2021年2月11日 第42回肉肉学会の概要
16歳但馬牛すき焼きから学ぶ
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はじめに
「第42回肉肉学会」のテーマは、「16歳但馬牛すき焼きから学ぶ」。お招きした生産者は、兵庫県香美町で肉用牛繁殖経営をされている田中一馬さん。田中さんは、兵庫県の但馬牛の母なる産地に新規就農して、現在では繁殖雌牛60頭を飼育する地域を担う中核的な生産者になられました。積極的にSNSで発信されていることでも有名です。
田中さんは「繁殖農家」ですから、通常は、生まれた子牛を10か月齢程度で家畜市場に出荷して子牛の販売収入を得ることがメインのお仕事です(牛の蹄を手入れする「削蹄師」もされてますが)。しかし、年に数頭(不定期)、お産の働きを終えた雌牛(経産牛)を肥育して(しばらく太らせて)牛肉として出荷することがあります。牛のコンディションによって、放牧地で配合飼料を与えずに放牧肥育する場合は「放牧敬産牛」としてオンラインで販売すると、告知直後に売り切れる人気商品です。また、放牧をしないで牛舎の中で配合飼料も給与して仕上げる場合もあります。いずれの場合も、奥様のあつみさんが自らお肉をカットして販売されており、あつみさんは第15回肉肉学会(2018年1月27日「但馬産放牧敬産牛」)にスピーカーとして登壇されたので、ご夫婦での肉肉学会登場!ということになります。
今回は、田中さんが育てた16歳の雌牛「てるふく」を、人形町今半本店でいただくという、肉肉学会初めての試みをさせていただきました。また、ようやく、オンラインから脱して、リアルで開催された記念すべき回ともなりました。
「てるふく」のはなし
和牛は、血統登録がされているのですが、通常、雄は漢字名、雌はひらがなで記述されます。今回の牛は雌なので、名前は「てるふく」。照や福は和牛の名前としてはよく出てきますが、「てるふく」は2005年02月16日生まれの16歳(数えで17歳)。父は照波土井、祖父は谷福土井、曽祖父は照長土井という但馬牛の家系です。和牛の血統は、このように父、母の父(祖父)、母の祖父(曾祖父)を重視する(三代祖)傾向にあります。てるふくは、雌牛として優秀で13回もの出産をした、田中家でも稼ぎ頭の牛でした(通常、2歳過ぎが初産ですから、ほぼ毎年1頭子牛を産んだことになります)
そんな「てるふく」に肉おじさんと牛おじさんが出会ったのは、前年10月に田中牧場に伺った時です。田中さんは、前述のように、経産牛の肥育については「放牧ありき」ではなく、その牛の個性に合わせた養い方で牛の能力を引き出したいと思ってます。「てるふく」は高齢のため歯が抜けて放牧で牧草を食べることができないため、配合飼料や乾草で1年半ほど「飼い直した」牛です。普通の飼い直しは半年ほどなので、じっくり丁寧に育てられた「熟成うし」と言えます
牛舎でゆったり反芻するその姿に一目惚れした肉おじさんが田中さんに頼み込んで「売約」。そして、そのお肉を、すき焼きの頂点「人形町今半本店」で食べたいと、高岡副社長にお願いして実現した「頂上ランデブー」なのです。
てるふくのお肉は、赤身の色合い、きめ細かいサシ、16歳とは思えない柔らかさ、それでいて脂はあっさりという素晴らしいものでした。そのサーロイン、リブロースを、今半本店さんの極上の手腕で味わいました。
幸せな牛飼いさんが飼った幸せな牛を幸せな気持ちで食べた極上のひとときでした。
満席の会場の皆さんからもため息が聞こえてきました。
本日のメニュー
〇 前菜
〇 お椀
〇 中皿
〇 温物
〇 進め肴
〇 食事
〇 デザート