時が肉の味を変える。手間暇かかる稀少な技術
日本の伝統技法、枯らし熟成
- カテゴリ
-
今年、平成29年は、ニクの年。
肉を扱う「格之進」としては、より肉、和牛の魅力について発信していかないといけない年と思っています。
そこで、これから定期的に肉コラムをみなさまに配信していくことにしました。ご一読頂けましたら幸いです。
さてまずは、「格之進」の味を支える熟成肉のお話から。
「格之進」の牛肉は、“枯らし”という日本の伝統的な肉の熟成方法を行っています。
牛肉の半身(一頭買いとは、半身2本分)をすぐに解体せず、一定温度の冷蔵庫に入れ、4週間ほど保管します。
海外では、特定の部位(リブロース、サーロイン、ヒレのロインセット)を骨つきで、風を扇風機等を使用して強制的循環させながら乾燥させますが、日本の熟成は、枝肉(=半身)のままただ吊るすのです。
この「枯らす」行為で、程よく水分が抜け、旨みがまし、和牛の至福香と言われる“和牛香”がより芳醇になるのです。時の流れがおいしさを作るというわけです。
この枯らし熟成は、牛肉を長期間保存し、ロスなくお肉を提供するために考えられた技法です。
私は、牛を売買する“馬喰郎=家畜商”の家に生まれましたが、家業を継がず一般企業に就職したのち脱サラで飲食業を始めたいわゆる素人でしたので、こんな素晴らしい技法が開業当初よりあることを知りませんでした。
枯らし熟成は、70年代頃まではいろいろな小売店で行われていたそうです(熟成という言葉を使い出したのはここ数年)。けれど、作業効率が悪く、手間がかかり、利益率が悪い状態でした。
その中で真空パックが普及し、牛肉の流通距離も延び効率化を求めるようになったため、枯らしの工程は行われなくなり、今では希少な技法となってしまったのです。
「格之進」の肉は、2002年からすべて枯らし熟成の牛肉です。
そして、熟成=時が肉の味を変えることに気づいた私は、もっともっと和牛を極めるべく、肉の変態(和牛業界の常識を変革する人)へと化していくのでした。