2022年11月18日 第54回肉肉学会の概要
土佐あかうしの歴史と独自規格TRBの目指す未来から学ぶ
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独自の伝統と流通規格を持つ「土佐あかうし」
今回のテーマは「土佐あかうし」。あかうし=褐毛和種ですが、褐毛和種には熊本系と高知系の2系統があります。元は「朝鮮牛」の血統が強く、一時は黒毛和種のように外国種(シンメンタールやブラウンスイス)を改良用(体を大きくするため)に交配しましたが、農耕用に利用するための性質のおとなしさ、小回りの良さなどの美点が失われるため、熊本、高知それぞれで「褐毛和種」の改良と固定を進めた結果、高知系は朝鮮牛の血統が濃くなり、全体の毛色や「毛分け」と呼ばれる特徴的な黒毛部分があるなど(皮膚,角,鼻鏡,眼臉,舌,蹄,尾房,陰のう,肛門などが黒色の→なんか可愛い)、熊本系とは異なる系統となっています。なお、「毛分け」は韓国では嫌われたそうで、韓牛にもない、高知系褐毛和種独特のものになっています。
熊本系は、増体の良さなどから、北海道(池田牛、はこだて和牛)、秋田、宮城などでも飼育されてますが、高知系は高知県内のみで飼育され改良された牛です。また、血統証明する「登録」も高知系は、黒毛和種と同じ「全国和牛登録協会」が行い、他の褐毛和種は「日本あか牛登録協会」が行います。今年10月に鹿児島で開催された和牛オリンピック「全国和牛能力共進会」では、NHKニュースにいきなり高知県出品のあか牛が映りテレビジャックしたことがありましたが、黒毛和種の中でひときわ目立った可愛い牛ちゃんだからこその珍事でした。
さて、そんな「土佐あかうし」を紹介してくれるのは、土佐あかうしの「揺り籠から墓場まで」を担当された高知県の変態公務員、いえスーパー公務員の公文善一さんです。
土佐あかうしの生産振興からブランディングまで担当した公文さんから詳しいお話を巧みにプレゼンしていただきました。特に、公文さんが作られた土佐あかうし独特の「TRB」格付((T=土佐あかうし、R=らしい、B=Beef )は、A2〜3等級クラスが主体のあか牛の赤身肉としての良さを流通サイドに分かりやすい伝える手法として注目されます。個人的に「R」は「Rouge」と思っていたら「らしい」なんですね。公文さん「らしい」ネーミングですw。
また、土佐あかうし専門のお肉屋さん・三谷ミートさんの三谷新吾さんにも補足ししていただきました。
現在、土佐あかうしは、雌牛1000頭、肥育牛1400頭、生産者100人、種雄牛20頭(県の畜産試験場で管理)という生産体制です。全国の和牛の中では、褐毛和種自体が和牛の1.3%、高知系はその1割で0.13%にすぎません。前述したように「閉鎖育種」で、兵庫県と同様、県内だけの遺伝資源で生産していますから「近交係数」の高まりが懸念されます。平成25年には1600頭にまで減ったものが令和3年には2400頭にまで回復したことは素晴らしい成果ですが、担い手農家の高齢化など、克服すべき課題も多いと思います。現在の出荷700頭/年は、土佐あかうしを求めるファンにとって、ぜひ増やしていただき、「希少な品種」でも手の届くお肉にして欲しいところです。
和牛品種の成立と自然条件を考察すると、高知系褐毛和種は四国カルスト、熊本系褐毛和種は阿蘇外輪山、無角和種は秋吉台と、水はけが良く自然草地が成立しやすい自然条件と、共同での草刈りや火入れなどの人間の干渉とのバランスが生んだ歴史ある品種です。こうした歴史から「草で育てる」品種として黒毛和種とは一線を画した改良と生産がされてきました。今後も草資源を利用した生産体制を維持して地球環境に優しい肉牛として振興していきたいものです。
今日のお肉はサーロインと前すねが29か月齢の雌、ランイチが29か月齢の去勢です。
本日のメニュー
〇 シャルキュトリ盛り合わせ
〇 土佐あかうし食べ並べ サーロイン・ランプ・イチボ
〇 葉物サラダ
〇 土佐あかうしハンバーグ(サーロイン・ランプ・イチボ・スネ肉のMIX)、土佐あかうしスジ肉のグラタン(いろいろな部位のスジ肉で)
〇 うしそば(スネ肉の煮込み蕎麦)