2022年7月21日 第49回肉肉学会の概要
明治29年創業近江牛の老舗大吉商店の研究
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近江牛・大吉商店について
今回のゲストは滋賀県高島市・大吉商店代表の永谷武久さんです。
大吉商店は永谷武久さんの曾祖父の永谷大吉さんが明治29年創業した精肉店です。なんと126年も続く老舗です。3代目であった武久さんの父上が早世したことから、23歳の若さで4代目となり、以来、近江牛の老舗として近江牛ブランドを背負って来られました。
1代目・2代目は近江牛の生産も行ってきましたが、3代目で一度は生産部門から撤退されたとのこと。しかし4代続いた事業を軌道に乗せるためには6次産業化が欠かせないと考え、また「但馬牛への憧れ」を捨てがたく、武久さんは平成15年に近江牛の生産(肥育)部門を復活させ「大吉牧場」を創設しました。
現在800頭の近江牛を肥育し精肉として販売するほか、多くの加工品を製造しています。また、7カ国に輸出もしています。
大吉牧場では、主に宮崎県産の雌子牛を導入し30ヶ月齢程度で出荷してきましたが、後述するように兵庫県但馬産子牛の長期肥育と宮崎県産子牛の普通肥育という肥育スタイルになりつつあります。
今日は40ヵ月齢の兵庫県養父産の但馬牛の雌牛と27か月齢の宮崎県小林市産の雌牛の食べ並べです。なお、開催タイトルでは「29か月齢としましたが、永谷さんの厳しい眼力で選ばれたのは27か月齢の牛となりました。
今回の牛肉は血統の違い(但馬牛は純粋但馬系(父は丸谷土井、小林産は、気高系も入った牛で、父は耕富士)、月齢の違い(40か月齢、27か月齢)を味わっていただきます。なお、大吉商店さんは、但馬牛の40か月齢出荷牛、宮崎産子牛の33か月齢以上出荷牛、その他の30か月齢出荷牛と3グループのブランディングをしています。
全国的には雌牛の40か月齢でのと畜は、雌牛全体の0.2%程度に過ぎません。但馬牛は「少ない飼料を永く食べる」と言われ、長期肥育に適した系統といえます。また、永谷さんの飼い方の特徴として、昔ながらの「炊き餌(米や麦などを炊いた飼料で、手間はかかるが消化によく肉質も向上する)を乳酸菌発酵させた飼料を給与していることです。
但馬牛は兵庫県独自の閉鎖育種により、全国の生産者に但馬牛を、また種雄牛作りの素材として田尻系雄牛を提供していますが、閉鎖育種に伴う血縁係数の高まりという問題も抱えています。また、枝肉の売上価格を確保するため、気高系など肉量重視の牛づくりが進む中で、肉質・脂の質の良さがピカイチな但馬系は、和牛の中の和牛ともいえます。
一般の生産者は、田尻系、藤吉系、気高系を組み合わせた交配により肉量が多く肉質の良い講師生産を目標としています。こうした中で40ヵ月齢の但馬牛も雌牛生産を目指す永谷さんのチャレンジ精神に学びたいと思います。
また、肥育用の雌牛は、去勢と比べると発育速度が遅く、枝肉重量が小さい傾向にあります。と畜月齢のピークは29ヶ月齢ですが、去勢と異なり40ヶ月齢くらいまで漸減していく傾向にあります。とはいえ、40ヶ月齢まで引っ張るのは「特産松阪牛」など限定されたブランドに限られてます。
また、永谷さんは大吉牛の脂肪融点を計測していますが、驚くような低い値が出ています。
本日のメニュー
〇 牛スジ煮
〇 サラダ
〇 シャルキュトリ盛り合わせ
〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ ランプ塊焼き
〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ イチボ ローストビーフ
〇 40ヶ月齢と27ヶ月齢食べ並べ サーロインステーキ
〇 ガーリックライス