熟成肉の格之進

2019年2月9日 第27回肉肉学会の概要

福島牛の現在と未来

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第27回肉肉学会の概要

高岡顧問

「第27回肉肉学会」のテーマは「福島牛の現在と未来」。
肉肉学会は基本、「生産者ブランド」を取り上げて勉強しており、「〇〇県産牛」は扱わないのですが、今回は特別。東日本大震災8年目を目前にして「福島牛」と取り上げることに社会的な意義があると判断しました。

既に、自ら「福島牛」のキャンペーンに取り組んでいらっしゃる人形町今半さんに東京食肉市場で競り落としていただいた福島牛(福島県田村市坪井畜産の30か月齢・雌、50日熟成)を、学習教材としました。



肉おじさんと福島県・佐竹農林水産部長

稲見副理事長の挨拶、江渡副理事長の「仲間たち」の成染め話を紹介いただき、福島県の佐竹農林水産部長から福島牛をはじめ農畜水産物の安全性確保の取組みなどをお話しいただきました。原田理事長から「福島牛の現状」について、和田理事(立命館大学教授)から「食の消費者理解の心理学」と題したプレゼンをいただきました。

人形町今半の久田課長さんからは「1頭1頭、牛を見極める今半の目から見ても、福島牛の品質は高い」との激励をいただき、最後に福島牛の肥育名人、大玉村で肥育経営を手がけ、29年度の全農枝肉共励会で最優秀賞に輝いた鈴木廣直さんから。福島牛への想いを語っていただきました。

「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ「堀井格之進のUSHISOBA」は、牛肉の粗挽きしんじょの蕎麦。


立命館大学・和田教授


福島県の前肥育牛部会長・鈴木廣直さん


学びの概要

江渡副理事長、福地さん、三森さん。

今回のテーマを決めたキッカケからご紹介します。東日本大震災の発災から8年目を直前にして、江渡副理事長がニコニコ仲間の福地さんから「同級生(福島県東京事務所の三森さん)が福島県庁に勤めているのだけど、福島牛など未だに風評被害により価格が回復し切れていないようだ」とのお話しを聞いて、フェイスブックの「肉肉学会理事会」のスレッドに「福島牛を肉肉学会のテーマとして取り上げることはできないか」とのメッセージが流れてきたことがキッカケでした。

早速、千葉さんはじめ理事の皆さんから「ぜひ、肉肉学会のテーマに取り上げましょう!」と好意的な反応があつまり、人形町今半の高岡副社長からも「今半でも福島牛を取り扱っているので協力は惜しみません」と力強いエールをいただきました。

稲見副理事長のご挨拶

そこからは、肉肉学会の動きは早い。福島県東京事務所、全農福島県本部に相談して、あれよあれよと言う間に「第27回肉肉学会・福島牛の現在と未来」と題して「福島牛」を取り上げることが決まり、フェイスブックで開催通知を行うとともに、今回はビラも作成し、関係者などで回覧する資料としました。

開催当日は東京でも雪の予報で心配したのですが、会場である六本木の「格之進Neuf(ヌッフ)」は50名を超える満員御礼のお客様で熱気溢れる幕開けとなりました。

稲見副理事長の冒頭の挨拶に続き、この日の枝肉を仕入れた「人形町今半」の高岡副社長(肉肉学会顧問)から「人形町今半は2年前から『福島牛フェア』を開催している。高島屋さんともコラボした。販売員が牛肉としての良さを伝えながら売れば福島牛は売れる。伝えるマーケティングが大切だ。人形町今半は東京芝浦市場で1頭1頭枝肉を見ながら購入しており、今日の牛肉もそのように選んだ「ハレの日の特選福島牛」とのメッセージをいただきました。

福島県からは佐竹農林水産部長に参加いただき、福島牛だけでなく福島県の農畜差水産物全体が放射性検査の実施により安全であること、福島牛は共励会などで優秀な成績を得ていることを説明された上で、福島牛の名誉は「実力で取り返す」と力強く宣言していただきました。(お土産の名産「あんぽ柿」いただきました。)

原田理事長は全国的な去勢和牛のBMS分布データや価格データを示して、肉質的には全国平均と劣らないにも関わらず、枝肉kg当たり300 円近い差があることを披露し、ピンチをチャンスとして、他県にない「福島牛の売り」が必要ではないか、とお話ししました。

続いて、立命館大学・食マネジメント学部の和田有史教授(肉肉学会理事)から「食の消費者理解の心理学」と題したプレゼンをしていただきました。和田先生は、コープ福島の陰膳調査(実際の食事による食品の内部被曝の調査)におけるセシウムの最大検出量が非常に小さい値であることを示しつつもネットに溢れるニセ情報に触れつつ、「信じればそれがリアル」になる消費者心理を紹介。「人は事実ではなく認識によって行動する。その認識は人によって異なるので単純に批判することはできないが、異なる認識の人間同士が、なぜ異なるのか考えたり、話し合ったりすることが重要ではないか」と問題提起をされました。

大トリは福島牛の生産者代表としてお話しをいただいた鈴木廣直さん(大玉村)。原発事故による出荷停止の影響の大きさ、出荷可能となってからは全頭検査に取組み、全く問題がないのにも関わらず枝肉相場が他県産牛より安いままであること、米と水が美味しい福島の牛肉は共進会等での評価も高いので、これからも消費者に美味しく食べていただけるような牛肉を生産していきたい、と熱意を込めてお話ししていただきました。

(原田注)私は原発事故による福島牛の出荷停止直後から何度も現地に足を運んで、当時、全農福島県本部の肥育部会長だった鈴木さんと、時には激しい議論もさせていただいたことがあります。穏やかで面倒見の良い鈴木さんは、福島牛生産者の代表としてもご苦労されてきたので、この日お招きできたことは私にとっても嬉しい再会となりました。

肉肉学会で「〇〇県産」の牛肉を扱うのは初めてでした。普段は、こだわりの生産者による滅多に手に入らないお肉を中心にテーマ設定しているからです。今回は、まもなく発災8年目になるのに、なかなか旧に復さない福島牛の現状を参加者に訴えつつ、福島牛の再生を確かなものにしたい、という願いを込めて開催しました。「肉肉学会」の参加者は約50人ですが、発信力の大きい方々なので、藤井理事曰く「福島牛の呪いを解くちから」があると信じます。

総本家更科堀井の堀井良教さん

USHISOBA
「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ企画「牛そば」。今回は「牛の粗挽きのしんじょの蕎麦」は和風だしとお肉のコンビネーション。最初は「金格ハンバーグ」とのコラボを予定していたそうですが、「瓢箪からUSHISOBA」。


本日のメニュー

〇 福島牛の一口コロッケ(写真1)
〇 シャルキュトリのサラダ(写真2)
〇 アッシュパルマンティエ(写真3)
〇 内モモローストビーフ(写真4)
〇 肉豆腐 塩あんかけ(写真5)
〇 サーロインステーキ(写真6)
〇 牛そば(写真7)


福島牛のサーロイン(黒毛和種・雌 30か月齢)


「第27回肉肉学会」のビラ

参考文献

ふくしまプライドHP
「中田英寿 福島を旅する」(鈴木廣直さんと中田英寿さんの対話記事です)
総本家更科堀井HP
格之進HP


BMSナンバー(脂肪交雑の入り具合。1~12で表す)ごとの格付頭数と枝肉価格。福島県産牛肉は、全国平均と比べBMSでは差がないのに枝肉でkg当たり282円(1頭当たり123千円)安い。


牧場での飼育管理を徹底すれば、牛肉がセシウムに汚染されるリスクは下げられる。基本は、給与飼料、飲水等の汚染を防ぐことで安全性は担保される。

本日のお料理


1 福島牛の一口コロッケ


2 シャルキュトリのサラダ


3 すね肉のアッシュパルマンティエ 


4 内モモのローストビーフ


5 肉豆腐 塩あんかけ


6 サーロインステーキ


7 牛そば


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