2017年4月21日 第11回肉肉学会の概要
完全放牧黒毛和牛と今帰仁アグー
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要約
第11回肉肉学会のテーマは、「完全放牧黒毛和牛」。
「肉肉学会」の初期のテーマで取り上げた「Qビーフ」は、九州大学の後藤貴文・農学部准教授(当時。現在は鹿児島大学農学部教授)が研究されている国産自給飼料主体で肥育した黒毛和種の牛肉である。今回のテーマである「完全放牧黒毛和牛」は、佐賀県鹿島市が九州大学とタイアップして実践している牛肉で、Qビーフと同様、「代謝インプリンティング」技術で育成した黒毛和牛を、鹿島市内のみかん荒廃園で周年放牧肥育した牛肉である。要は、荒廃したみかん園を活用した牧草地に春夏秋冬・朝昼晩、黒毛和牛を放って育てた牛である。佐賀県といえば高級ブランド「佐賀牛」が有名だが、あえて霜降り牛肉生産ではなく、サシがほとんど入らない放牧牛肉生産にチャレンジしたのが鹿島市なのだ。
今回のお客様は、樋口久俊鹿島市長で、自ら鹿島市の取組をプレゼンしていただいたほか、後藤貴文鹿児島大学農学部教授にも「Qビーフ」のご説明をいただいた。
更に、「今帰仁アグー」の高田勝さんにも再登場していただいた。
写真左:樋口久俊・鹿島市長、写真右:後藤貴文・鹿児島大学農学部教授
完全放牧黒毛和牛の概要
① Qビーフ
一方で最近の「赤身肉」ブームに見られる消費者の健康志向をターゲットにすれば、サシが入らない「牧草牛」は一定の評価を得られると思料するが、枝肉重量の極端な低下は何とか防ぎたい、という思いを実現する技術として「代謝インプリンティング」を実証したのがQビーフであり、九州大学農学部附属農場高原農業実験場(大分県竹田市)で実践肥育を実施している。
② 鹿島市の取組み
佐賀県鹿島市は、耕作放棄地面積の増加(平成27年は耕地面積の12%)が農業の大きな課題となっており、特に農業生産の主要品目であるみかん園の荒廃が揉んだとなっている。傾斜地に多いみかん園では、耕作放棄されると他に適当な作物がないが、牧草であれば傾斜地でも栽培可能で、かつ、放牧であれば、牧草管理を大幅に省略できることに着目して、Qビーフとの連携を図ることにした。具体的には九州大学農学部附属農場でインプリンティングした黒毛和牛を鹿島市内の放牧地(元みかん園)2.3ヘクタールに25年度2頭、27年度2頭導入して放牧肥育に取り組んだ。
③今回の牛肉
今回の牛肉は、2013年7月23日生まれの黒毛和種の雌である。生後2年4か月まで大分県竹田市の九州大学農学部附属農場で飼育されたのち、2015年11月10日に佐賀県鹿島市に移動して2017年3月13日まで鹿島市で放牧肥育され、2017年3月17日に大分県畜産公社でと畜されている。 出荷月齢44か月(3年8か月)ながら、枝肉重量は220kgと普通肥育の雌の6〜7割程度となっている。格付はB1だが、サシだけみれば「2」くらいの感じであった(放牧牛は、肉色や脂の色で「格落ち」になるケースもある)。
本日のメニュー
【完全放牧牛】
ネックの煮込み (写真1)
Lボーンステーキ(写真1、3)
ナカニクのローストビーフ(写真2)
【今帰仁アグー】
パテドカンパーニュ(写真4)
肩ロースのハムのシーザーサラダ (写真5)
ウデ肉のスライス生姜焼きスタイル
肩ロースのローストポーク (写真6)
写真
参考文献
〇みかん荒廃園を活用した黒毛和牛の周年放牧による牛肉生産-佐賀県鹿島市の挑戦-佐賀県鹿島市公式HP
〇Qビーフ(九州大学)
〇Qビーフ(九州大学農学部附属農場高原農業実験実習場)
〇代謝インプリンティングを基盤とした子牛の成長と産肉性(後藤貴文)