熟成肉の格之進

2016年11月28日 第8回肉肉学会の概要

しまね和草牛赤旨ビーフ

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しまね和草牛「旨赤ビーフ」のパンフレット

要約

第8回肉肉学会のテーマは、「しまね和草牛旨赤ビーフ」。
聞き慣れない名称ですが、「島根県で育った和牛で草を食べて美味しくなった赤身の牛肉」ということです。
この牛肉は、独立行政法人農業研究機構中国研究センターの柴田昌宏研究員が中心となった「革新的赤身牛肉生産コンソーシアム」という研究プログラムの成果としてブランド化しようとしているもの。
春〜秋は耕作放棄地などで放牧し、放牧での牧草の採食が困難な冬期は牛舎の中で飼育するが、飼料用稲WCSやイタリアンライグラスのサイレージを給与して濃厚飼料を通常の半分程度にすることで、飼料の自給率を5割程度確保している(通常の肉用牛肥育での飼料自給率は1割程度)。
できるだけ国内で確保できる飼料を給与することでカロリーベースの自給率の高い牛肉生産を可能にするものの、和牛本来のサシ(脂肪交雑)は期待できず、脂肪の色調等も低下するため、和牛肉としての商品価値を訴求しにくい製品でもある。そこで、肉肉学会での評価が今後のマーケティング戦略の行方を占うものではないか、と研究テーマにあげた。

しまね和草牛「旨赤ビーフ」の概要

① 飼育方法の特徴

一般的な去勢和牛の肥育方法は、10か月齢程度の子牛を家畜市場から購入し、18〜20か月穀物主体の配合飼料と稲わら等の粗飼料を牛舎の中で給与し、月齢27〜30か月齢程度で出荷し、平均的な枝肉重量は約480kg、平均BMS6.7(格付等級の肉質4相当)となっている。 これに対し「旨赤ビーフ」は、農研機構・西日本農業研究センターの柴田昌宏研究員が中心となって、センター内の放牧地や島根県大田市周辺の耕作放棄地等で春〜秋の放牧と冬期の牛舎内での粗飼料給与(主に稲ホールクロップサイレージ)により肥育するというものである。 研究の規模としての出荷頭数は年間30頭程度となっており、僅かの直売事例を除けば大半は地元農協への出荷であるため、一般の牛肉と同じく格付けに応じた価格で販売しているとのこと。出荷月齢は、放牧期間の栄養摂取量等に左右されるが、28〜30か月齢程度で、格付けはB2程度となっている(一般的なホルスタイ去勢牛と同程度)。
一般に、肉用牛肥育は、穀物主体の配合飼料を給与することとされ、牧草類(野草も含め)を給与することはない。肥育前期にビタミン欠乏を防止する観点から牧草等を給与することはあるが、仕上がり期が近い肥育後期に牧草類を給与すると牧草類に含まれるカロチンにより牛肉の脂肪が黄色味を帯び、市場価格が下がる(格付け上不利になる)ことから、繊維質補給の粗飼料給与源には、牧草類ではなくカロチンを含まない稲わらを与える。
しかしながら、肥育期間中(例えば放牧等により)牧草類を給与すると、赤身肉主体で、固い肉質になるものの、カルニチン1、カルノシン2やアミノ酸などのうま味成分が豊富に含まれているなどの研究報告もあり、ヘルシーさを求める消費者から一定の評価を受けている。一方で、子牛価格の高騰が続く和牛では、A4〜5等級3の牛肉を生産しないと経済的にペイしないことから、黒毛和種を使った放牧肥育は、大学等の研究機関による事例を除いてほとんど皆無である。本ブランドも現時点では突破口を開いて経済的に自立できるものにはなっていない。

② 本日の牛肉について

今回の牛肉は、上記のような方法で肥育した黒毛和種を9月26日にと畜したもので、枝肉重量(左)126.2kg(1頭あたり枝肉重量252kg)、格付け成績はB1(BMSナンバー2なので脂肪交雑は肉質等級2に相当するが、しまり・きめで等級落ち)、60日間の枯らし熟成というもの。

本日のメニュー

1 部分肉
2 Lボーン
3 ローストビーフ

参考文献

たちすずかWCS給与による適度な脂肪交雑で良質な肉生産のための肉用牛肥育
(柴田昌宏ほか 2015)
・「国産の飼料で牛肉をつくる」
(柴田昌宏、西日本農研ニュース(No.63 2017年1月))
周年放牧肥育技術により赤身の多い牛肉を安定して生産できる
(九州沖縄農業研究センター・畜産草地研究領域)
周年放牧による肥育牛の飼養技術(研究成果リーフレット)
格之進 HP

脚注

1 カルニチン(carnitine)
肝臓や腎臓でアミノ酸のリシンとメチオニンから合成される、ビタミン様物質の一つ。生体内ではL-カルニチンが脂肪酸をミトコンドリアの内部に運び込む役割などを果たし、脂質の代謝に重要な働きを担っている。かつてはビタミンBTとも呼ばれた。分子式C7H15NO3
2 カルノシン (carnosine)
β-アラニンとヒスチジンからなるジペプチドである。構成するヒスチジンの立体異性により、L-カルノシンとD-カルノシンが存在するが、天然のものはすべてL-カルノシンである。L-カルノシンのIUPAC組織名は N-β-アラニル-L-ヒスチジン N-β-alanyl-L-histidine である。カルノシンはヒトなどの哺乳類では、筋肉や神経組織に高濃度に存在している。生体内において酸化的ラジカル種のラジカルスカベンジャーとして働き、酸化的ストレスから保護しているといわれている
3我が国の「肉質等級」は日本食肉格付協会によって、牛、豚それぞれで定められている「流通規格」である。
食肉の流通に携わる関係者が、枝肉取引において同じイメージを持てるように、歩留等級(A~C)、肉質等級(1〜5)が定められている。黒毛和種の場合、8割がA4〜5となるが、必ずしも「味の良さ」を表している指標とは言えない。(以下は、原田理事長のプレゼンペーパー)


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