2024年7月30日 第73回肉肉学会の概要
「長谷川農場マール牛」 〜牛を通じた地域循環 サスティナブルテロワールの世界〜
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2024年7月30日
@格之進F
肉肉学会理事会
全日本・食学会肉料理部会分科会
第73回肉肉学会のテーマは、『長谷川農場マール牛』〜牛を通じた地域環境 サスティナブルテロワールの世界〜です。
今回は、肉肉学会初めての「ホルスタインと黒毛和種の交雑種」をテーマにしました。
国産牛肉の消費量(≒生産・輸入量)は牛肉全体の42%で、和牛(21%)、乳牛(10%)、交雑種(11%)となっています。乳牛と交雑種は乳牛のお腹から生まれるので、和牛と同じウェイトの牛肉を乳牛(主としてホルスタイン)に頼っているのですが、どちらも表示の際には「国産牛」とされるので、消費者には「交雑種」を食べていることは意識されにくいと思います。
生産者にとっては、交雑種は和牛と乳牛去勢の中間の価格帯で、価格が硬直化している乳牛より和牛に近い価格変動をするので、肉質が良ければ利益を上げやすい品種です。とはいえ、自分で精肉販売までするとなると、和牛ほどの差別化がしにくいので、ブランドの確立が難しいことも事実です。
今回、肉肉学会のテーマとした「足利マール牛」は、(美味しい牛肉ですが)肉の美味しさを強調するのではなく、長谷川農場という複合経営の強みを活かした「循環型農業」(堆肥交換による稲わら収集、稲、麦、アスパラガス、ニンニクなどへの堆肥利用)の中に位置付けたところが「正直に消費者に伝わるブレのないブランド」になっていると思います。
それを端的に表しているのがパンフレットの表紙写真が「稲わら」であることです。足利マール牛は、足利市内のココファームの赤ワイン搾り粕であるマールを発酵飼料化して給与するという他にはない特徴があるのですが、あえて長谷川農場の資源循環のハブとなっている稲作の副産物・稲わらをアイコンとした表紙に長谷川さんたちの経営理念を感じることができ、それが、数多い交雑種の中から「足利マール牛」を学びのテーマにした理由といえます。
パンフレットの表紙は稲わらロール
今日は、社長夫人であり、営業責任者である長谷川紀子さんにプレゼンしていただきました。
ご主人と(現在の社長)と一緒にホテル勤務をされていた長谷川さんは、ご主人が家業である農場を経営することになり、初めての農業に携わることになります。そして、長谷川農場の「100年先に農業をつなぐ」「日本一の農業集団になる」という経営理念に共感し、家族一同、牛だけでなく農場全体で地域農業のハブとなろうとする覚悟を感じます。
長谷川さんは、YouTubeでも発信中
最近、従業員を増やしたのも足利市で農業の雇用を生んでいきたいという想いからですが、700頭飼っている牛の管理は、今日も参加していただいたイケメン場長・市川牧場長ほか3名で行っています。市川牧場長曰く「牛の目線になって考える」ように大切に扱っているそうです。
飼料に加える「マール」は、ココファームで大量に発生する赤ワインの粕を利用するために、大麦の販売でお付き合いのあった勅使河原精麦所さんが開発してくれた発酵飼料(ラクレージ)で、牛の嗜好性が高く、肉質にも好影響を与えていると思います。「足利マール牛」をブランド化して11年目。オンライン販売にも力を入れて(長谷川紀子さんが営業担当)、邁進しています。
今日の牛肉は、枝肉重量615.5kg!去勢の28ヶ月齢です。メニューのアスパラガスも長谷川農場産です。
プレゼン資料
原田理事長による参考資料
本日のメニュー
●サーロインステーキ
●ウチモモ ブレザオーラ、パストラミ、コンビーフ
●グリーンサラダ
●ランプ肉のバターステーキ&アスパラガスソテー
●イチボグリル&ガーリックソース
●マエスネのビーフシチューご飯
「マール」を手にする長谷川さん
遠藤シェフとイチボ肉