2024年3月22日 第69回肉肉学会の概要
「黒毛和牛専門肥育ブランド」 〜サスティナブル和牛 熟 の世界を見据えた挑戦〜
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今回のテーマは、『黒毛和牛経産牛専門肥育ブランド!「サスティナブル和牛 熟」の世界を見据えた挑戦!』です。
昨年10月に島根県を訪れた肉おじさんと原田理事長は、かねてよりそれぞれ知っていた「熟豊ファーム」の石飛社長さんを訪問しました。肉肉学会でも経産牛を紹介することは多いですが、石飛さんの経産牛肥育は、黒毛和牛の肉質を活かす方向での「飼い直し」を行い品質をグレードアップさせる方式です。個体差が大きい素牛(経産牛)をどのようにイメージどおりの肉牛に仕上げていくのか、石飛さんが6年程度で開発したノウハウが素晴らしく(企業秘密です)。肥育農家さんで、こんなに飼料原料と飼料設計についてお話しを伺ったのは初めて、というくらい、肉おじさんと原田理事長は驚いたそうです。今回は石飛社長と熟豊ファームのパートナー「銀閣寺大西」の庭野外商部部長さんにスピーカーになっていただきました。
・株式会社銀閣寺大西 庭野外商部長さんのご挨拶
私たちと熟豊ファームさんとの出会いは、「コロナ禍で牛が売れない」と
熟豊ファームが経産牛を持ち込んできた時。
現在では、海外21カ国へ輸出するほどのブランドに育った。中心はヨーロッパと東南アジアで、卸専門だが、最近はデンマークやタイで「B to C」にも着手している。
国内でもスーパー等で取り扱いが増えてきた。
・株式会社熟豊ファーム 石飛社長さんのプレゼン。
自分は元警察官で7年前に退職し、牛飼いを始めた。
それまで経産牛食べた経験はあった。美味しいけど硬いという印象だった。経産牛肥育は、一般の和牛しか知らない人は理解してくれない。
脂質が悪い、枝肉重量が乗らない、歩留まりが悪い、せいぜいA2など課題が山積していた。
自分としては、そうした評価を見返したい、という気持ちは強く、挑戦して行った。
経産牛肥育で指摘される問題点をクリアするためにどうしたら良いか、と突き詰めていった。
最初は飼料メーカーの餌を買っていたが、自分で配合するようになった。2等級が当たり前だった肉質等級を4等級と3等級で8割にまで改善できた。ひとつは血統データをとって改善したもの、もうひとつは飼料。「健康な牛は美味しい」との考えからビタミンAをしっかり入れる。
通常、メスの肥育はビタミンコントロールが前提だが、熟豊ファームではビタミンAを通常の10倍入れている。経産牛は草ばかり食べてきているところに配合飼料を多給するとトラブルが生じやすいし食い止まりも出るのでビタミンAが重要。
配合飼料以外は食品残さを利用したTMR(粗飼料と濃厚飼料を合わせて設計、混合した飼料)を製造して給与している。アミノ酸数値が高く、加熱処理した材料を使用する。例えば出雲そばの残さなどは、植物性飼料に少ないリジンを豊富に含むなどの特性を活かして配合する。そしてTMRは毎月、殺菌検査をするなど安全性に気をつけている。
配合飼料は5割(経産牛用)程度使用。最初は経産牛用の配合飼料はなかった。消化率を変えてルーメン負荷を軽減するなどの工夫をしている。
経産牛の肥育だけでは、ヨーロッパでは通用しない(ヨーロッパでは経産牛が当たり前に流通している)ので、お茶やコーヒー粕を敷き料に、牛舎に廃材を使用(宮大工が持ってくる端材を利用して牛舎を建設)するなどサスティナブルな経営を実践していることをアピールしている。
熟豊ファームの経産牛は、一生をかけて熟成されてゆくという考え。銀閣寺大西さんと出会って、経産牛としての販路が確立されたと感謝している。
そんな熟豊ファームさんの今日のお肉は、
・サーロインとランイチ:71ヶ月齢
・外バラ:68ヶ月齢です。
遠藤シェフ曰く「触った感じでは融点が低い。触って溶ける脂。今まで触ったことのない経産牛」とか。
川口谷さんのプレゼン資料の一部
本日のメニュー
〇 サーロインロースト
〇 ブリスケの焼き肉サラダ
〇 ランプステーキ
〇 イチボのグリル
〇 牛スジのアッシパルマンティエ
〇 バラ煮込みごはん
〇 キャベツと新タマネギのスープ