2024年11月22日 第77回肉肉学会の概要
「ブラウンスイスの伝道師〜肉っ玉かあさんの乳肉複合経営」
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2024年11月22日
@格之進F
肉肉学会理事会
全日本・食学会肉料理部会分科会
第77回肉肉学会は、ブラウンスイスの伝道師〜肉っ玉かあさんの乳肉複合経営〜」と題して、岩手県西和賀町の「左草ブラウンスイス牧場」藤田 春恵さんをお招きしました。
藤田春恵さんは、雪深い山村、岩手県西和賀町の酪農家ですが、最近はミルクの話ではなく自ら育てる「ブラウンスイス」の牛肉の話ばかりFBに投稿されています。
藤田春恵さん |
和田理事の挨拶 |
酪農家の娘に生まれ夫は会社員。ご両親の年齢を考えると、いつか1人で牛を飼う、という事態に備えて放牧中心の酪農経営を進めています。そのためホルスタインから放牧に適したブラウンスイスへの切り替えを進めているのですが、ブラウンスイスは乳肉兼用種なので肉としては美味しいのにホルスタインに比べて肉向けの子牛の価格が安いのです。そこで、自らブラウンスイスのお肉としての価値を付与するため、2019年に「左草ブラウンスイス牧場」を立ち上げました。
実は、肉肉学会の親団体「全日本・食学会」は以前、取り組んだ「シェフ牛事業」で藤田さんのブラウンスイスの子牛を放牧肥育で育てるというチャレンジもしました。
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藤田さんは、自ら育てたブラウンスイスの去勢牛と経産牛を精肉だけでなくシャルキュトリに加工もしています。精肉は地元のレストランのほかEC販売、学校給食への提供などにより「ブラウンスイスは美味しい!」と言われるように、ブレずに牛歩でも一直線の道を進んでいます。
そんな藤田さんのプレゼンテーマは「ブラウンスイスと歩む テロワールまであと牛歩」です。
2020年にシャルキュトリ職人と出会ってから、本格的な加工食品作りを目指し、左草ブラウンスイス牧場を菅原牧場とは独立した事業者として設立し、菅原牧場から経産牛と去勢を購入して左草ブラウンスイス牧場で肥育するという形態をとっています。
その左草ブラウンスイス牧場の事業は大きく4つの柱となっています。
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- 子牛の買上げ(菅原牧場から相場より高値で)
- 肥育した牛の部分肉製造
- 小売、学校給食への供給
- シャルキュトリ製造 です。
肉肉学会直前の今年11月1日 からはシャルキュトリと惣菜、精肉の製造免許が揃い、肉の事業を正式に3本柱として展開することが可能になりました。
そのため、左草ブラウンスイス牧場の全体的な経営戦略として、
- ブラウンスイスを知ってもらう(SNSの活用)
- 放牧を取り入れた飼育方法(肥育も)
- 岩手大学との共同研究(放牧牛肉の学術的な機能性の証明など)
により、「このお肉でいい」というお客様に買ってもらうこと。
更に、 - 子ども達に地元のお肉を知ってもらうため、学校給食への提供を年間8回計80kgほど、更に保育園にも10kgほどを供給。
- 地域の多様な事業者と協力していい街つくり。西和賀町は田舎だけど、個性的で面白い若者が増えてきている。こうした町内の若い人たちと、「このままでは町がなくなる」という危機感を共有し「賑やかな過疎」を目指した地域作りを行っている。
もうひとつの柱、酪農家である菅原牧場の経営目標としては、両親の加齢を前提に、女性一人でも出来る作業体系作りを心がけている。
このため、頭数規模を縮小し、放牧適性の高いブラウンスイス中心に切り替えていくとともに、規模を縮小しても経営が成り立つ「乳・肉の活用」を積極的に進めて行くことにしている。
地域の人や消費者の皆さんとの緩やかな人とのつながりを大切にして、「小さくて強い酪農」を目指したい。
ブラウンスイスの肉牛については、2025年から10頭/年の出荷を目標に頑張っていきます。」
と力強い言葉で締めくくって下さいました。
プレゼン資料の一部
本日のメニュー
●オーガニックグラスフェッドビーフの自家製コンビーフ 門崎熟成肉の自家製ブレザオーラ
*前回の肉肉学会「鈴木牧場産オーガニックグラスフェッドビーフ」を使用
●ウデサンカクのローストビーフサラダ
●牛スジ大根スープ
●ミスジグリル 牛そぼろ入りマッシュポテト
●ハンバーグステーキとサーロインステーキ
●ウワミスジの焼き肉丼
今日の「オーガニックグラスフェッドビーフ」は、交雑種(ホル×和牛)のメス。
出荷月齢は44.2ヶ月齢。
ブロック肉と遠藤シェフ
サーロイン
参考文献
左草ブラウンスイス牧場
熟成肉の格之進 (kakunosh.in)