2019年4月23日 第29回肉肉学会の概要
お肉のイノベーション冷凍燻製技術を公開
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第24回肉肉学会の概要
「第29回肉肉学会」のテーマは「冷凍燻製技術」。
格之進の千葉さんが、かねてから岩手県工業技術センター、株式会社北陽さんと温めてきた企画が実現しました。
岩手県工業技術センターと格之進の共同研究では、一関産・岩手県産の素材を使ったハンバーグを製造する中で、燻煙用のチップまで岩手県産の木材チップを利用することにし、様々なチップを、条件を変えて薫製香を調べていった結果、ハンバーグを冷凍して薫製1した方が香りの付きが良いことが分かったのです。
一般に「燻製(薫製)」は燻煙の温度が高いほど早く仕上がり、スモークサーモンなど水産物に多く使われる「冷燻」は数日間を要することがあります。冷凍での燻煙技術を可能にしたのが、「北陽」の電子スモーク技術です。「電子スモーク」2とは、燻煙を高電圧でイオン化しマイナスイオン化した燻煙粒子が、陽極にある食材に吸着されるというもの。「北陽」の電子スモーク装置「スモっち燻」だと、通常の燻煙装置で数時間かかるのが5〜10分と大幅な時間短縮が可能になり、コストも抑えられるというわけです。千葉さんいわく「燻製の妖精」上田課長のプレゼンも興味シンシンの内容でした。
今日の食べ並べは、電子スモークをしたハンバーグや牛肉各部位を「薫製」と「非薫製」。薫製の香りに包まれた幸せな時間でした。
「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ「堀井格之進のUSHISOBは「青椒肉絲」風の挽きぐるみ(全粉層のそば)。たけのこと木の芽を添えて。
肉おじさんはプレゼンも担当(緊張気味)
肉おじさんと薫製3兄弟
北陽北海道支社
上田洋介課長
堀井良教社長
学びの概要
「薫製」は様々な食品で行われており、コールドチェーンが発達した現在では、保存技術というだけでなく「燻製香を楽しむ」という役割が中心となってきました。牛肉では、熟成肉に注目が集まる中、ビーフジャーキー等の乾燥製品は古くからあるものの、薫製させた製品は開発されてきませんでした。
千葉さんは「香りをコントロールできたら商品価値が上がる」と、(株)格之進と岩手県工業技術センターとの共同研究として「県産素材を活用した新規畜肉加工品の開発」を行い「県産スモークチップを活用した新規冷凍ハンバーグの開発」に至ったそうです。
1.燻製食品の評価法と効率的評価法の開発
リンゴ、ブナ、サクラ、オニグルミなど様々な県産チップ材を用いて燻製チップを評価するとともに食材に付いた燻製香を定量的に測定する方法を開発しました。そうして食材によって最適となるチップの配合比率や水分率を求めていきます。赤身と霜降りでは燻製香の付き方が異なり、霜降り(脂)の方が香りがつきやすいとのことです。
2.冷凍燻製技術の開発
燻製ハンバーグの開発を進めるなかで、「通常のパテより凍結したパテを燻製した方が燻製香の付きが良い」という現象が発見されました。凍結状態のまま燻製することは製造上の衛生リスクも低減するなど、産業上の利用価値が高いといえ、冷凍燻製技術の開発は、今回の燻製ハンバーグの商品化に大きく寄与しました。一方で、このメカニズムは十分、解明されていないようで一層の研究が待たれます。
3.静電気燻製技術の利用(電子スモーク)
燻製ハンバーグの商品化には短時間で効果的な燻製香を付与する技術が欠かせません。そこでタッグを組んだのが(株)北陽さん。北陽が開発した「電子スモーク装置」は、長時間かけて行われてきた、従来の冷燻や温燻を、常温で5〜10分で冷くんできるという装置です。
電子スモーク装置内で高電圧によりプラスとマイナスに帯電した粒子が煙を誘因し、マイナスに帯電した燻煙がプラスに帯電した食材に付着するという原理です。食材に付着した燻煙成分は、食材を密封することにより食材の内部に浸透していきます。
このようにして誕生したのが「薫格ハンバーグ」です。今回の肉肉学会では、薫格ハンバーグと、大人気の「金格ハンバーグ」を食べ並べ(どちらも美味しいとの声多数ですが)、燻製香のするハンバーグという未知の体験を楽しみました。
また、赤身や霜降りなど、各部位で燻製したものとそうでないものを食べ並べ、「燻製香は脂肪の多い肉に付きやすい」というエビデンスを実感することとなりました。この日は青森県アビタニアジャージーファームの安原さんが持ってきてくださった7歳超えのジャージー去勢牛のロースも燻製・非燻製として味わいました。
USHISOBA
「総本家更科堀井」さんと「格之進」のコラボ企画「牛そば」。今回の企画は「青椒肉絲」風の牛肉に、挽きぐるみ(全層粉)のそばで。季節の味のタケノコと木の芽が添えられてます。
本日のメニュー
(ハンバーグと牛肉各部位の食べ並べ:薫製×非薫製)
〇 シャルキュトリとシーザーサラダ(写真1)
〇 薫格ハンバーグ × 金格ハンバーグ(写真2)
〇 稀少部位「メガネ肉」(写真3)
〇 国産牛霜降り「三角バラ」(写真4)
〇 国産牛赤身「ランプ」(写真5)
〇 黒毛和牛霜降り「ソトバラ」(写真6)
〇 アビタニアファームのジャージー牛「ロース」(本ページ)
〇 牛そば(写真7)
本日のお肉:同じ部位の「薫製」と「非薫製」
脚注
1.冷凍燻製技術
通常のパテより凍結したパテの方が燻製香の付きが良いという現象が確認された。凍結状態のまま薫製することは製造上も衛生上のメリットがある。ただ、このメカニズムは十分解明されていない。
2.静電気燻製(電子スモーク)
イオン化した燻煙を食材に付着させるので、食材を加熱せずに生のままで(冷凍でも)燻製処理できるため、食品の乾燥を防ぎ、短時間処理で空気に触れる時間も短縮化でき衛生的というメリットがある。
参考文献
・岩手県工業技術センターHP:「最新成果集2017:30燻製食品評価法と効率的燻製法の開発」
・総本家更科堀井HP
・格之進HP
本日のお料理
1 シャルキュトリのサラダ
2 薫格ハンバーグ
2 金格ハンバーグ
3 薫製メガネ肉
3非薫製メガネ肉
4 薫製三角バラ
4 非薫製三角バラ)
5 薫製ランプ
5 非薫製ランプ
6 薫製ソトバラ
6 非薫製ソトバラ
7 牛そば