀らく」の薮内孝志さん
〆の挨拶は藤井理事から。
学びの概要
ハロウィンの夜に開催された「第35回肉肉学会」のテーマは「土佐 本川『献上 手箱きじ』」。高知県いの町本川地区の「本川手箱きじ生産企業組合」代表の山本周児さんを迎えて、肉肉学会初めての「きじ」だ。
山本さんをお招きしたきっかけは、今年9月に原田理事長と、藤井理事、千葉事務局長が、原田理事長が活動している「熱中小学校」の高知県越知町で開催された「越知ぜよ!熱中塾」にお邪魔した際の山本さんとの出会い。
山本さんご自身は越知町の隣町いの町で養殖きじ「手箱きじ」を生産されているが、その熱い思いを語るために、越知町まで我々(肉肉学会トリオ)に会いに来て下さった。
その熱いハートにびびっと反応した肉肉学会トリオは、予定になかった「手箱きじ」見学ツアーを組み、山本さんの案内で山里に分け入り、綺麗な環境で飼育されるきじに対面して感動!ぜひ、肉肉学会のテーマとして取り上げようと準備してきたというわけだ。
きじというと野生であるジビエを想像される方が多いと思うが、「手箱きじ」は養殖きじ。日本での「養殖きじ」の生産者は少ないが、通常、食用と狩猟用の放鳥にされる「ニホンキジ」と食用の「コウライキジ」に大別される。コウライキジは在来のニホンキジがいない北海道と対馬以外では放鳥できないため、また、ニホンキジより体が大きいため食用が主体となる(コウライキジより体の大きい「シベリアキジ」を飼育している生産者もいるようだが詳細は不明)。
今回は、「陀らく」の薮内さんが手箱きじの捌きと焼きを担当してくださり、遠藤シェフとの共演が実現した。薮内さんは「陀らく」でホロホロ鳥を扱っているがが「全ての鳥を経験したい」と、今回、自身のお店を閉じてまで参加していただき感謝です!ブロイラーと手箱きじを解体しながらの薮内さんの語りを堪能できるという贅沢な経験!に参加者も大満足であった。
手箱きじが生産されるいの町本川地区は前述したように山懐に抱かれた自然豊かな山村で、約4000羽を飼育している。山本さんが語る手箱きじへのこだわりとは、
1.豊かな自然環境: 標高700mで寒暖の差が大きく、吉野川の源流に近い豊かで美味しい水に恵まれていることが健康なきじ飼育に結びつく。
2.放し飼い:ゆとりあるスペースで平飼いし、止まり木も設置して3次元利用。
3.こだわりの餌:配合飼料のほか、野菜や果物を給与することでミネラルバランスが良くなるほか、野菜の皮などを突っつくことでストレス解消になる。
4.細やかで熱い思い:ストレスが最大の敵なので、1年に1回砂の入れ替えをするなど、快適な環境に配慮。
このような飼育方法なので、手箱きじは、ブロイラーに比べ非常に生産効率が悪い。
例えば、
1. 飼育期間約240日1.2〜3kgで出荷。 5-6羽/平米の放し飼い。飼料要求率(1kgの増体に必要な飼料の量)は10(和牛11、ブロイラーは2以下)、
2. 孵化から出荷までの飼育が難しい(孵化率60%,育成率50%→商品化率30%)。
一方で、カロリーは鶏肉の半分、和牛の1/10でミネラルが多いという特徴がある。
本日のきじは240日飼育なので、ブロイラーの5倍弱の飼育期間を要している。
最初の料理は「鳥山’sコンビーフ」。これは特別提供の料理で、茨城や栃木のセブンイレブンで買える「コンビーフバーガー」の生みの親、鳥山雅庸さんが生産されるコンビーフ。セブンで買えない東京のお客さんのためのサービス。
2皿目は「レバーコンフィと砂ずりのフライ」。3皿目は「銀皮入りチョップドサラダ」。「銀皮」は「砂ずり」の皮。そして「HALLOWEENスープ」はカボチャのスープ。
そして、「陀らく」の薮内さんによる「きじ焼き4種」ハツ(ホースラディッシュ)、ムネ(スダチとゆず)、モモ(柿)、手羽(黒酢と醤油)。手羽一本、って鶏ではありえない。 遠藤シェフ渾身の「栗ごはんを詰めたきじロースト まるごと白芽芋のオーブン焼き」。「白芽芋」は、いの町特産の里芋のこと。
本日の「堀井格之進」のコラボそばは、当然「KIJISOBA」。きじの肉団子が入った更科そば。
本日のメニュー
レバーコンフィと砂ずりのフライ
銀皮入りチョップドサラダ
ハロウィンスープ
きじ4種焼き
ハツ(ホースラディッシュ)、ムネ(スダチとユズ)、モモ(柿)、手羽(黒酢と醤油)
栗ご飯を詰めたロースト まるごと白芽芋のオーブン焼き
カット前
きじ鍋
KIJISOBA
手箱きじとブロイラー(解体前と解体後)
山森野豚の肩ロースとロース
きじ焼きの串打ち
栗ご飯を詰めたきじ
参考
コウライキジ
手箱きじ養殖の様子
きじ焼きの串打ち
栗ご飯を詰めたきじ
「手箱きじ」の飼育舎
参考文献
きじトリオ(遠藤シェフ、山本理事長、薮内さん)