2023年6月5日 第10回乳乳学会の概要
「新利根チーズ工房」
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2023年6月5日
全日本・食学会乳乳学会研究会
乳乳学会理事会
格之進F
「第10回乳乳学会」のテーマは「新利根チーズ工房〜常陸国の放牧チーズ〜」です。
戦後の利根川開拓地に開設された「新利根協同農学塾農場」。開拓者たちの意気込みと理念が継承されたこの牧場で、放牧酪農を展開しているのが上野裕さん。関東では珍しい放牧風景に心癒されます。そんな上野さんの理念をチーズというかたちにしたのが、農場内に「新利根チーズ工房」を開設した西山厚志さん。今日は。放牧酪農家とタッグを組んだチーズ工房を展開する西山厚志さんをお招きしました。
西山さんは、放牧酪農の生乳をそのまま利用できるメリットを活かして、フレッシュからモッツァレラ、白カビ、セミハード、ウオッシュと12種類のチーズをワンマン製造しており、新利根チーズ工房を開設して5年半を迎えました。
まずは西山さんのプレゼンから。
西山 厚志さん
何もかもひとりでやっている工房なので規模は小さくて、生乳処理量は400〜500kg/月。チーズの製造、カット、包装、販売、セールスなど様々な作業があるので、チーズの製造日数自体は4日程度/週。最初は3種類しかなくお客様をガッカリさせたが、現在扱うチーズは12種類になった。
この5年半を振り返ると失敗の連続。共働学舎での修業時代に習ったラクレットを作りたいと思い、チーズバットでない寸胴鍋でも製造の理屈さえ合っていれば出来るでしょ、とタカを括っていたけど実際には出来ない!という苦しみ。
そうこうしているうちに、地元酒蔵の社長から新商品開発のオファーを受けたのでラクレット試作を後回しにして、日本酒を使ったウォッシュチーズの製造にチャレンジ。修行時代に見ていたから簡単でしょ、とタカを括って作ったけど出来ない!
稲光&暁富士では二次発酵による膨張問題も発生。は、金欠のピークだったので懐具合は厳しく、「膨らんじゃったチーズ」という名で格安販売したこともありました。しかしこれは職人としての矜持が許さない。この頃から一人の限界を感じ始めた。『 チーズ工房を始める人にとって、実はこれがいちばん大事なこと』というのは、1位がパートナー、2位は「その他」と。
今後の目標は、ソロプレイヤーの限界を目指して「一人でもチーズ工房はやれる」という個人的かつ壮大な実証実験を完遂する。そして、やはり、チーズコンテストで入賞して壇上に立ちたい。それと一般社団法人 日本チーズ協会の活動、とのことでした。
遠藤シェフ
○【勝馬蹄】
白霞の生地を馬蹄の形に整え、竹炭をまぶして表皮を白酵母で覆ったソフトチーズ。
○【暁富士】入りソーセージ
ハードタイプ、約10ヵ月間熟成。
新利根チーズ工房において、最長の熟成期間を持つ商品である。
○【白霞】とキムチのトルティーヤサンド
酸凝固タイプ、約1週間熟成。
表皮に生えている白いフワフワしたものは白カビではなく、ジオトリカムという酵母の一種。組織の滑らかさを作り出すことに貢献している
○さけるチーズ【龍雲】のグリーンサラダ
フレッシュチーズ、パスタフィラータタイプ。和テイストなさけるチーズ。
フレッシュなさけるチーズを(有)清原醤油醸造店(茨城県 龍ケ崎市)のめんつゆに漬け込んで、味に深みを出している。
○グリル野菜とハンバーグの稲敷ラクレット【稲光】がけ
ウォッシュタイプ(食感はセミハード)、約2〜3ヵ月間熟成。表皮のオレンジ色は、リネンス菌という枯草菌の一種(納豆菌と同じ仲間)によるもの。
○熟成肉ステーキの【常陸晴】ソース
白カビタイプ(食感はハード)、約3ヵ月間熟成。熟成前期は見事な白カビに覆われ、白カビタイプに特有のキノコのような香りが漂うが、熟成中期には白カビが減退し始め、熟成後期にはすっかり白カビが剥げ落ちて、見た目はハードチーズのような姿になる。
○チーズリゾット
○【月利根】のチーズケーキ
ウォッシュタイプ、約6週間熟成。直径10?程度。表皮のオレンジ色は、リネンス菌という枯草菌の一種(納豆菌と同じ仲間)によるものであり、納豆やぬかみそ漬けと同じクセのある香りがただよう。
本日のメニュー
〇【勝馬蹄】
〇【暁富士】入りソーセージ
〇【白露】とキムチのトルティーヤサンド
〇さけるチーズ【龍雲】のグリーンサラダ
〇グリル野菜とハンバーグの稲敷ラクレット【稻光】がけ
〇熟成肉ステーキの【常陸晴】ソース
〇チーズリゾット
〇【月利根】のチーズケーキ
熟成肉ステーキを焼く遠藤シェフ