熟成肉の格之進

2019年3月21日 第28回肉肉学会の概要

赤城牛・鳥山畜産の哲学に学ぶ

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第28回肉肉学会の概要

「第28回肉肉学会」のテーマは「赤城牛・鳥山畜産の哲学に学ぶ」。

「鳥山畜産」は来年で操業60周年を迎える群馬県のみならず日本でも有数の「肉用牛一貫経営牧場」です。子牛を外部から購入して肥育するスタイルから、繁殖雌牛も所有して子牛を産ませ肥育するという一貫経営に移行し、現在は黒毛和牛の雌牛400頭、全体で1500頭という規模になっています。

今回は「鳥山畜産」の規模拡大だけではない、「一貫生産」に伴うブランド化戦略、輸出戦略、独自の和牛の改良、「うまみ」の評価と「見える化」などなどを学びました。
その経営戦略は「Toriyama ONLY ONE」という言葉に集約されます。そのための実践が「牛肉を売り切るまで全て自社で手がける一貫生産」「「味の見える化活動(味マップ作り)」「外さない牛生産」「遺伝子解析」「ロースを作らない海外輸出」なのです。

また、ちょうど、この日に「JGAP」の認証を取得されたそうで(関東地方で初めての肉用牛GAP)、そのお披露目の場にもなりました(オリパラ食材の調達を任せられている「全日本・食学会」の高岡副理事長はこの話を聞いて大喜びでした)。


高岡顧問(全日本・食学会副理事長)


鳥山真・鳥山畜産代表

ニューヨーク店オープンを控える「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ「堀井格之進のUSHISOBAのお題はバラ肉。バラ肉を生姜とあまだれで炊いて、木の芽たっぷりの関西風に。


肉おじさん・格之進の千葉祐士代表


鳥山さんのプレゼン

学びの概要

赤城和牛と肉おじさん、藤井理事

「鳥山畜産」は群馬県の地域ブランド「赤城和牛・赤城牛」1の中心的な生産者として、長く地域の肉用牛生産をリードされてきました。現在でも「赤城和牛・赤城牛」ブランドでの生産も継続されていますが、黒毛和牛の子牛生産から肥育、牛肉の販売まで全て自社で行うウェイトが増してきており、個人ブランド「はぐくみ赤城和牛」2を展開しています。


1. 経営の一貫化

繁殖雌牛の飼育から子牛生産、肥育まで一貫化することで、雌牛の放牧による健康増進効果、子牛が家畜市場に出荷されず牧場内で飼育継続することによるストレス軽減など、美味しい牛肉を作るための「ストレスフリー」な環境下で生産することが可能になりました。

また、通常は31〜32か月齢で出荷していますが、一貫生産により自由度が高まったことで、顧客の求めに応じて、雌の42か月齢での出荷などもできるようになったとのことです。

鳥山さんの牛肉生産は「美味しい、また食べたい」と顧客に言ってもらえる牛肉を作る、そのためには「最適なタイミング・状態で提供できる」という自社販売の強みを活かして「美味しさの新基準」である「味マップ」3を独自に作ることにしました。

また、一貫生産であるということは、「良い子牛を家畜市場で選んで買ってくる」ということができないので、自社の雌牛から生まれる子牛を「外さない牛肉」に仕上げること、「顧客の「ゾーン」に居続ける肉を作ること」が大事になるそうです。

2. 味の「見える化」

「味の見える化」は2010年から取り組まれ、「脂質の評価」と「赤身肉の評価」を独自に分析しています。

「脂質の評価」は「食肉脂質測定装置」を用いて全ての出荷枝肉のオレイン酸、一価不飽和脂肪酸などを測定し、「赤身肉の評価」も全ての枝肉について、「味覚センサー」4を用いて「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「旨味」を「チャート化」し、「うまみ軸でみる牛肉のおいしさ」として「味マップ」を作成しています。

こうした作業を通じて、格付けだけでない枝肉出荷情報の収集を行い、牛肉として外れのない「安定スコア」の牛肉生産を目指すとのことです。

見た目や格付や流行に惑わされない食味の追究は、「一貫経営化」ゆえに実現できることだと思われました。

3. 遺伝子解析による「牛づくり」

「2」により「外れない肉質」を安定的に生産する目標を達成するためには、「外れない肉質」となる血統交配による「牛づくり」が欠かせません。一般に牛肉の味は血統7割、飼料(環境)3割と言われていて、特に脂肪交雑の追究には但馬系を中心とした血統をもつ子牛を肥育することが早道です。しかし、鳥山畜産は、食味結果に基づき「1頭当たり脂肪含有量50%」を交配目標に、枝肉データをクラウド化した「生産カルテ」を用いて交配結果を分析し、「外れない再生産、外さない血統交配」を実現するため遺伝子解析5を実施しています。このため、交配用の凍結精液を購入するだけでなく、自ら種雄牛を飼育して本交による子牛生産も行っている(「本交」は受胎率が良い、という効果もあり)。

4. 海外輸出

鳥山畜産では、3月に米国カリフォルニア、サンフランシスコ、ロサンゼルスで「ロイン系を使わない和牛肉のプロモーション」を行ってきたばかりで、現地では大変好評だったとのことです。鳥山畜産の和牛肉は既にシンガポールへ輸出しており高評価を得ており、すき焼きをサルサソースやトマトソースで提供するなど工夫した販売をしているそうです。鳥山畜産の輸出用牛肉は「うまみ和牛」という自社ブランドで展開しており、今後は他の生産者とも組んで「協力生産者グループ」による輸出に取り組んで行きたいとのことでした。

なお、本日の牛肉は、
1. 熟成肉6:31か月齢・去勢のランプとイチボ(骨付き60日熟成)
2. 非熟成肉:33か月齢・去勢のランプとイチボ(と畜後4週間)
となっています。

USHISOBA
「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ企画「牛そば」。
今回は「牛のバラ肉のあまだれそば」。バラ肉と生姜をあまだれで炊いて、重めのおつゆに、木の芽をたっぷり入れたそばです。


本日のメニュー

〇 シャルキュトリの盛り合わせ(写真1)
〇 牛ハツ入りパテドカンパーニュ(写真2)
〇 岩手・八幡平のほうれん草のシーザーサラダ(写真3)
〇 赤城牛食べ並べ 非熟成&熟成
  ランプ:ローストビーフ(写真4)
  イチボ:炭火焼き(写真5)
〇 赤城牛のペンネミートソース(写真6)
〇 牛そば(写真7)


ランプの「非熟成」と「熟成」


ランプのローストビーフ


イチボの炭焼き

脚注

1 「赤城和牛・赤城牛」

・赤城牛(総称)は、組合員が生産した肉牛を指し、赤城和牛(黒毛和牛)と赤城牛(交雑牛)に区分される。 銘柄流通に規格は設けないが、総販売元である鳥山畜産食品(株)の判断による。(赤城肉牛生産販売組合)

2 「はぐくみ赤城和牛」

赤城和牛を発展させた鳥山畜産のブランド。鳥山畜産農場内で生まれて肥育された和牛で、詳述したように「一貫生産より美味しいお肉」になるというコンセプト。現時点では、鳥山畜産の出荷牛の全てが一貫化できているわけではないが(本日提供の2頭の牛も外部導入の子牛を肥育したもの)、いずれ完全一貫化となるものと思われる。

3 味マップ


鳥山牧場では「外さない牛肉生産」を目指して、独自に「味マップ」を作成。「赤身のうまみ」と「脂のうまみ」をチャート化して赤身と脂のバランスの良い美味しさを表現。

4 味覚センサー

慶応大学のベンチャー企業「AISSY株式会社」が開発したもの。「味蕾」の代わりをするセンサーが電気信号を測定しニューラルネットワークを通して味を定量的な数値データとして出力する。

5 遺伝子解析


鳥山牧場は、家畜改良事業団の協力を得て「ゲノム解析」による計画交配を実施している。例えば、枝肉重量の大きい子牛を産ませたいときに、そのような遺伝子を持つ父親を交配することで牛群を改善する。

6 鳥山畜産の熟成肉

鳥山畜産は、牛肉の生産者であり、熟成もするという珍しい存在。2009年から熟成を始め、熟成方法は「枯らし」である。自社牧場生産の黒毛和牛の骨付きモモ肉を中心に5〜7週間の熟成を行っている(顧客の求めに応じて長期熟成も行う)

参考文献

鳥山畜産HP
鳥山牧場の赤城和牛HP
赤城牛と赤城和牛
上毛新聞4月16日(火):和牛を五輪食材に 昭和の鳥山牧場が日本版「GAP」取得
総本家更科堀井HP
格之進HP

本日のお料理


1 シャルキュトリの盛り合わせ


2 牛ハツ入りパテドカンパーニュ


3 ほうれん草のシーザーサラダ


4 ランプのローストビーフ(非熟成)


4 ランプのローストビーフ(熟成)


5 イチボの炭火焼き(非熟成)


5 イチボの炭火焼き(熟成)


6 ペンネミートソース


7 牛そば


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