熟成肉の格之進

2017年10月21日 第13回肉肉学会の概要

雄子山羊肉とジャージー雄子牛

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要約

第13回肉肉学会のテーマは、「雄子山羊肉とジャージー雄子牛肉」。
第12回肉肉学会では「磯沼ミルクファームのジャージー未経産牛」を取り上げたが、ジャージーは搾乳量はホルスタイン種より少ないものの、乳脂肪率の高さや放牧に伴う独特の風味があることなどから、チーズをはじめとした乳製品としての評価が高く、酪農家戸数・乳牛飼育頭数が全体で減少している中で、ジャージーはここ数年横ばいとなっている1
また、ヤギについても、食用としてのヤギ肉の消費は沖縄や奄美など伝統的なヤギ食文化のある地域に限定されますが、各地でヤギ乳を原料としたチーズ(シェーブル)を製造する工房2も増加している。
こうしたなかで、ジャージー種も乳用ヤギも、その雄子畜については「副産物」であることから酪農家で育成することは希で、肉資源としてはほとんど活用されていない。
今回のテーマはそうした「低利用資源」を、ヤギについては、春生まれの子山羊肉として、ジャージーについては、生まれてからミルクだけ給与した「ミルクフェッド・ヴィール(子牛肉)」として味わい、その可能性を研究するというもの。
今回のお客様は、ヤギ肉が「那須高原今牧場チーズ工房」の高橋雄幸さん、ミルクフェッド子牛肉を那須町「森林ノ牧場」の山川将弘さん。

写真左:高橋雄幸さん、写真右:山川将弘さん

牧場の概要

① 今牧場チーズ工房(ヤギ部門)

今牧場チーズ工房では、牛のチーズとヤギのチーズを製造しているが、ヤギのチーズは高橋雄幸さん担当。
今牧場チーズ工房の搾乳用ヤギは20〜25頭。このほか、雄ヤギと子ヤギがいるので、分娩後のヤギ舎は賑やかである。ヤギは牛と異なり季節繁殖・生産なので、子ヤギが生まれ始め2月頃から搾乳が始まり、秋には終了となる。このため、フレッシュチーズが主体の工房では山羊チーズ3も3月頃から11月頃までの製造・販売となる。
なお、ヤギの乳頭は2本(牛は4本)なので、ミルカー(乳頭に装着して搾乳する装置)はヤギ専用の使用し、写真のように後ろから搾る。
牧場で生まれたヤギのうち雌は搾乳用に育成するが、雄は1歳未満で買い手がつけば残すことになる。現在は宇都宮のレストラン等に販売することもある。この日提供していただいたヤギは3月に開催した第10回肉肉学会(熟成肉とチーズの研究)にプレゼンしたくれた高橋さんに、翌年生まれる予定の雄子ヤギについて「売約」していた2頭である。
なお、今回は「子ヤギ肉」のほか、ヤギのチーズの「朝日岳」、「茶臼岳」、それと販売していない「秘密のチーズ」4も提供していただいた。

② 森林ノ牧場

「森林ノ牧場」は、我が国でも数少ない、放牧を基本とした酪農場で、かつ林間放牧的5な手法をとっていることも酪農では珍しい。また、飼育している牛の全てがジャージー種であることも数少ない形態(岡山県の蒜山のように地域全体でジャージー種を飼育している例は僅かながらあるが)。
「森林ノ牧場」はジャージーを放牧飼育するというスタイルを最大限に活かすため、自ら牛乳、ソフトクリーム等の乳製品を製造販売している。ジャージー種の生乳をそのまま出荷すると他の牧場が生産した生乳と同じタンクローリーで輸送するため、ジャージー種の特徴が活かせないためである。
また、代表の山川さんは「大の乳製品製造好き」なので、ジャージー種の生乳で乳製品を製造すること自体が好きで、この道を選んだとも思える(苦労の多い道だと推察するが)。
「森林ノ牧場」では生産される生乳の全てを、乳製品に自家製造し、搾乳を終了した経産牛も直営レストランで料理として提供している。ジャージー雄子牛については、首都圏のレストランに「ミルクフェッド・ヴィール」として販売しているが、飼育規模が小さいので、雄子牛の販売も年に数頭程度である。

③今回の肉と乳製品

ア:
今牧場の雄子山羊肉は、生後6か月半のもので、うち1頭は去勢がうまくいってなくて「タマ付き」だった。結果的に「タマ」も食する機会ができて良かったが。出席者からは、「覚悟していた」ヤギっぽいクセがないとのことで好評だった。
また、今牧場からはヤギのチーズを3種、提供いただいた。フレッシュチーズ「朝日岳」、シェーブルタイプのチーズ「茶臼岳」と試作品であるセミハード系チーズ「秘密のチーズ(3か月熟成)」、牛乳製の7か月熟成チーズ(ラクレット風)である。

イ:
森林ノ牧場
「森林ノ牧場」のジャージー子牛肉は、生まれてから出荷までミルクだけを与えた「ミルクフェッド・ヴィール」。ミルクと言っても生乳だけ飲ませていてはコストがかさむので、ミルク、粉ミルク、ソフトクリームミックス、ヨーグルトの廃棄もの、ホエーなど乳製品製造の過程で出てくる商品にならないものを使用している。通常、生後50〜100日、枝肉重量で25〜40kgで出荷しているとのこと。今回の子牛は生後56日、枝肉重量30kgのミルクフェッド・ヴィールである。
なお、乳製品の方は「搾るヨーグルト」(マヨネーズのようなチューブケースに入れたヨーグルト。トッピングなどに適した容器になっている)と「キスミル」(生乳から脂肪分をとったあとの「無脂肪乳」を使用した乳酸菌飲料。小規模でバターを製造する際に、無脂肪乳を使用した乳製品を作るという発想から生まれた商品)。

本日のメニュー  (〇はジャージー関係、●はヤギ関係)

〇 ジャージー牛乳
● 朝日岳のカナッペ(写真1)
● 玉ソテー(写真2)
● ホルモンソテー(レバー、肺、食道等)with茶臼岳(写真3)
〇 発酵バター生地のパイ子牛のヒレ肉包み(写真4)
〇 ホルモンのトマト煮込み(小腸、センマイ、ミノ、ハチノス等)(写真5)
● 骨付きモモ肉ロースト(写真6、7)と秘密のチーズ(写真11)
● 骨付き肉と野菜の蒸し煮(写真8)
〇 ジャージー牛のグリル(写真9)
〇 クリーム煮と発酵バターライス(写真10)

上:ジャージー子牛
中:7か月熟成チーズ
下:子ヤギ肉
子ヤギの内臓:左から、気管、食道、肺、レバー、腎臓、ハラミ、サガリ。
キスミルと搾るヨーグルト
朝日岳
茶臼岳

参考文献

森林ノ牧場HP
那須高原今牧場チーズ工房HP

格之進 HP

脚注

1 ジャージーの飼育頭数と戸数
ジャージ種雌牛の飼育頭数は11千頭を若干下回る水準で、飼育戸数は1470戸前後で推移。頭数が多い地域は北海道、岩手、岡山、栃木、熊本など。

2 ヤギチーズ工房
我が国のチーズ工房の多くは牛乳のチーズを製造しているが、最近は品質の高いヤギのチーズを製造する工房が徐々に増加している。今牧場チーズ工房を始め10を超える工房が北海道から沖縄まで、各地に存在する。

3 ヤギの乳から作るチーズを「シェーブル」と呼ぶ。シェーブルの独特の風味は「カプロン酸」「カプリル酸」などのヤギ乳に含まれる脂肪酸によるもの。

4 「秘密のチーズ」は今牧場チーズ工房が試作しているハード系のチーズで、熱を加えることで、シェーブルのクセが抜けて食べやすくなる。現在ではヤギ乳の生産量に限りがあるので、熟成期間が長いハードタイプのチーズを量産することは難しく、商品化の見通しはたっていないとのこと。

5 放牧を基本とする「森林ノ牧場」は東日本大震災時の原発事故による放射性物質のフォールアウトの影響を受け、除染作業を余儀なくされた。

写真

1 朝日岳のカナッペ
2 ヤギの「玉」ソテー
3 ヤギのホルモンのソテーwith茶臼岳
4 発酵バター生地の包みパイ
5 子牛ホルモンのトマト煮
6 骨付きモモ肉のロースト
7 骨付きモモ肉のロースト(カット)
8 骨付き肉と野菜の蒸し煮
9ジャージー牛のグリルに7か月熟成のチーズ
10子牛肉のクリーム煮と発酵バターライス
11 ヤギ乳の秘密のチーズ(3か月熟成)

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