ワイナリーのように、和牛も農家がブランド。生産者にこだわる時代
熟成肉を支える和牛生産者の旨味追求の思想
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和牛といえば、マーブル模様のサシが入る霜降り肉が特徴。
そもそもアンガス牛などの外国の牛は、種類的にサシが入る肉質ではなく、脂をつける育て方をしていないので、赤身が多くなるのです。
和牛の肥育農家には、4つの肥育タームがあります。
順番から言うと、
(1)腹(胃)つくり期、
(2)骨格つくり期、
(3)肉つくり期、
(4)脂つくり期。
オリジナルブレンドの飼料を与え、丈夫な内臓を作り、
良質の肉質を作るために、ビタミンAが豊富な牧草や稲藁を与える。
消化を助けるために、途中でビール酵母やトウモロコシなどを使った発酵飼料を配合したりもします。
飼料には大豆や米を混ぜる場合もあり、
農家によりどんな肉質をつくりたいかという思想によって、飼料や手当の仕方が違うのです。
そして重要な最後の脂つくり、できるだけサシを入れて単価を上げる施策をします。
ビタミンAが豊富な牧草や稲藁等の粗飼料を減らし、きれいにサシが入りやすくします。
そして、マッサージをしたりビールを飲ませたりして、リラックスさせ食欲を増すよう思いを込めて育てます。
とはいえ、人間で言うならまさしく肥満ですから、健康を維持しながら、霜降り肉を作ることは、牛の内臓とのギリギリの攻防なのです。
ただここで問題なのが、きれいな霜降りとおいしい霜降りは、やはり牛の等級(前回のコラム参照)と同じように、おいしい目安ではありますが、味の良さを物語るわけではないのです。
特にここ数年は、熟成肉を始めとした赤身肉を好んで食べる人も多く、霜降り離れもあるよう。
また、過剰な霜降りの肉は脂っこい、と敬遠する消費者も増えてきています。
そう、ここに生産者と消費者のギャップが出てきているのです。
とはいえ、「脂の質にこだわる、脂の質が美味しさの質、こざし(霜降り具合が小さい)でも、ももヌケ(ももにもサシが入っている)のよい肉を目指す」と、飼料に工夫を凝らし、黒毛和牛の旨味を追求した牛育てをしている農家もでてきています。
牛肉には、トレーサビリティがあり、それを確認すればどこで肥育された牛かわかります。
同じブランド牛でも生産者によって育て方、飼料も違うので、牛肉は生産者=「農家ブランド」が大切になってきています。
これはワインの広がりの定義と似ています。
ワインには、ボルドーやブルゴーニュなどの地域ブランドがありますが、多くの人がワイナリー(生産者)を選んで求めます。有名なエリアでなくても、高評価を得ているワイナリーもありますよね。
格之進では、農家ブランドを大切にする考えの元に、1999年の創業以来ずっと生産者がわかる一頭買いをしています。和牛も生産者=農家ブランドにこだわる時代なのです。