熟成肉の格之進

2022年9月20日 第52回肉肉学会の概要

獣医師であり種豚メーカー桑原さんの豚愛

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世界の豚を知り日本の豚を創る男

高岡さんの挨拶

今回のテーマは、豚というより人=桑原康さん。永らく、我が国有数の民間種豚場「富士農場サービス」を経営し、品種の維持・改良、養豚場への種豚、豚の人工授精用精液を供給されてきました。獣医師でもあり、豚に関する該博な知識から「豚博士」と呼ばれてます。

富士農場サービス・桑原社長


堀井さん

桑原さんが生まれ育った静岡県富士宮市は、日本でも有数の養豚地帯だった歴史があり、桑原さんも幼少の頃から「豚と一緒に」育った、というほどの豚好き少年でした。今まで百数十カ国を豚の旅で廻ったというなかで、たどり着いたのは「日本人の味覚にあった豚肉創り」。加工品指向の高い世界の養豚・豚の改良の潮流は、加工適性の高い赤身肉(脂肪の少ないリーンミート)。品種的には、LWDの三元豚(L=ランドレース、W=大ヨークシャー、D=デュロック)が我が国を含めて世界の主流の組み合わせですが、桑原さんは、日本人が好む柔らかさ、甘み、弾力性、濃厚な旨味などを引き出すための品種の組み合わせ(雑種強勢)を目指しています。我が国で最多の品種を飼育し、自ら豚肉生産を行うとともに、他の養豚農家に優秀な種豚(肥育して肉豚となる子豚を産ませる雄豚と雌豚)、人工授精用精液(牛と異なり凍結できないのでチルドで宅配する)を提供しているのです。

そうした桑原さんの種豚事業を襲ったのが2019年に発生した「豚熱」です。桑原さんの飼育豚に感染した訳ではありません。東海地方から全国に拡大する過程で、豚熱感染地域の種豚を非感染地域へ流通させることができなくなったため、感染地域である富士宮市に種豚生産の拠点を有する桑原さんは、大きな影響を受けました。このため、非感染地域での種豚生産をめざし、岩手県→北海道へと第二種豚場を開設します。桑原さんは、本場を「男子校」、恵庭農場を「女子校」として使い分けながら種豚の選抜・改良を進める体制を築きました。

桑原さん曰く、「豚の味は遺伝で50%、飼料と環境が25%ずつで決まる」と言います。しかし、日本人が求める味は、海外の豚肉ニーズとは異なるため、海外の種豚メーカーが保有する遺伝資源では見つけることができなくなっています。

桑原さんのプレゼン表紙は、日本列島が豚ちゃんになっている!

今日、提供される桑原さんの豚肉は、桃豚(中ヨークシャーの純粋種)とセレ豚(せれぶー)/民豚(満州豚)とデュロックの交雑種)です。中ヨークシャー(y)は戦後まもなくまで日本の豚のほとんどを占めていましたが、体格が小さく肥育効率が悪いため、三元豚に置き換わって激減し、現在では一部の地域の銘柄豚としてブランド化されていますが、「種豚」を供給できる種豚業者は限られています。またセレ豚の元になる「民豚」は中国東北部が原産地の在来豚で、肉質が良いことで知られていますが、生産性は劣る豚です。桑原さんは民豚を他の品種と掛け合わせ二元豚を創り、味の良さと生産性のバランスを図っています。今日のセレ豚は民豚とデュロックの交雑種です。

朴訥としたなかでユーモアのある桑原さんのお話に魅了されたプレゼンでした。



富士農場サービスで生産している豚

本日のメニュー
(満州豚の交雑種(セレブー)と中ヨークシャーの食べ並べ)


セレブー ロース


中ヨークシャー ロース

〇 パテドカンパーニュ(ウデ)

〇 ボイルハム(モモ)

〇 ソーセージ(ウデ&ウチモモ)

〇 ロースト(肩ロース)

〇 角煮(バラ)

〇 カツレツとグリル(ロース)


参考文献


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