熟成肉の格之進

2016年3月26日 第6回肉肉学会の概要

「ボースラメール」と「バザス牛」

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要約

第6回肉肉学会のテーマは、初めてのフランス産牛肉「バザス牛」。
肉肉学会の研究対象は、主として国産の牛肉・豚肉だが、それも国内の飼料資源にこだわる、マイナーな品種にこだわる、地域の歴史ある資源にこだわるなどの「変態」な生産者や研究者、食肉関係者等の取組を理解し、盛り上げるためである。今回の研究対象である「バザス牛」と「ボースラメール」は、フランスの一部の地域で、その歴史、地域性、地元の品種、伝統的な飼育法にこだわる方々が守り抜いてきた、特別な牛肉。そうしたお肉と関係者にリスペクトを感じつつ学ぶことこそ、肉肉学会の使命であるとの考えから選んだもの。
「バザス牛」はフランスのボルドー近郊のバザス村を中心に限られた地域1のみで飼育された大型の肉牛。春から夏は牧草地で放牧し、冬期間は牛舎内で肥育される。
その歴史は13世紀に遡る2といい、2008年にはIGP3(原産地表示保護)を取得している。
「ボースラメール」はバザス種等の「乳飲み仔牛」(「Veau sous la Mere」(母の下の仔牛)で母乳のみで育てた仔牛肉。いわゆる「veal(仏:veau)」4はミルクなど乳製品のみで育成した仔牛だが、「母乳」だけで育てる仔牛は珍しい(コスト的には全く合わないので)。

今回、お世話になった「エモントレーディングカンパニー」の石塚奈帆美社長とフランスサイドのパートナーであるフランソワ・パラヴィディーノさん。バザス牛等のプレゼンもしていただいた。

「バザス牛」の概要

① バザス牛
バザス牛の歴史等については「脚注」を参照のこと。
ヨーロッパの牛肉は、日本と異なり、牛肉生産だけを目的とした専用種は少なく、酪農経営で飼育する様々な品種(ブラウンスイスなアポンダンス等ヨーロッパではチーズの数ほど牛の品種がいると言われる)の雄を肥育に回す(日本のように必ず去勢するとは限らない)というベースラインの違いに留意して欲しい。乳生産を目的としない牛たちは、元々は「役肉兼用種」で、畑作、ワイン畑などの耕作と堆肥供給用にそれぞれの農家で飼われていたものである(バザス牛は700年を超える歴史があるのだけど、680年くらいは畑で土起こしに使われていたのだと思う)。
これに対し新大陸(アメリカ大陸、オセアニア)では、肉専用種(ブラックアンガス等)が肉専用農家に飼育されており、酪農との接点はないのが一般的である(酪農経営で飼育するホルスタイン等から生まれた雄子牛は肥育利用されずに、加工品の原料等に利用される例が多い)。
フランスのバザス地方で飼育されるバザス牛、ブロンドダキテーヌ牛などは現在では、食用専用に飼育される牛だが、その飼育方法は穀物を多給してサシを入れることを第一の目的にする日本の和牛とは全く異なり、夏期は放牧、冬期は牛舎で飼育し、仕上げの3か月穀物主体とのこと。地域で生産される穀物や牧草を給与して長期間飼育することで、赤身肉主体の熟成された味わいを楽しめる牛とされ評価が高い。
「バザス牛」は地元では通常36か月齢以上、枝肉重量500kg(日本の和牛でも500kgを超すと大きい部類)で出荷するのだが、日本ではBSE規制の関係で30か月齢未満の牛の牛肉しか輸入できない5。このため、今回の「バザス牛肉」は日本向けに30か月齢未満で出荷したものであるが、30か月齢ではバザス本来の味が出てこないので、「と体」で3週間熟させて本来の味わいを引き出せるようにされたとのこと。また、30か月齢未満のバザス牛肉は地元では売れないので、フルセット(骨をとって部位ごとに真空パックした上で全ての部位をまとめて取引する形態)で輸入している。「バザス牛」に惚れ込んだ石塚さんと現地生産者のまとめ役のフランソワさんのご苦労の賜である。 日本での評価もよく分からず、BSE規制による輸出禁止が解除されるかも分からない時点で、フランスのブランド牛肉の生産者に「日本向けには30か月齢未満で出荷して欲しい。そのため、こんな風に飼って欲しい」というのは大変な作業だと思う。これだけでも、今回の肉肉学会は意義深いものである。
なお、バザス牛の生産者は、子牛生産から肥育まで一貫して飼育管理を行う一貫経営なので、このような飼育管理の工夫が可能だったのだろうと推察する。
「ボースラメール」は母乳だけで(乳母も含め)4か月間育てた去勢子牛です。品種は次の「バザス牛」の範囲。

② 品種の特徴
バザス牛(肉)は、「バザテーズ(バザス牛)」「ブロンドダキテーヌ」「リムーザン」の純粋種もしくは交雑種を肥育したもの。雄も雌も対象となる(バザス牛の定義は脚注3を参照のこと)。このうちリムーザンは実際には僅かとのこと。

(左から)ボースラメール、バザス牛、ブロンドダキテーヌ

本日のメニュー

1.ボースラメールのシンタマのタタキとしゃぶしゃぶ

お皿の上に咲いた桜のよう。ミルクフェッドの子牛独特のピンク色。
ミルクフェッドヴィールは火加減が難しそうだ。これはストライク。

2.バザス牛のハラミ

見事に真っ赤なお肉。

3.バザス牛のサーロイン
フランソワさんの火入れによるもの。日本式とは違うらしい。
4.バザス牛のイチボ
5.バザス牛のリブロース
5.バザス牛のリブロース

3〜5は直球の「塊焼き」でした。

参考文献

エモントレーディングカンパニー:
http://www.bonappetit-net.com/top.html
石塚奈帆美さんが代表を勤めるヨーロッパを中心とした食材輸入会社・エモントレーディングカンパニーの公式HP。バザス牛の歴史等、脚注の記述は、このHPを参考にさせていただいた。

牛肉の輸入規制についてはこちらのHPが分かりやすい
政府広報オンライン:
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/2.html
ただし、記述が古く、例えば、国内規制のうち「健康牛のと畜時検査」は「48か月齢以上」とされているが2017年4月1日から月齢撤廃されている。

格之進 HP:
http://kakunosh.in/

脚注

1 バザス牛の肥育地域は、主にジロンド県、ランド県、ジェール県、ロット・エ・ガロンヌ県の一部。
2 バザス牛の歴史は13世紀に遡り、当時の「謝肉祭」に飼育業者が神への忠誠を誓うため村の司教に献上して牛肉として、最高級にあたる「ブロンド・アキテーム種」「バザス種」を選び肥育したことが始まりとか。
3 IGPにおける「バザス種」の定義。①品種:バザス種とブロンドダキテーヌ種で、性牛は雄牛1300〜1600kg、牝牛850〜1100kg。②飼料:シリアルとほし草をベースにした飼料。③肥育期間:5〜13か月。④熟成:最低10日間。⑤特徴:バランスの良い骨格に厚く丸みを帯びた筋肉がついており、霜降り肉と繊細な繊維が格別で、肉はとても柔らかく、味わい深い。
4 仔牛肉(Veal、veau):仔牛肉全般を指す言葉で、通常は6か月未満程度の仔牛の肉。未成熟なため肉が柔らかく「牛臭さ」がないため、淡白な味わい。ミルクだけ与えたものを「ミルクフェッドヴィール(ホワイトヴィール)」と区分する。これは更に肉色が白っぽく、淡泊な味で「高級食材」として知られるが、我が国では生産量が少なく海外からの輸入に頼っている。なお、一般的な「ミルクフェッドヴィール」は母乳ではなく、ミルク成分からなる「代用乳」という飼料を与えられる。
5 BSE規制(輸入規制)。


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